今月の視点

4月

大学入試の“進化”!

基礎学力に裏打ちされた21世紀型「汎用的能力」の「評価」!

旺文社 教育情報センター長 大塚/2015年4月1日掲載

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27年4月、大学は新課程「数学・理科」初年度入試を征した“脱・ゆとり教育”1期生を迎えた。彼らは、知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成のバランスを重視し、特に「理数教育の充実」を反映した数学・理科の学習指導要領の先行実施組である。27年入試は、急速に進む科学的知見に対応した理数教育の成果をみる最初の入試であった。
 大学入試は文教政策や社会的要請等で、螺旋階段のように“スパイラル”に進化してきた。
 ところで、今回100号を迎えた『今月の視点』は、これまで度々大学入試を取り上げてきた。本号は、中教審が昨年末答申した「高大接続・大学入学者選抜改革」等とも深く関わってくる大学入学志望者の「汎用的能力」の「評価」などを中心に改めてまとめた。


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< 大学入学志望者に求める資質・能力 >
大学入試の観点

大学入学者選抜(以下、ここでは大学入試)は、受験生やその保護者、高校関係者等に限らず、いつの時代も社会の様々なところで人々の関心を集める。26年12月に中教審が答申した「高校教育-大学教育-大学入学者選抜の一体的改革」提言(後述)は、関係者のみならず、社会的にも大きな波紋を広げている。
 大学入試は、基本的に入学志望者のどのような資質・能力を「評価」しているのか。
 まず、現行の大学入試における入学志望者の評価の観点を探ってみる。

相対評価と絶対評価

評価には、その目的によって、「相対評価」と「絶対評価」がある。
 入試では入学志望者の評価(成績)を序列化して、入学定員の枠内で“選抜”する「集団準拠型」の相対評価が主体となっている。
 一方、選抜の目的以外の一般的な試験(学校での定期試験等)や資格・検定試験等は、学力などの達成度を“把握”する「目標準拠型」の絶対評価である。
 現行のセンター試験は、絶対評価(目標準拠型)を主な目的としつつ、ほとんどが相対評価(集団準拠型)として利用されており、機能としては2つの側面をもっているといえる。

「評価」の対象

各大学は、それぞれのアドミッション・ポリシーに基づいて、入試の実施方法や入試科目等を設定し、当該大学(学部)にふさわしい入学者を選抜する。
 そのため、入試では主に「高校教育の達成度」(入学志望者の履歴。教育・学習の蓄積)と「大学教育にふさわしい能力・適性」(入学志望者の将来、可能性)といった2つの観点を「評価」の主な対象にしている。
◆ 高校教育の達成度 (図2参照)
 大学入学志望者の高校教育の達成度を評価することは、言い換えれば、小・中学校、高校教育を通じて育まれた「確かな学力」「豊かな人間性」「健康・体力」を総合した“力”、すなわち「生きる力」をみることである。
 これに関し、中教審の高等学校教育部会は26年6月、「全ての高校生に共通に身に付けさせる資質・能力=“コア”」や「高校教育の質保証に向けた評価の仕組み」などについての基本的な考え方を提示し、新たなテスト(当時)の仕組みとして「達成度テスト・基礎レベル(仮称)」の導入を提言し、高校教育の質保証の仕組みの構築を求めた。 現行の大学入試では、「生きる力」のうち、とりわけ「確かな学力」を構成する➀基礎的・基本的な知識・技能/➁それらを活用する思考力・判断力・表現力/➂主体的に学習に取り組む態度といった所謂「学力の3要素」を主体に評価する。
 これを具体的な試験実施の面からみると、➀「基礎的・基本的な知識・技能」は主にセンター試験/➁「思考力・判断力・表現力」及び➂「主体的な学習意欲」は主に個別試験によって評価している。もちろん、センター試験でも「思考力・判断力・表現力」等を測る出題がなされ、個別試験にも「基礎的・基本的な知識・技能」を測る出題がみられる。
◆ 大学教育にふさわしい能力・適性
 大学は、志願者が当該大学・学部(学科)の目的や特色、専門分野の特性等にふさわしい能力・適性をもっているかを評価する必要がある。
 そのため大学は、高校段階における基礎的な学習の達成度を測ることを主な目的とするセンター試験とは異なる観点で、志願者の学力や適性等を評価する個別試験を行う。
 個別試験は共通試験であるセンター試験と異なり、志願者の思考過程も評価できる記述(論述)式を中心に学力試験や小論文、プレゼンテーション、面接などで志願者を評価する。
 志願者の評価は、大学側の個別試験のほか、無論、高校側による「調査書」(現行では校内尺度が主体)や各種の資格・検定試験等の成績なども含めて総合的に行われる。
 なお、志願者の適性等については、潜在的な資質・能力などを測る観点から、かつて「進学適性検査」(昭和23<1948>年~昭和29年)や「能研テスト」(昭和38<1963>年~昭和43年)といった共通テストを導入した時代もあった。

