今月の視点

8月

政府、「法曹養成」改革方針を決定!

「司法試験」合格者数“年間1,500人程度”/「法科大学院」修了者の“累積合格率7割以上”目指す!

旺文社 教育情報センター長 大塚/2015年8月3日掲載

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政府は27年6月末、裁判官、検察官、弁護士といった法律の実務に従事する法曹の養成制度改革について、司法試験合格者数“年間1,500人程度”/法科大学院修了者の司法試験の“累積合格率7割以上”を目指すなどとする、今後の方針を決めた。
 深刻な課題を抱え、法令違反に該当する法科大学院については、改善勧告や組織閉鎖などの措置を段階的に講じる。また、法科大学院の“抜け道”などと指摘されている「司法試験予備試験」(以下、予備試験)は、試験科目の見直しや運用面の改善などを検討する。
 ここでは、政府が取りまとめた『法曹養成制度改革の更なる推進について』の法科大学院改革を中心に、その概要や現状、法科大学院教育のこれまでの改善取組などをまとめた。


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< 法曹養成制度改革の推進 >
政府の法曹養成制度改革の方針決定

政府は25年7月、法曹人口や法科大学院の在り方など様々な課題が指摘されている法曹養成制度の改革・改善の推進について、改革項目やその担当機関、改革事項、検討・実施期限などを明記した『法曹養成制度改革の推進について』を取りまとめた(法曹養成制度関係閣僚会議)。この改革推進策では、法科大学院を中核とする“プロセス”としての法曹養成制度を維持しつつ、質・量ともに豊かな法曹を養成していくことを基本にしている。
 この改革推進策(閣議決定)に基づき、法曹養成制度の改革を総合的かつ強力に実行するため、政府(内閣官房)に官房長官や法務大臣、文科大臣など関係閣僚からなる「法曹養成制度改革推進会議」(推進会議)が設置された(25年9月)。推進会議には事務局として「推進室」が設けられ、施策に係る重要事項の意見等を受けるために有識者からなる「法曹養成制度改革顧問会議」(顧問会議)が設置された。その後約2年にわたり、推進室や顧問会議を中心に法曹養成の制度改革に向けた施策の推進・検討が行われ、27年6月末、『法曹養成制度改革の更なる推進について』が政府方針として決まった(以下、『推進会議決定』)。
 『推進会議決定』は、〇 法曹有資格者の活動領域の在り方/〇 今後の法曹人口の在り方/〇 法科大学院/〇 司法試験(予備試験を含む)/〇 司法修習/〇 今後の検討・課題といった項目について、政府の法曹養成制度改革の推進方策を示している。

< 政府・『推進会議決定』の概要 >

政府の『推進会議決定』のうち、法曹人口/法科大学院/予備試験の改革概要は、次のとおりである。(注.以下の枠囲み中、●印、“ ”、「 」、 ( )、< >(小見出し)等は、当方で付記)

