今月の視点 2015.6

27年度「法科大学院」受験者数、初の“1万人割れ” !

「予備試験」受験者数は2年連続“1万人超”で、「法科大学院」上回る !

2015(平成27)年度

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 法曹養成の中核的な教育機関として16年度に創設された法科大学院の27年度入試状況は、入学定員、志願者数、受験者数、合格者数、入学者数のいずれも過去最低を更新。受験者数は創設以来、初めて1万人を割り込む9,351人だった。募集停止が急増した27年度入試は、ピーク時の73%に当たる54校で実施され、入学定員充足率は約70%に改善された。
 一方、23年に開始された「司法試験予備試験」(予備試験)の27年受験者数は、初めて前年をやや下回ったが、2年連続で1万人を超え、法科大学院を上回った。
 ここでは、法科大学院入試と予備試験の実態、法科大学院教育の改善・充実に向けた中教審『提言』や取組、及び政府の法曹養成制度改革の方針(案)などについてまとめた。

 

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< 法科大学院の入試状況 >

 

入学定員

 

◆ 定員削減と募集停止による減員
 法科大学院の入学定員は、創設時の16年度(法科大学院募集校数68校)が5,590人で、17年度~19年度(募集校数:17年度~22年度74校)の5,825人を最多に、20年度5,795人、21年度5,765人と創設から5年間は5,000人台後半で推移していた。
 しかし、中教審の法科大学院特別委員会(以下、法科特別委)の『法科大学院教育の質の向上のための改善方策について』(21年4月。以下、『21年改善方策』)における入学定員の適正化に向けた提言を受け、22年度以降は毎年度、入学定員(募集人員)の減員がみられる。
 入学定員はまず、22年度に4,909人と5,000人を割り、23年度には募集停止1校(募集校数73校)もあって4,571人、24年度(同)は4,484人、25年度には廃止1校、新たな募集停止4校(募集校数69校)などで4,261人になった。26年度は新たな募集停止2校(募集校数67校)と定員削減が相俟って、入学定員は3,809人と4,000人を割り込んだ。
 さらに27年度は新たな募集停止が13校に急増(募集校数54校)したことと、定員削減によって、入学定員は3,169人と、ピーク時(17年度~19年度:5,825人)の約54%まで減員された。(図1・図2参照)
◆ 募集停止、統廃合
 法科大学院の入学定員の適正化や組織の見直し等については、中教審の改善提言等を踏まえ、22年度からこれまでに全ての法科大学院で入学定員の削減等が実施されてきた。
 そうした中で27年度までに、次の20校が募集停止や統廃合を実施している。(図1参照)
 1.23年度から募集停止(1校)
 ➀ 姫路獨協大
  * 25年3月31日付け(24年度最終日)をもって、法科大学院を「廃止」。
 2.25年度から募集停止(4校)
 ➀ 大宮法科大学院大
  * 桐蔭横浜大と「統合」(28年3月を目途)、「桐蔭法科大学院」として運営。
 ➁ 明治学院大 / ➂ 駿河台大 / ➃ 神戸学院大
 3.26年度から募集停止(2校)
 ➀ 東北学院大 / ➁ 大阪学院大
 4.27年度から募集停止(13校)
  ● 国立5校:➀ 新潟大 / ➁ 信州大 / ➂ 香川大<香川大・愛媛大連合法務研究科> / ➃ 島根大 / ➄ 鹿児島大
  ● 私立8校:➀ 白鷗大 / ➁ 獨協大 / ➂ 大東文化大 / ➃ 東海大 /➄ 関東学院大 / ➅ 龍谷大 / ➆ 広島修道大 / ➇ 久留米大
 なお、28年度からの「募集停止」については、静岡大/熊本大の国立2校、及び東洋大/愛知学院大/京都産業大の私立3校の計5校が表明している(27年5月現在)。

 

 

志願者数

 