大学教育の“準備化”と入試

大学(学部)教育を受けるために必要な知識・技能や意欲・態度などについて、大学はそれらを試験問題化したり面接を行ったりして志願者の能力や適性を直接、評価する。
 他方、それらとは別にアドミッション・ポリシーの一環として、入学後の当該大学(学部)教育を見据えた高校での具体的な学習内容や範囲、レベルなどを『選抜要項』等で志願者に予め知らせている大学もある。
 こうした大学教育のいわば間接的な“準備化”を図ることによって、直接的な個別試験による入試と相俟って、高校教育と大学教育とをより円滑に接続することになる。

< 学校での資質・能力の育成 >
「生きる力」の実効化

小・中学校、高校ともこれまでの学習指導要領では、各教科・科目の目標・内容が主体的に捉えられがちで、育成すべき資質・能力の観点はあまり意識されてこなかった。
 特に、「生きる力」が学習指導要領に掲げられ(小・中学校10年、高校11年告示)、「総合的な学習の時間」がセットで導入されたものの、当時の“学力低下論”などによって、「生きる力」の理念は学校現場で共通認識として十分に捉えられてこなかったようである。
 他方、21世紀に入り、急激な社会状況の変化の中で特に平成23年3月11日の東日本大震災(“3・11ショック”)を経験した我々は、これまで経験したことのない難題に立ち向かい、その解決策を見出していかなくてはならない。
 そのためには、現行の学習指導要領の理念でもある“「生きる力」を実効的に獲得する手立て”を明確に打ち出すことが必要である。

次期学習指導要領の方向性

下村博文文科大臣は26年11月下旬、次期学習指導要領に向けた「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」を中教審に諮問した。審議事項の柱は、次の3本である。


次期学習指導要領の基本的な方向は、学びと社会とのつながりを意識し、「何を教えるか」という知識の質・量の改善に加え、「何を、どのように学ぶか:課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び=アクティブ・ラーニング」という、学びの質や深まりを重視するとともに、学習評価として「何ができるようになるか」を重視するとしている。
 また、次期学習指導要領の構造としては、これまでの各教科等の教育目標・内容を中心にした“縦割り”(コンテンツ・ベース)から、教科“横断型”の「資質・能力」重視の枠組み=コンピテンシー・ベースに見直される可能性がある。
 高校教育に関しては、中教審答申の「高校教育-大学教育-大学入学者選抜の一体的改革」提言を踏まえ、より高度な「思考力・判断力・表現力」等を育成するための“新たな教科・科目”の在り方/日本史“必修化”の扱い(地歴の見直しの在り方)なども審議される。
 中教審は現在、次期学習指導要領の基本的な方向性を審議しており、今夏を目途に取りまとめる。その後、基本的方向性に沿って各専門部会等で審議し、28年度の「答申」を目指す。

汎用的能力

これからの時代に学校教育で求められる能力としては、基礎的・基本的な「知識・技能」や「思考力・判断力・表現力」のみならず、各教科等を横断する基礎的な「汎用的能力」も重要である。
 これは、課題発見・解決能力、論理的思考力やコミュニケーション能力などの教科横断型学習と、それに伴う“学び方の学習”によって育成される。つまり、現行学習指導要領で必修となっている「総合的な学習の時間」などによって培われる能力であるといえる。
 こうした能力の育成は、国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)が取得可能な国際バカロレアのディプロマ・プログラム(DP:16歳~19歳対象)のカリキュラム(「知識の理論」など)にも通じているといえよう。