法曹人口:当面、“年間、1,500人程度”輩出

法科大学院

予備試験:「法科大学院」修了との“同等性”検証/「試験科目」見直し、運用面の改善検討

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< 法曹人口の規模 >
司法試験の状況

裁判官、検察官、弁護士といった法曹資格の取得には、国家試験である司法試験(平成23年まで「旧司法試験」、18年から「新司法試験」。18年~23年は新・旧司法試験“併行実施”。24年から新司法試験は「司法試験」の名称)の合格が必須である。そのうえで、18年以降の司法試験合格者は、1年間の「司法修習」とその修了試験である「司法修習生考試」(司法試験に続く2回目の試験から、通称「二回試験」)の合格によって法曹資格が付与される。(図7参照) そこでまず、法曹人口のもとになる司法試験(新・旧司法試験含む)の状況をみてみる。
◆ 旧司法試験(昭和24年~平成23年):合格率、数%程度の“超難関”
旧司法試験は昭和24(1949)年から実施され、スタート時の合格者数は265人、合格率10.3%であった。その後、合格者数は、昭和32(1957)年まで200人台、昭和33年~昭和36年は300人台で、昭和39(1964)年に初めて500人を超えた(508人)。
 昭和40年以降、平成2(1990)年までの四半世紀にわたり、合格者数は500人前後を推移した。平成3年は605人となり、11年には1,000人に達した。その後、12・13年は1,000人をやや下回ったものの、16年には1,483人と過去最多に達した。
 翌17年は1,464人であったが、18年549人、20年144人、22年59人、23年6人と、18年~23年の「新・旧司法試験」の“併行実施”期間中は急激に減少した。
 合格率は、開始当初の昭和24・25年の10%前後を最高に、年を追って下降し、昭和28(1953)年~昭和42(1967)年まで4~3%台、昭和43年~平成16(2004)年まで2~1%台(平成5~7年3%台)で、特に昭和49(1974)年~昭和59年にかけの合格率は“1%台”であった。(図1参照)
◆ 司法試験(新司法試験含む:18年~ ):直近の合格者数1,800人程度、合格率20%台
 新制度に切り替わった18年以降の司法試験(18年~23年は新司法試験)における各実施年の合格状況(24年から参入の「予備試験」組を含む)を概観してみる。(図2・表1参照)
● 合格者数
 法科大学院における「既修者コース」(2年制)のみの受験となった18年の合格者数は1,009人であったが、「未修者コース」(3年制)受験者も加わった19年は前年の1.8倍に当たる1,851人となった。翌20年は2,065人となり、以降、25年まで多少の増減を繰り返しながら2,000人強を維持。しかし、26年は前年比11.7%減の1,810人となり、再び1,800人台まで減少した。
 この間、24年からは「予備試験」組の受験も加わり、26年の合格者1,810人のうち、「予備試験」組の合格者は163人(占有率9.0%)であった。
 また、26年の「法科大学院」組の合格者1,647人のうち、「既修者コース」が「未修者コース」の2.1倍に当たる1,121人(全合格者数に占める割合61.9%)、「未修者コース」が526人(同29.1%)である。


● 合格率
 司法試験の合格率(単年合格率)は、18年(既修者コースのみ)の48.3%を最高に、23年まで受験者増と合格者数の停滞状態を反映して年々下降し、23年は23.5%まで低下した。
 24年は受験者数が減少したことに加え、「予備試験」組の新規参入などから、合格率は上昇に転じ、25年は26.8%まで回復した。しかし、26年は受験者数の増加と合格者数の減少で、合格率は前年より4.2ポイント下降の22.6%で、3年ぶりの低下となった。合格率22.6%は、現行の司法試験が始まった18年以降で最低である。
 26年の「法科大学院」組と「予備試験」組の合格率をみると、前者は21.2%、後者は66.8%であった。
 なお、26年の「既修者コース」の合格率は32.8%、「未修者コース」の合格率は12.1%で、「未修者コース」の合格率は「既修者コース」の3分の1程度である。
● 新・旧司法試験の合格者数等の内訳
 18年以降の司法試験(23年まで新司法試験)の合格者数や合格率等は上述のとおりであるが、18年~23年まで併行実施された旧司法試験の合格者数を含めると、26年までの合格者数最多は20年の2,209人(旧司法試験合格者144人、新司法試験合格者2,065人)である。
 18年~26年の新・旧司法試験、「法科大学院」組、「予備試験」組のそれぞれ合格者数や合格率については、次の表1を参照されたい。


● 法科大学院の累計合格者数と累積合格率:
 16年度に創設された法科大学院のこれまでの修了者(17年度~25年度の74校)合計は、3万6,259人である。そのうち、司法試験(新司法試験含む)を1回以上受験した人数、すなわち「受験者実数」は3万3,967人で、合格者合計(累計合格者数)は1万6,725人である。
 したがって、「累積合格率」(合格者合計÷受験者実数)は“49.2%”となる。なお、この合格者合計、受験者実数、累積合格率は、「予備試験」組を除いたものである。(表2参照)