 法科大学院の志願者数(延べ数。以下、同)は、創設された16年度の7万2,800人を最多に、17・18年度は約4万人まで一気に激減した。
 19年度は前年度より12%ほど増加して約4万5,000人まで回復したが、その後は20年度に4万人割れ、21年度に3万人割れと大幅に減少。22・23年度は2万人台前半を維持したものの、24年度は2万人割れ、25年度は1万人台前半まで減少し、26年度は1万1,000人台に低迷。27年度はさらに減少して1万370人とかろうじて1万人台に留まったものの、創設時の“14.2%”まで激減した。(図2参照)

 

志願倍率

 

 志願倍率(志願者数÷入学定員)は、ここ数年の募集停止の増加と定員削減による入学定員の減少以上に志願者数が大幅に減少したため、24年度~26年度まで低下傾向が続いた。
 志願倍率のこれまでの推移を概観すると、16年度の13.0倍を最高に、17年度~20年度は7倍前後、21年度~23年度は5倍前後であったが、24年度は4倍台、25年度は3倍台になり、26年度は3.0倍で、16年度(創設時)の4分の1以下まで低下した。
 27年度は志願者数減(対前年度比9.4%減)以上に、急増した募集停止などによって入学定員が大幅に減少(同16.8%減)したため、志願倍率は前年度より0.3ポイント上昇の3.3倍と、4年ぶりにアップした。(図2参照)

 

 

受験者数

 

 受験者数(延べ数。以下、同)は、前記の志願者数とほぼ同様の動きで減少している。
 受験者数は創設当初の16年度の4万810人を最多に、17・18年度は約3万人まで急激に減少した。19・20年度は若干増加して3万1,000人台であったが、21年度~23年度は2万人台で毎年度減少。24年度は約1万7,000人、25年度は約1万2,000人で、26年度はさらに減少して1万267人と、かろうじて1万人台をキープした。
 27年度は、志願者数の減少率とほぼ同様の対前年度8.9%減となる9,351人で、創設以来、初めて1万人を割り込んだ。(図3参照)

 

合格者数

 

 合格者数(延べ数。以下、同)は、16年度の9,171人から18年度の1万6人まで増加し、その後は毎年度減少している。19年度~21年度は9,000人台、22・23年度7,000人台で、24年度6,500人台、25年度5,600人台で、26年度は5,100人台まで減少した。
 27年度はさらに減少し、ピーク時(18年度)より4,994人(49.9%)少ない5,012人である。つまり、27年度合格者数は、ピーク時のほぼ半数まで減少している。(図3参照)

 

競争倍率

 

 競争倍率(受験者数÷合格者数)は、受験者数の減少に連動して24年度以降、毎年度低下傾向を示している。
 競争倍率は16年度の4.45倍を最高に、17年度~20年度は3倍前後、21年度~23年度は2倍台後半に低下。23年度はやや上昇したものの、24年度2.53倍、25年度2.20倍、26年度2.00倍と、21年度~26年度まで2倍台に低迷。
 27年度は4年連続低下で2倍を割る1.87倍と、過去最低を更新した。(図3参照)
◆ 競争性の確保
 中教審の法科特別委は『21年改善方策』で、入学者の質保証に係る入学者選抜の競争性の観点から、「相応の競争原理がはたらき、適正な入学者選抜が確保できる」と考えられる競争倍率は“2倍以上”が必要と指摘している。
 「競争倍率2倍未満」の法科大学院は、21年度42校(74校中)、22年度40校(同)にのぼり、数年前は半数以上の法科大学院が競争的環境とは言い難い状況で入試を行っていた。
 そうした中、各法科大学院は中教審の『21年改善方策』提言を受けて定員削減を行った。その結果、「競争倍率2倍未満」の法科大学院は、23年度19校(73校中26.0%)、24年度13校(同、17.8%)、25年度7校(69校中10.1%)と改善されたが、26年度は23校(67校中34.3%)に激増。特に国立大は25年度0校から5校に急増し、私立大も25年度7校から18校に増加した。
 27年度の「競争倍率2倍未満」は、国立大9校、公立大1校、私立大22校の合計32校(54校中59.3%)にのぼり、さらに増加した。(表1参照)