21世紀型能力

国立教育政策研究所(国教研)では、今後求められる資質や能力を効果的に育成する観点から、教育課程の編成に寄与する基礎的な資料を得ることを目的に「教育課程の編成に関する基礎的研究」を行っている。
 24年度の報告書(『教育課程の編成に関する基礎的研究報告書5』:25年3月)では、「思考力」(問題解決・発見力・創造力/論理的・批判的思考力/メタ認知<自分自身の課題の解決や学習を振り返る。より高い視点から自分自身を認知する>・適応的学習力)を中核に、それを支える「基礎力」(言語スキル/数量スキル/情報スキル)、その使い方を方向付ける「実践力」(自律的活動力/人間関係形成力/社会参画力/持続可能な未来づくりへの責任)といった“三層構造”で構成される「21世紀型能力」を提案している。
 「汎用的能力」や「21世紀型能力」は「生きる力」の実効化にもつながり、次期学習指導要領における育成すべき「資質・能力」の基本的な観点になろう。(図1・図2参照)


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< 中教審の 『高大接続・入試改革答申』 >
高校教育-大学教育-入学者選抜の一体的改革

中教審は26年12月、高校教育、大学教育及びそれらを接続する大学入学者選抜(答申では、大学入試を大学入学者選抜)の抜本的な改革を『新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について』(以下、『高大接続・入試改革答申』と略)として答申した。
 当『答申』は、教育改革における最大の課題でありながら実現が困難であった「高大接続」改革を初めて現実のものにするための提言であるとし、その改革に大きく立ちふさがるのは「大学入学者選抜の在り方」であると指摘している。
 そして、高大接続改革が現在直面する最大の課題は、高校教育と大学教育とを接続する役割を担う大学入学者選抜が高校教育で育成されるべき“力”の在り方を踏まえた「評価」を行っていないことだという。
 高校と大学の接続段階での「評価」の在り方が変われば、それを“てこ”に高校教育と大学教育の在り方も大きく転換されるであろうという。

高校の授業と入学者選抜の現状と課題

『高大接続・入試改革答申』は、高校教育と大学入学者選抜の現状から、次のような課題を指摘している。
 高校では、小・中学校に比べて「知識伝達」型の授業に留まる傾向があり、「学力の3要素」を踏まえた指導が浸透していない。
 このような状況には、「一般入試」において、一斉かつ画一的な条件で実施される試験で、“予め設定された正答”に関する“知識の再生を1点刻み”に問い、その結果の点数で選抜する「評価」から転換しきれていないこと/「AO入試」「推薦入試」の多くが本来の趣旨・目的に沿ったものでなく、単なる“入学者数確保の手段”となってしまっていることなど、現行の多くの大学入学者選抜における学力評価が「学力の3要素」に対応したものとなっていないことが大きく影響しているという。

高校・大学教育を通じて育む「生きる力」の評価 (図2参照)

当『答申』は上述のような高校教育と大学入学者選抜の現状と課題を踏まえ、「生きる力」を支える「確かな学力」について、生徒や学生が身に付けるべき“力”の在り方は、それぞれの発達段階(各学校段階)で質的に変化していくものであるとしている。
 高校教育と大学教育を通じて育むべき「生きる力」を構成する「豊かな人間性」は国家及び社会の責任ある形成者として必要な教養と行動規範/「健康・体力」は自己管理能力や肉体的・精神的能力の鍛錬/「確かな学力」はそれを支える「学力の3要素」を高校教育と大学教育それぞれにおいて、社会で自立して活動していくために必要な“力”であると意味付けている。特に「学力の3要素」については、高校教育、大学教育それぞれの観点から、次のように捉え直している。