法曹人口の推移

近年の「法曹三者」(裁判官、検察官、弁護士)の人数の増加推移をみてみる。
 まず、法曹の大部分を占める弁護士の人数は、平成3(1991)年は1万4,080人であったが、16(2004)年に2万人を超え(2万240人)、23年に3万人を超えて(3万518人)、26年には3万5,113人となり、23年間で2.5倍に増加している。
 裁判官と検察官の人数も3年以降、おおむね増加している。3年には、裁判官が2,022人、検察官が1,173人であったが、26年には裁判官が2,944人、検察官が1,835人となっている。
 「法曹三者」合計では3年の1万7,275人から26年の3万9,892人へと、法曹人口は23年間で2.3倍に増えている。(図3参照)


< 法曹人口等についての見解 >
13年・審議会『意見書』

「司法制度改革審議会」(平成11年、内閣の下に設置。以下、審議会)は13年6月、法曹人口の拡大/法科大学院創設など法曹養成制度の改革/国民の司法参加(裁判員制度)など、司法制度全般にわたって、その根幹に関わる大幅な改革を提言し、『司法制度改革審議会意見書-21世紀の日本を支える司法制度-』(以下、『意見書』)として取りまとめた。
 その中で、法曹人口の拡大やそれに係る法科大学院の教育内容・方法等について、およそ次のように提言している。


政府はこの審議会『意見書』を踏まえ、司法制度を支える体制の充実強化を図るための推進計画を閣議決定した。

25年・検討会議『取りまとめ』

政府の法曹養成制度関係閣僚会議の下に設置された「法曹養成制度検討会議」(24年8月設置。以下、検討会議)は25年6月、法曹養成に関する制度の在り方を検討し、『法曹養成制度検討会議取りまとめ』(以下、『取りまとめ』)として提示した。
 検討会議は『取りまとめ』の中で、今後の法曹人口の在り方や法科大学院教育の向上等について、次のような提言を示した。


政府は25年7月、この検討会議『取りまとめ』の内容を是認し、一連の法曹養成制度改革を推進するために前述した『法曹養成制度改革の推進について』を決定した。
 そして、2年間の検討・議論の結果、前述した政府の『推進会議決定』が提示された。

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< 法科大学院教育の改善取組 >
法科大学院の成果と課題

法科大学院は、複雑・多様なグローバル化社会における司法制度を支える人的基盤の整備として、旧司法試験による超難関、一点集中型の法曹養成から脱却し、質・量ともに豊かな法曹を確保するため16年度に創設された。
 法科大学院創設から10年余り経つが、この間、新たな法曹養成制度の中核的な役割を担い、弁護士を中心に有為な多数の法曹人材を輩出してきたことは前述したとおりである。
 その一方、各法科大学院の例えば司法試験の合格状況をみると、大きなばらつきがあり、例えば、26年の「単年合格率」が21.2%、「累積合格率」が49.2%で、創設時に目標とされた「法科大学院修了者の7~8割が司法試験に合格」(26年の「累積合格率」70%以上は、74校中、4校)とは程遠い状況である。こうした、司法試験合格率の低迷に加え、法科大学院の入学志願者や受験者の減少傾向もみられ、深刻な課題を抱えた法科大学院も少なからず存在し、厳しい状況が続いている。
 他方、中教審の法科大学院特別委員会(以下、法科特別委)はこれまで、法科大学院教育の改善・充実に向けて多岐にわたるさまざまな提言や報告を取りまとめ、改善を促進してきた。