 

 

入学者数

 

 入学者数は、これまで最多の18年度(5,784人:前年度より240人、4.3%増)以外、毎年度減少している。
 入学者数の推移をみると、16年度~19年度まで、17年度の約5,500人を除き5,700人台、20年度は約5,400人である。21・22年度は4,000人台、23・24年度は3,000人台で推移した。
 25年度は2,000人台後半、26年度は2,200人台まで減少した。
 27年度は前年度よりやや減少して2,201人と2,200人台をキープしたが、18年度ピーク時の38.1%まで減少した。(図4参照)
◆「法学未修者」、「法学既修者」別の入学状況
 “多様な人材養成”を目指す「法学未修者コース」(3年制。以下、未修者コース)の入学者数の推移をみると、16年度~18年度まで増加し、19年度以降は毎年度減少している。未修者コースの入学者数は、18年度の3,605人(全入学者数に占める割合62.3%)をピークに、19・20年度は3,000人台(同60%強)、21・22年度は2,000人台(同50%台)である。23年度の未修者コースは1,704人(同47.1%)となり、「法学既修者コース」(2年制。以下、既修者コース)の入学者数(1,916人、占有率52.9%)を創設以来、初めて下回った。
 24年度は未修者コース1,325人(占有率42.1%)、既修者コース1,825人(同57.9%)/25年度は未修者コース1,081人(同40.1%)、既修者コース1,617人(同59.9%)/26年度は未修者コース811人(同35.7%)、既修者コース1,461人(同64.3%)/27年度は未修者コース770人(同35.0%)、既修者コース1,431人(同65.0%)で、未修者コースの入学者はピーク時の21.4%まで減少している。(図4参照)
◆「社会人」の入学状況
 法科大学院入学者のうち、「社会人」入学者数と、その割合状況の概観は次のとおりである。
 「社会人」入学者数は16年度の2,792人(全入学者の48.4%)を最多に、18年度~21年度が1,000人台、22年度に1,000人を割り、26年度は500人を割った。
 27年度は405人(全入学者の18.4%)となり、16年度の14.5%まで激減している。

 

 

入学定員充足率

 

 法科大学院の入学定員充足率(入学者数÷入学定員×100)を全体の平均でみると、創設時の16年度のみが103.2%で定員を充たしているが、その後は17年度~20年度90%台、21・22年度80%台、23・24年度70%台、25年度60%台、26年度59.6%と60%を割った。27年度は急増した募集停止と入学定員削減によって前年度より9.9ポイント上昇の69.5%に改善されが、16年度を除き各年度とも“入学定員割れ”状態である。(図5参照)
 法科大学院ごとに、最近の入学定員充足率をみてみる。
 まず、充足率100%以上の法科大院は、21年度15校(74校中) → 22年度11校(同) → 23年度15校(73校中) → 24年度10校(同) → 25年度5校(69校中) → 26年度6校(67校中) → 27年度4校(54校中)と、27年度は21・23年度(ともに充足率100%以上が15校)の27%まで減っている。27年度の充足率100%以上の4校は、一橋大(充足率106%)/大阪大(同101%)/北海道大(同100%)/同志社大(同100%)で、国立大3校、私立大1校である。(表1・図6参照)
 次に、充足率100%未満、つまり“入学定員割れ”の法科大学院は、21年度59校(募集校数に占める割合79.7%) → 22年度63校(同85.1%) → 23年度58校(79.5%) → 24年度63校(同86.3%) → 25年度64校(同92.8%) → 26年度61校(同91.0%) → 27年度50校(同92.6%)と、25年度~27年度は9割以上が“入学定員割れ”状態である。(表1・図6参照)
 また、 “充足率50%未満”の校数は、21年度13校(募集校数に占める割合17.6%) → 22年度13校(同17.6%) → 23年度21校(28.8%) → 24年度35校(同47.9%) → 25年度40校(同58.0%) → 26年度44校(同65.7%)  → 27年度23校(同42.6%)と、27年度は好転している。(表1・図6参照)