◆ 高校・大学教育と「学力の3要素」(図2参照)
 ● 高校教育:➀これからの時代に社会で生きていくために必要な、「主体性をもって多様な人々と協働して学ぶ態度=主体性・多様性・協働性」を養うこと/➁その基盤となる「知識・技能」を活用して、自ら課題を発見しその解決に向けて探究し、成果等を表現するために必要な「思考力・判断力・表現力等の能力」を育むこと/➂「思考力・判断力・表現力等の能力」の基礎となる「知識・技能」を習得すること。
 ● 大学教育:高校教育で培った上記のような「学力の3要素」を更に発展・向上させるとともに、これらを「総合した学力」として鍛錬すること。
 つまり当『答申』は、「生きる力」を構成する「豊かな人間性」を、高校教育では「国家・社会での形成者としての教養・行動規範」に、「学力の3要素」の「主体的に学習に取り組む態度」を「主体性・多様性・協働性」にそれぞれ置き換えている。

< 新テスト“創設”/センター試験“廃止”/個別選抜の“転換” >

『高大接続・入試改革答申』は、大学入学者選抜に係る主な提言として、新たな共通テストである「高等学校基礎学力テスト(仮称)」(「基礎学力テスト」と略)と「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」(「学力評価テスト」と略)の創設、「合教科・科目型」「総合型」出題など/センター試験廃止/「一般入試」「推薦入試」「AO入試」の区分を廃止/「思考力・判断力・表現力」等の多面的・総合的な評価を重視した個別選抜の確立/選抜の「公平性」に対する意識改革など、ドラスティックな改革方策を掲げている。

「基礎学力テスト」の創設

当『答申』は、高校教育の質保証と向上を図り、生徒の学習改善に役立てるために、主として学力の基礎となる「知識・技能」の評価に「基礎学力テスト」(中教審高等学校教育部会が提言した「達成度テスト・基礎レベル(仮称)」に相当)を31年度から導入するとしている。
 また、高校教育の内容や学習・指導方法、評価方法等の見直しも当テストの導入と並行して進めていくことを求めている。(表1・図3・図4参照)

「学力評価テスト」“導入”/センター試験“廃止”

当『答申』は、センター試験の役割を評価したうえで、これからの入学者選抜で求められる「確かな学力」の在り方や、高校段階での新たな観点による基礎学力を評価することなどを踏まえると、現行のような「知識・技能」中心の出題に留まらず、「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」を総合的に評価する出題に替えていくことが必要であるとしている。


そのため、現行のセンター試験を“廃止”し、大学入学希望者(答申では、入学志望者を入学希望者)が大学教育を受けるために必要な能力を把握することを主な目的として、「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」を総合的に評価する「学力評価テスト」を32年度から大学入学者選抜に導入するとしている。当テストは「教科型」に加え、センター試験で出題されていない「合教科・科目型」や「総合型」なども出題するという。
 それらの作問設計について、次のようなイメージを示している。(表1・図3・図4参照)
◆  「合教科・科目型」、「総合型」テストの作問イメージ
 ➀まず、どのような「思考力・判断力・表現力」を評価するのかを明確化し/➁明確化された“力”が、高校でどの教科・科目等においてどのような“力”として主に育成されているのかを特定し/➂特定された教科・科目等で育成される“力”を、他教科・科目等のどのような文脈に当てはめていくことが効果的かを検討しつつ、教科・科目等の組合せを決定・作問する、というプロセスが考えられるとしている。
◆ 教科・科目の枠を超えた「思考力・判断力・表現力」=「汎用的能力」の“評価”
 「学力の3要素」を構成する一部でもある「知識・技能を活用して、自ら課題を発見し、その解決に向けて探究し、成果等を表現するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力」は、例えば、➀概念・法則・意図などを解釈し、説明や活用する活動/➁情報を分析・評価し、論述する活動/➂課題について構想を立てて実践し、評価・改善する活動等を通じて育成されるものとされ、現行の学習指導要領でも小・中学校、高校等における言語活動等の学習活動において重視されている。
 当『答申』は、このような学習活動の現状を踏まえたうえで、教科・科目の枠を超えた「思考力・判断力・表現力」(基礎的な「汎用的能力」)を“評価”するためには、個々の教科・科目の範囲に留まらず、複数の教科・科目を“教科横断的・総合的”に組み合せて出題することが必要であるとしている。そして、教科・科目の枠を超える「思考力・判断力・表現力」として、次のような“力”を例示している。