入学定員の適正化等

中教審の法科特別委は21年4月、『法科大学院教育の質の向上のための改善方策について』(以下、『21年改善方策』)で、法科大学院教育の質の向上等に深く関わる入学定員の適正化に向けた提言を示した。
 当提言は、“競争性の確保”が困難な法科大学院について、“質の高い入学者の確保”のために、早急に「入学定員の見直し」など、“競争的な環境の整備”が不可欠であるとした。
 各法科大学院はこの提言を受け、22年度からこれまでに全ての法科大学院が入学定員(募集人員)の削減等を実施してきた。
◆ 入学定員、ピーク時の“半分以下”/入学者数、ピーク時の“4割弱”
 各法科大学院の入学定員削減等による組織見直しの結果、入学定員は、ピーク時の17年度~19年度入学定員(5,825人)に比べ、27年度は2,656人(45.6%)減の3,169人となり、さらに28年度(予測)は3,101人(53.2%)減の2,724人となる見込みである。これで、入学定員は、ピーク時の“半分以下”(46.8%)まで削減されることになる。
 入学者数は18年度ピーク時の5,784人から27年度の2,201人へと、9年間で3,583人(61.9%)減り、入学者数もピーク時の“4割弱”(38.1%)まで減った。(図4参照)


◆ 「累積合格率」が全国平均の“半分未満”の25校:入学者数はピーク時の約93%減
 26年司法試験における「累積合格率」の全国平均は49.2%で、その“半分(24.6%)未満”の法科大学院は25校に達している。
 この25校の27年度入学者数は90人(全入学者数の4.1%)で、ピーク時の18年度入学者数1,253人の92.8%減である。また、25校の入学定員もピーク時(18年度~20年度)の1,315人から27年度の219人と、83.3%減少している。
 “合格率に課題のある法科大学院”では、入学者数の大幅な減少が伺える。
 なお、こうした課題を抱える25校の法科大学院のうち、既に「募集停止」等を公表しているところは21校に及ぶ(27年7月現在)。(表2参照)
◆ 「募集停止」の急増
 全ての法科大学院が22年度から入学定員削減等の組織見直しを行ってきたが、深刻な課題を抱える法科大学院の間では「募集停止」が急増している。
● 28年度「募集校」数はピーク時の“6割強”、45校
 法科大学院は創設時の16年度68校でスタートし、翌17年度~22年度まで74校で学生募集を行ってきた。
 各法科大学院で入学定員の削減が行われる中、23年度1校/25年度4校/26年度2校/27年度13校/28年度9校(27年7月現在)がそれぞれ「募集停止」(合計29校。うち、2校は「廃止」)を実施または表明している。
 その結果、28年度の学生「募集校」数は、ピーク時74校の“6割強”(60.8%)に当たる45校となる見込みである。(図5、表3参照)


公的支援の見直し

文科省は深刻な課題を抱える法科大学院の自主的・自律的な組織見直しを推進するため、中教審法科特別委の提言を受け、第1弾(22年9月公表)、第2弾(24年9月公表)及び第3弾(25年11月公表)と、これまで段階的に「公的支援の見直し」策を強化してきた。
◆ 「補助金」等の“減額”措置:第1弾=24年度6校、25年度4校/第2弾=26年度18校
 24年度~26年度にかけ、課題を抱える法科大学院の組織見直しを促進するため、「司法試験合格率」(合格者数÷修了年度を問わない全受験者数)や「競争倍率」、「入学定員充足率」などを指標にして、公的支援の見直しを行った。
 財政支援見直しの“第1弾”として、「司法試験合格率」「競争倍率」による補助金等(国立大は運営費交付金、私立大は経常費補助金<特別補助>)の減額の指標に該当する法科大学院は24年度6校(私立大)/ 25年度4校(国立1校、私立3校)に上った。
 さらに「入学定員充足率」を新たな指標として加えた“第2弾”では、26年度対象校として私立16校、国立2校の計18校が補助金等の減額措置に該当した。
◆ 更なる強化策:「3類型」化による補助金等の配分率の設定=第3弾(27年度~)
 文科省は、政府の法曹養成制度関係閣僚会議決定(25年7月)による法科大学院の抜本的な組織見直しへの取組要求と、中教審法科特別委の提言を踏まえ、入学定員の適正化を含む抜本的な組織見直しを加速するために、「公的支援見直し」の“第3弾”として、次のような強化策を決定し、27年度予算から適用している。なお、28年度も引き続き実施される。
● 「公的支援見直し」の“更なる強化策”の仕組み
 27年度から適用された補助金等見直しの強化策は、およそ次のような仕組みである。
 まず、全ての法科大学院を、「司法試験合格率」(累積合格率、法学未修者の直近の合格率)/「直近の入学定員充足率」/「法学系以外の出身者や社会人の直近の入学者数・割合」など、多様な「指標」に基づき、その成果(点数化)に応じて「3類型」に分類する。
 各類型には、入学定員充足状況の傾向を勘案して、「第1類型」=90%/「第2類型」=A:80%、B:70%、C:60%/「第3類型」=50%といった“5ランク”に減額された「基礎額」が設定される。
 こうした法科大学院の財政支援上の類型化を図った上で、先導的な教育システムの構築、教育プログラムの開発、質の高い教育提供をめざした「連合」など優れた取組の提供を評価し、「第1類型」には“+5%~+20%”(取組ごとの加算率。以下、同)/「第2類型」(A・B・C)には“+5%~+50%”、/「第3類型」には“+50%~+60%”の加算率をそれぞれ措置(加算)する。
 「基礎額算定率」+「加算率」が補助金等の「配分率」になる。
 また、28年度以降は、「第3類型」の「基礎額」(50%)を“0%”まで減額した上で、“地方校・夜間校”のみに加算額分だけの増額の可能性がある。つまり、28年度以降は、法科大学院に係る補助金等の“全額カット”もあり得る。(図6参照)
 27年度の「配分率」50%は7校(いずれも私立大)で、うち2校は28年度からの「募集停止」を表明している(27年7月現在)。
 また、こうした財政支援の見直しに加え、法科大学院に裁判官や検察官等の教員派遣を行わない“人的支援の見直し”も講じられる。