 

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< 「予備試験」 の実施状況 >

 

法科大学院を経由しない“例外的ルート”

 

 司法試験の受験資格が得られる「司法試験予備試験」(以下、予備試験)は、旧司法試験(18年~23年まで新司法試験と並行実施)の廃止に伴い、23年から実施されている。
 予備試験は、経済的事情や既に実社会で十分な法律に関する実務を積んでいるなどの理由により法科大学院を経由しない者にも法曹資格を取得する道を開くために設けられた、いわば法科大学院の“例外的ルート”に当たる。
 予備試験は、短答式試験(5月)/論文式試験(7月)/口述試験(10月)の3段階で行われ、最終合格発表は11月上旬。予備試験合格者は、法科大学院修了者と同等の資格で翌年から司法試験の受験が可能で、受験回数等も次のように法科大学院修了者と同様の扱いである。
◆ 司法試験の受験回数等
 法科大学院修了もしくは予備試験合格後、最初の4月1日から5年の期間内は司法試験を毎回(5年以内5回)受験することができる(改正司法試験法:26年10月1日施行)。

 

「予備試験」出願者数・受験者数、26・27年の2年連続で「法科大学院」超え!

 

 23年~27年までの5回にわたる予備試験の実施状況は、次のとおりである。(図7参照)
 ➀ 23年(第1回):「予備試験」出願者数8,971人/ 受験者数6,477人(最初の短答式試験。以下、同)/最終合格者数116人。合格率(最終合格者数÷短答式受験者数。以下、同)は“1.8%”と、旧司法試験の合格率(17年までの単独実施時の合格率は2~3%台)よりも厳しい“超難関”試験であった。
 ➁ 24年(第2回):「予備試験」出願者数9,118人(前年比1.6%増)/ 受験者数7,183人(同10.9%増)/最終合格者数219人(同88.8%増)。合格率は23年より1.2ポイント上昇の3.0%に伸びた。
 ➂ 25年(第3回):「予備試験」出願者数1万1,255人(前年比23.4%増)/受験者数9,224人(同28.4%増)/最終合格者数351人(同60.3%増)。合格率は24年より0.8ポイント上昇の3.8%。出願者数は初の1万人の大台に乗り、25年度法科大学院の志願者数1万3,924人に迫る勢いであった。
 ➃ 26年(第4回):「予備試験」出願者数1万2,622人(前年比12.1%増)/受験者数1万347人(同12.2%増)/最終合格者数356人(同1.4%増)。合格率は3.4%で、25年より0.4ポイント下降。出願者数、受験者数とも26年度法科大学院の志願者数(1万1,450人)と受験者数(1万267人)を初めて上回った。
 ➄ 27年(第5回):「予備試験」出願者数1万2,543人(前年比0.6%減)/受験者数1万334人(同0.1%減。速報値)。出願者数、受験者数とも初めて前年度より僅かに減少したものの、受験者数は2年連続1万人台を維持。
 また、「予備試験」の出願者数、受験者数は、27年度「法科大学院」の志願者数(1万370人)と受験者数(9,351人)をともに2年連続で上回っている。

 

< 「予備試験」受験者・合格者の実態 >

 

法科大学院「適性試験」実受験者数“約4,000人”/「予備試験」受験者数“約1万人”

 