◆「合教科・科目型」、「総合型」の“評価”と学習指導要領
 「合教科・科目型」や「総合型」の“新テスト”が評価する「思考力・判断力・表現力」の育成は、前述したように、現行の学習指導要領に基づく各教科等の指導内容としても謳われている。そのため、当『答申』は、「思考力・判断力・表現力」を育成する指導の充実と「合教科・科目型」や「総合型」の導入を、現行の学習指導要領の下で並行的に進めていくことは、まずは可能であるとしている。
 ただ、こうした新たな観点に基づいた指導を飛躍的に充実させ、定着させるためには、「学力の3要素」を踏まえた高校教育課程の抜本的な見直しが必要であり、次期学習指導要領に向けて、高度な「思考力・判断力・表現力」を育成・評価するための教科・科目構成の在り方や、それらの“力”を育成するための学習・指導方法の飛躍的充実についても検討する必要があるとしている。


個別選抜の“多元的評価”重視の確立 (図3・図4参照)

『高大接続・入試改革答申』は、各大学が個別に行う入学者選抜=個別選抜について、「学力の3要素」を踏まえた多面的・総合的な「多元的評価」重視の選抜方法(大学・学部の選抜性の高低に即した選抜方法等)を求めている。
 そして、特定分野に卓越した能力を持つ者の選抜や、年齢、性別、国籍、文化、障害の有無、地域の違い、家庭環境等にかかわらず多様な学生の受け入れが促進されるよう、具体的な選抜方法等をアドミッション・ポリシーで明確化することが必要であるとしている。
◆ アドミッション・ポリシーの明確化/多元的評価尺度の確立
 当『答申』は各大学に“求める学生像”のみならず、“入学者選抜の設計図”として必要な事項をアドミッション・ポリシーで明確化することを求めている。具体的には、高校と大学で育成すべき「生きる力」や「確かな学力」を踏まえつつ、「入学者に求める能力は何か」/「それをどのような基準・方法で評価するのか」を明確に示すことであるという。
 また、「確かな学力」を構成する「学力の3要素」について、どのような評価方法を活用するのか/「学力の3要素」すべてを評価対象としつつ、特にどのような要素に比重を置くのかなどを、入学希望者に対して明確に示していくことも求めている。
 具体的な評価方法としては、前述した「学力評価テスト」の成績に加え、小論文、面接、集団討論、プレゼンテーション、調査書、活動報告書、大学入学希望理由書や学修計画書、資格・検定試験などの成績、各種大会等での活動や顕彰の記録、受検者のこれまでの努力を証明する資料などの活用を挙げている。「確かな学力」として求められる“力”を的確に把握するためには、こうした「多元的な評価尺度」が必要であるとしている。
 なお、文科省は27年3月末、上記のような趣旨を踏まえた事例集『現行の大学のアドミッション・ポリシー(入学者受入方針)に関する資料』を作成、公表した。


“多面的・総合的”な評価と“公平性”の意識改革

『高大接続・入試改革答申』は、入学希望者の評価を“多面的・総合的”な評価に転換するためには、大学入学者選抜を含むあらゆる評価についての意識改革が必要だという。
 一斉にかつ画一的に実施される知識の再生を問う試験結果だけを評価対象とすることが“公平”であるとする、既存の「公平性」の観念の“桎梏(しっこく)”を断ち切る意識変革を求めている。入学者選抜のみを取り上げて公平性を論ずるのではなく、生涯を通じてみたとき、多様な背景を持つ一人ひとりが積み上げてきた多様な力が、多様な方法で公正に評価される教育の機会が均等に与えられる公平性を確立すべきであるとしている。

「高大接続システム改革会議」の設置

文科省は当『答申』を踏まえて策定した「高大接続改革実行プラン」(文科省、27年1月)に基づき、高大接続改革を実施するために必要な事項について具体的な方策を検討、議論する「高大接続システム改革会議」(以下、改革会議)を27年2月省内に設置した。
 大学・高校教育関係者らによる改革会議の検討事項には、➀「基礎学力テスト」及び「学力評価テスト」の在り方/➁個別選抜の改革の推進方策/➂多様な学習活動・学習成果の評価の在り方/➃その他が挙げられている。
 また、改革会議の下に、➀新テストの制度設計や実施方法などに関する必要事項を検討する「新テストワーキンググループ」(「基礎学力テスト」に係る作業と「学力評価テスト」に係る作業)/➁多様な学習成果や活動を反映するための「調査書」や「指導要録」等の在り方を検討する「評価検討ワーキンググループ」が設置されている。 改革会議は、上記の検討事項について、今夏を目途に「中間まとめ」、年内に「最終報告」の取りまとめを目指す。