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< 「認証評価」の厳格化と法的措置 >
中教審の『26年改善・充実方策』提言

中教審の法科特別委は26年10月、法科大学院教育の更なる改革・改善を目指して『法科大学院教育の抜本的かつ総合的な改善・充実方策について』(以下、『26年改善・充実方策』)を取りまとめた。
 『26年改善・充実方策』は、これまでの法科大学院教育の改革の成果と現状等を踏まえ、〇「組織見直しの推進」として、“司法試験の累積合格率7~8割”を目指せるような定員規模の検討・明示と、それまで当面の間、公的支援の見直し等を通じた全体の“入学定員を3,000人から更に削減”/〇「教育の質の向上」として、法学未修者教育の充実や「共通到達度確認試験(仮称)」の導入、“客観的指標を活用した一層厳格な認証評価”の実施/〇「優れた資質を有する志願者の確保」として、積極的な広報活動などを提言した。

「認証評価」の厳格化:3つの評価項目を追加

文科省は政府の『推進会議決定』 (27年6月末)に先立ち、中教審の『26年改善・充実方策』提言等を踏まえ、法科大学院における教育研究の質の確保や水準の向上に重要な役割を担う「認証評価」について、これまでの評価事項も踏まえつつ、法科大学院の“入り口”/“教育活動”/“出口”といった3つの観点から、適格認定の判定の厳格化や認証評価機関ごとの評価のばらつきの是正等の改善のために、評価項目の見直しを行った。
 具体的には、認証評価機関が作成する大学評価基準に盛り込む評価項目を明確化するため、次のような3つの事項を追加する関係省令(学校教育法第110条第2項の細目省令)の改正(27年4月施行)と、評価に当たっての客観的指標の活用を示した。
1.入学者選抜における「競争倍率」(目安:2倍未満)
 「競争倍率」が当評価の水準指標である“2倍”(目安)を下回る場合、競争的環境の下での入学者選抜が十分に機能しているとは言いがたく、入学者の質保証への影響が懸念される。
 そのため、適性試験や個別の入学者選抜を通じて入学者の質が確保できているかを重点的に確認する必要がある。
2.「入学定員充足率」(目安:50%未満) /「入学者数」(目安:10名未満)
 「入学定員充足率」が当評価の水準指標である“50%”(目安)を、「入学者数」が“10名”(目安)をそれぞれ下回る場合、教育組織として規模が小さくなりすぎている恐れがあり、法科大学院として相応しい教育環境の確保への影響が懸念される。
 そのため、夜間開講や地域性の事情も勘案しつつ、定員に基づいた入学者数の適正な管理とともに、入学定員についても適切に設定されているかを重点的に確認する必要がある。
3.「司法試験合格率」(目安:全国平均の半分未満)
 司法試験の「合格率」が当評価の水準指標である“全国平均の半分”(目安)を下回る場合、教育の実施や教員の質の保証に課題があると強く類推される。 そのため、法学未修者教育の実施状況や夜間開講といった個別の事情及び司法試験の合格状況の改善状況なども勘案しつつ、法科大学院として相応しい教育の質が確保できているかを重点的に確認する必要がある。