 法科大学院の志願者は、法学既修・未修に関わらず、「法科大学院全国統一適性試験」(適性試験)を受験しなければならない。出題内容は論理的判断力、分析的判断力、長文読解力、表現力の4部構成で、法科大学院入試の出願時に試験成績を提出する。
 各法科大学院では適性試験の統一的な入学最低基準点について、中教審の法科特別委の『21年改善方策』(21年4月)の提言を受け、22年度以降は適性試験の総受験者の“下位15%程度”に該当する受験者層の成績を目安として設定しているようである。
 この適性試験の実受験者数(適性試験は年2回受験可能)と予備試験の受験者数(27年は速報値)の推移は、次のとおりである。
 「適性試験」実受験者数:23年7,249人 → 24年5,967人(前年比17.7%減) → 25年4,945人(同17.1%減)  → 26年4,091人(同17.3%減)。
「予備試験」受験者数:23年6,477人 → 24年7,183人(前年比10.9%増) → 25年9,224人(同28.4%増)  → 26年1万347人(同12.2%増)  → 27年1万334人(同0.1%減)。
 26年の適性試験の実受験者数は約4,000人で、毎年17%台の“減少”傾向を示している。26・27年の予備試験の受験者数は約1万人で、“頭打ち”状態にある。
 また、予備試験の受験者増は、「学部在学中」と「法科大学院在学中」(いずれも、出願時。以下、同)の学生受験者によるものであることが目立つ。(図7・図8参照)

 

 

「予備試験」受験者・合格者の内訳の推移

 

◆ 受験者数:
 学部生・法科大学院生の割合が“増加”傾向
 予備試験の受験者の内訳をみると、「学部在学中」と「法科大学院在学中」の全受験者数に占める割合が23年22.1% → 24年30.8% → 25年43.1% → 26年46.1%と、“増加”傾向にある。
 また、学部生に比べ、法科大学院生の増加率の伸びが目立つ。(図8参照)
◆ 合格者数:
 学部生の割合は“30%台”で、ほぼ一定 / 法科大学院生“40%台”で増加傾向
 予備試験の合格者の内訳をみると、「学部在学中」の割合は全合格者数の30%台前半で推移しているのに対し、「法科大学院在学中」の割合は23年5.2% → 24年27.9% → 25年46.7% → 26年47.2% と急増し、26年は47%台に達している。
 なお、26年「予備試験」合格者数は356人(合格率3.4%)であるが、そのうち、予備試験の出願時に「学部在学中」であった者は114人(合格者数に占める割合32.0%:合格率4.0%)、「法科大学院在学中」の者は168人(同47.2%:合格率8.9%)であった。予備試験の合格率は、法科大学院在学生の方が学部在学生より2倍ほど高い。(図9参照)

 

 

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< 法科大学院教育の改善・充実方策 >

 

創設から十余年、法科大学院の厳しい状況

 

 ここまで、法科大学院の入試状況と予備試験の実施状況を中心に、その実態をみてきた。
 法科大学院は創設から10年余り経つが、この間、新たな法曹養成制度の中核的な役割を担い、法曹として活躍する者を多数輩出してきた。法科大学院教育の成果は一定程度評価されてきている一方、深刻な課題を抱える法科大学院も少なからず存在し、法科大学院の入学志願者や受験者の減少傾向、司法試験合格率の低迷など、厳しい状況が続いている。

 

中教審の『提言』等

 

 中教審の法科特別委は、法科大学院教育の改善・充実に向けて、前述したような『21年改善方策』(21年4月)のほか、多岐にわたる提言や報告を取りまとめ、改革を促進してきた。
 そうした中、法科特別委は26年10月、更なる改革を目指して『法科大学院教育の抜本的かつ総合的な改善・充実方策について』(以下、『26年改善・充実方策』)をまとめた。
◆『26年改善・充実方策』の概要
 中教審の『26年改善・充実方策』は、これまでの法科大学院教育の「改革の成果と現状」、今後目指すべき「法科大学院の姿」及び「今後取り組むべき改善・充実方策」について、次のように分析、提言している。(注.以下の枠囲み中の「 」付き太字・下線は、当方で付記)

 

< 認証評価の厳格化 >

 

3つの評価項目の追加

 