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< 「汎用的能力」 を評価する丁寧な選抜 >
「知識・技能追求」型から「創造性・独自性発掘」型の選抜へ

現行入試における評価の在り方をみると、「知識・技能追求」型と「創造性・独自性発掘」型に大別することができる。
 「知識・技能追求」型は志願者の主に“現在”に評価の視点をおき、主に教科・科目の学力の達成度をみる「一般入試」(ペーパーテスト、学力試験等)による選抜方法である。
 一方、「創造性・独自性発掘」型は志願者の主に“将来や過去”に評価の視点を置き、主に小論文や面接、プレゼンテーション、活動歴、調査書などで意欲、適性も含めて総合的に評価する「AO入試」や「推薦入試」による選抜方法である。
 『高大接続・入試改革答申』は、このような「一般入試」「推薦入試」「AO入試」といった入試区分を廃止し、それぞれの優れた評価の手法を取り入れ、適切なルールの下で大学入試全体を“多面的・総合的な評価”に転換することを求めている。
 この改革提言は、大学入試において、これからの厳しい時代の変化に対応できる人材育成の鍵となる「汎用的能力」の評価、つまり入学志望者のポテンシャルをも見出す「創造性・独自性発掘」型の選抜方法のさらなる拡大を求めているとみられる。(図4参照)

注目される有力大の「創造性・独自性発掘」型選抜

次のような大学では、今回の中教審『答申』にも通じるような新たな選抜方法を28年度入試以降に導入する。いずれも、「創造性・独自性発掘」型の丁寧な選抜方法である。
◆ 東京大「推薦入試」
 これまで「一般入試」のみであった東京大は、学部生の多様性促進と学部教育の更なる活性化を図ることに主眼を置いた「推薦入試」を28年度入試から導入する。「後期募集」を停止し、全学部で推薦入試を実施。募集人員は全体で約100人。
 実施に当たっては、中等教育における先進的取組を積極的に評価し、志願者の潜在的多様性を掘り起こす観点から、高校等との連携を重視するという。
 推薦入試は、東京大の総合的な教育課程に適応しうる学力/教育・研究されている特定の分野や活動に関する卓越した能力、極めて強い関心/学ぶ意欲を持つ志願者を求めるという。志願者の“過去・現在・将来”をエビデンスに基づいて総合評価することになる。
◆ 京都大「特色入試」
 京都大は28年度入試から、“高大接続型”の「特色入試」を全学部で導入する。募集人員は、全体で約100人。
 特色入試は、➀高校での学修における“行動と成果”の判定/➁志望学部におけるカリキュラムや教育コースへの“適合力”の判定を行い、高校段階までに育成されている学力及び学部教育を受けるにふさわしい能力と志を総合的に評価するとしている。
◆ お茶の水女子大「新フンボルト入試」
 お茶の水女子大は、現行のAO入試を抜本的に改革した「新フンボルト入試」を29年度入試から導入する。当入試では、多面的・総合的に志願者の意欲、適性、能力、基礎学力などを見極める。募集人員は全学で20人とされ、次のような方法で実施される。
 ●“高大接続の要素”をもつ「プレゼミナール」の実施(高3生の夏季休業中に文理複数科目の講義・演習<実験>受講、レポート作成・提出) ⇒ ●英語模擬授業(文理共通)受講、レポート作成。 ⇒ ●図書館入試(文系):出題された大テーマ(課題)について、本学図書館を使ってレポート作成。審査委員の講評により再調査。グループ討論。個別面接。/●実験室入試(理系):実験室を舞台に講義・グループ実験・レポート作成・討論。個別面接。
 「新フンボルト入試」の名称は、ドイツのヴィルヘルム・フォン・フンボルトがベルリン大学創設(19世紀初頭)の基本構想として図書館(文系)と実験室(理系)のゼミナールを重視したことに因むという。
◆ 大阪大「世界適塾入試」
 大阪大は、29年度入試から「一般入試」の「後期試験」を中止し、「世界適塾AO入試」/「世界適塾推薦入試」/「国際科学オリンピックAO入試」の3つの入試方法からなる「世界適塾入試」を導入する。募集人員は31年度で入学定員の約10%を設定している。
 「世界適塾入試」は、グローバル社会で活躍する優れた人材を多様に集積することを目的に、高校で身に付けた確かな基礎学力と主体的な学習意欲、課題発見・探求・解決力及び主体性・協働性など幅広い能力を評価するとしている。
 なお、大阪大の原点は緒方洪庵が1838年(天保9年)に設立した「適塾」にあるという。