「組織閉鎖命令」(閉校)も含めた法的措置

法科大学院は、機関別と分野別両方について、“5年以内”ごとに「認証評価」を受けなければならず、その評価事項は一般の専門職大学院に比べて詳細で多岐にわたっている。
 さらに、27年度からは認証評価機関における評価基準に上記のような客観的な指標が新たに加わり、28年度~32年度の第3順目の認証評価において積極的な運用が図られる。
 文科省は、客観的な指標による認証評価によって適格認定を受けられなかった深刻な課題を抱える法科大学院に対し、教育状況の報告や資料の提出を求める体制・手続の整備等を行う。文科省は、そうした調査・ヒアリング等の過程で法科大学院設置基準などにおける「法令違反」が疑われる場合、直ちに「是正」を促し、それでも改善されない場合には法令(学校教育法第15条等)に基づき「改善勧告」、「変更命令」、「組織閉鎖命令」(閉校)といった各措置を段階的に実施していくことが想定される。

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< 法曹養成の理念と現実 >
“点”から“プロセス”へ

政府の司法制度改革に関する『意見書』(13年6月)は、当時、超難関であった司法試験という「“点”による選抜」から「“プロセス”による養成」へという、法曹養成の基本的な理念を掲げ、その中核的な教育機関として法科大学院の創設を打ち出した。
 法科大学院は、法学部以外の出身者や社会人等も対象に、幅広い、柔軟な法的思考力や分析力等の育成、法曹としての責任感や倫理観の涵養に向け、「法科大学院-司法試験-司法修習」といったプロセスによる法曹養成を担う。(図7参照)


“想定外”の展開

『意見書』は、法曹養成についての具体的な目標を掲げ、政府もこれを推進するとした。
 各大学はこの政府方針を法曹養成への参入にまたとない好機として捉え、16年度に68校の法科大学院が一気に開設され(17年度設置74校)、入学定員も17年度~19年度には5,800人余りに達した。
 しかし、政府の当初目標や法科大学院教育のスキームは“想定外”の事態に陥り、法科大学院の抱える課題(志願者・受験者・入学者の減少、司法試験合格率の低迷、募集停止校の増加、法科大学院教育に及ぼす予備試験の影響等)が一段と深刻さを増している。

理念を踏まえた、法曹養成の再構築

法曹養成が当初期待されたような展開をみせなかった背景には、法曹人口の需要と供給(法曹有資格者の養成と活動の確保)/法科大学院の設置状況(法曹養成の量と質)/司法試験制度(予備試験制度の設置等)などの問題があろう。特に、司法試験合格者数の当初目標「年間3,000人程度」の“撤回”、及び「年間1,500人程度」とする“修正”は、政府方針にとって異例ともいえる大転換で、今後の法曹養成に与える影響は大きいとみられる。
 ともあれ、今回の政府『推進会議決定』を契機に、13年の政府・審議会『意見書』に謳われている法曹養成の基本的な“理念”を踏まえつつ、法科大学院教育の「体質強化」(量と質)や学生への経済的支援の拡充とともに、法曹有資格者の活動領域の一層の拡大を図るなど、法曹を目指す者にとって魅力のある法曹養成の再構築が求められる。