 文科省は中教審の『26年改善・充実方策』等を踏まえ、法科大学院における教育研究の質の確保や水準の向上に重要な役割を担う「認証評価」について、判定の厳格化や認証評価機関ごとの評価のばらつきの是正等の改善のために、評価項目の見直しを行った。
 具体的には、認証評価機関が作成する大学評価基準に盛り込む評価項目を明確化するため、次のような3つの事項を追加する関係省令の改正(27年4月施行)と、評価に当たっての客観的指標の活用を示した。

 

< 法科大学院の公的支援の見直し >

 

「補助金」等の“減額”措置

 

 文科省は課題を抱える法科大学院の自主的・自律的な見直しを促進するため、司法試験合格率や競争倍率、入学定員充足率などを指標にして、公的支援の見直しを行っている。
 財政支援の見直しについては、国立大は「国立大学法人運営費交付金」、私立大は「私立大学等経常費補助金」の法科大学院に係る項目が減額される。
◆「補助金」等“減額”対象校:第1弾=24年度6校、25年度4校/第2弾=26年度18校
 財政支援見直しの第1弾(22年9月公表)として、司法試験合格率と競争倍率の指標に該当する法科大学院が24年度6校(私立大)、25年度4校(国立1校、私立3校)に上った。
 さらに入学定員充足率を新たな指標として加えた第2弾(24年9月公表)では、26年度対象校として私立16校、国立2校の計18校が該当した。

 

第3弾(27年度~):公的支援見直しの更なる強化策

 

◆ 「3類型」化による補助金等の配分率の設定
 文科省は、政府の法曹養成制度関係閣僚会議決定(25年7月)を踏まえ、入学定員の適正化を含む抜本的な組織見直しを加速するために、公的支援見直しの“第3弾”として、次のような「公的支援見直しの更なる強化策」(25年11月公表)を決定し、27年度予算から適用する。
● 公的支援見直しの更なる強化策の仕組み
 27年度に適用される補助金等見直し強化策は、およそ次のような仕組みで実施される。
 まず、全ての法科大学院を、「司法試験合格率」(累積合格率、法学未修者の直近の合格率)/「直近の入学定員充足率」/「法学系以外の出身者や社会人の直近の入学者数・割合」など、多様な「指標」に基づき、その成果(点数化)に応じて「3類型」に分類する。
 各類型には、入学定員充足状況の傾向を勘案して、「第1類型」=90%/「第2類型」=A:80%、B:70%、C:60%/「第3類型」=50%といった“5ランク”に減額された「基礎額」が設定される。
 こうした法科大学院の財政支援上の類型化を図った上で、先導的な教育システムの構築、教育プログラムの開発、質の高い教育提供をめざした「連合」など優れた取組の提供を評価し、「第1類型」には“+5%~+20%”(取組ごとの加算率。以下、同)/「第2類型」(A・B・C)には“+5%~+50%”、/「第3類型」には“+50%~+60%”の加算率をそれぞれ措置(加算)する。
 「基礎額算定率」+「加算率」が補助金等の「配分率」になる。
 また、28年度以降は、「第3類型」の「基礎額」(50%)を“0%”まで減額した上で、“地方校・夜間校”のみに加算額分だけの増額の可能性があるとしている。つまり、28年度以降は、法科大学院に係る補助金等の“全額カット”もあり得る。27年度の「配分率」50%は7校、うち2校は28年度からの「募集停止」を表明している。(図10参照)
 なお、こうした財政支援の見直しに加え、法科大学院に裁判官や検察官等の教員派遣を行わない人的支援の見直しも講じられる。

 

 

◆ 27年度「配分率」:早稲田大135%、一橋大130%、東京大125%など、8校が100%超
 文科省は27年1月、27年度予算に適用される「法科大学院公的支援見直し加算プログラム」の審査結果を公表した。
 加算プログラムに申請したのは、法科大学院を設置する73校から、募集停止表明19校と公立2校(公立は国の公的支援を受けていない)を除く52校のうち、国立18校、私立24校の計42校である。プログラムの取組数は122件で、評価は審査委員会による5段階評価で行われた。
 最も高い判定である「卓越した優れた取組」には東京大、一橋大、岡山大の国立大3校/立教大、早稲田大、同志社大の私立大3校の計6校が選ばれた。
 また、「加算率」が最も高かったのは早稲田大(第1類型)の45%、次いで一橋大(第1類型)40%、東京大(第1類型)・同志社大(第2類型・B)35%などが続く。
補助金等の「配分率」の最高は早稲田大の135%で、一橋大(130%)、東京大(125%)、京都大・慶應義塾大(120%)、北海道大・大阪大・同志社大(105%)の8校が100%を超えた。

 

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【速 報】  政府・「法曹養成制度改革」方針(案) 

< 法曹人口の在り方 >

 

「司法試験」合格者数、“年に1,500人程度”!

 

 政府の法曹養成制度改革顧問会議(以下、顧問会議)は27年5月下旬、司法試験の合格者数を「毎年、1,500人程度」とする目標(案)を掲げ、必要な対策を講じていく方針を示した。
 当会議は、現行の法曹養成制度の下でこれまで直近でも1,800人程度(26年司法試験の合格者数1,810人)の有為な人材が輩出されてきた現状を踏まえ、当面、“1,500人程度”は輩出されるよう、必要な取組を進め、社会の法的需要に応えるために、今後もより多くの質の高い法曹が輩出され、活躍する状況になることを目指すべきであるとしている。(図11参照)

 

「司法試験」合格者数、当初目標の“半数”

 

 政府は平成14年、法的需要の拡大を想定して当時の旧司法試験の合格者数1,000人程度を「22年頃までに年間3,000人程度」にする目標を掲げ、16年度には法科大学院が創設された。
 しかし、法的需要は想定したように広がらず、法科大学院の低迷、司法試験の不振などが続く中、25年には政府の当初目標は撤回された。今回の目標(案)は、当初の半数である。

 

 

法科大学院の「司法試験」合格者数、18年~26年で約1万7,000人

 

 ところで、我が国の法曹人口は、平成13年に約2万2,000人であったが、26年には約4万人と、13年間で2倍近くに増えている。また、法曹人口の大半を占める弁護士に限れば、13年の約1万8,000人から、26年には約3万5,000人になっている。
 因みに、新司法試験開始の18年から26年における全法科大学院の司法試験「累積合格者数」は約1万7,000人で、「累積合格率」は約49%である。

 

< 低迷校への法的措置 >

 

“強制退場”も!

 

 政府の顧問会議は25年12月、法科大学院の信頼を確保するための法的措置について、次のような基本的方向性を示した。
◆ まずは、「公的支援の更なる強化策」等を通じて、各大学の自主的な組織見直しを促す。
 ただし、一定期間内に組織見直しが進まない場合は、課題が深刻で改善の見込みがない法科大学院について、組織見直しを促進するために必要な“法的措置”を講じることを検討する。
◆ 法的措置の具体的な在り方については、法曹人口や予備試験の在り方の検討とも整合性を図りつつ、更なる組織見直しを促進するという観点から検討する。
 その際、大学教育の特性を踏まえつつ、設置認可、認証評価、司法試験受験資格等の関係、法的措置の具体的内容、当該措置の判定基準、手続等を整理する。
◆ 各措置の対象となる法科大学院の判定については、司法試験合格率が著しく低い/入学者選抜の状況/入学定員の充足状況/教育水準(教育内容、教員の質、成績評価等)に課題が大きいこと、などを踏まえた基準を設定し、総合的に判断することを基本とする。
 顧問会議ではさらに27年5月末の会議において、上記のような基本方針を踏まえ、所謂「低迷校」への“強制的な退場”も含めた法的措置などを議論した模様である。
 政府は今後、27年7月には一連の法曹養成制度改革の方針を正式決定する予定である。

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