新たな“エリ-ト選抜”

上述のような入学者選抜は、成熟した知識基盤社会において、既成概念にとらわれずに「正解の見えない課題に対して最善解を見出す」といった人材発掘のための新たな“エリ-ト選抜”ともいえるもので、今後の動向が注目される。
 ただ、このような丁寧な選抜には相当な時間と手間、費用等を要し、多くの志願者を短期間で選抜することは難しい。とはいえ、志願者がもつ「汎用的能力」や“将来の可能性”(ポテンシャル)を発掘することは大学にとっても、社会にとっても大事なことである。

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< 大学入試の変遷 > (図5参照)

大学入試(改革)はこれまで、大学側主導の下で行われてきたことは否めないが、高校教育と大学教育の接続の観点から、それぞれの時代における文教政策、社会的要請や批判等を背景に、螺旋階段を上るように試行錯誤を繰り返しながらスパイラルに進化してきた。
 戦後の入試システムの変遷を概観する中で、今回の中教審『高大接続・入試改革答申』を改めて捉えてみる必要があろう。

国が示してきた「大学入学者選抜方法」の“ガイドライン”

戦後の大学入試は、新制大学が発足した昭和24(1949)年度から本格的に実施されることになった。当時の文部省は『昭和24年度新制大学入学者選抜方法の解説』を策定し、入試に関する次のような基本方針を大学側に求めた。


ところで、大学入学者の資格や入学の認否については、学校教育法などで規定されているが、入学者選抜(入試)についての同法での規定は設けられていない。
 したがって、入学者選抜は、基本的には各大学がアドミッション・ポリシーに基づき、独自に実施するものであるが、大学教育の適正化、選抜の公平・公正化(中立性)、高校教育との接続性、私立大も含めた公教育としての公共性などに十分配慮する必要がある。
 上記の「選抜方法の解説」はこうした観点から、国(当時の文部省)が各大学に入試実施の“ガイドライン”として提示した。
 現在、文科省は入学者選抜に関する指導助言の一環として、毎年5月頃、次年度の入学者選抜の実施に向けた『大学入学者選抜実施要項』を策定し、各大学等へ通知している。
 今回の中教審『提言』についても順次、実施可能なものから『大学入学者選抜実施要項』に盛り込まれていくことになる。

国立大「1期・2期校制」時代

国立大は、新制大学発足時の昭和24年~昭和53(1978)年までの間、試験期日を2グループに分けた「1期・2期校制」がしかれ、受験機会は2回であった。まず1期校の試験日が3月初旬、2期校の試験日は1期校の合格発表後の3月下旬に設定(公立大は3月初旬から各大学で定める)されていたことなどから、国立大の間で“差別観”を招いた。
 また、昭和40(1965)年代、団塊世代による18歳人口の激増、大学入学志望者の増加(大学志願率の上昇)などに対し、難問・奇問の入試問題、合格率の低下、大学「収容力」の低下など、“受験戦争”とまでいわれるほど、大学入試の過酷さが社会問題化していた。

「共通1次試験」時代

中教審は昭和46(1971)年6月、加熱した大学入試状況の中、『今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について』(『四六答申』)を答申し、大学入試制度の改善方策として「調査書」の活用とともに、“広域的な共通テスト”を開発し、高校間の学力評価水準の格差を補正することなどを提言した。
 当時、国立大の間で、学力試験を“第1次試験”(客観式)と“第2次試験”(論述式)とに分け、両者を組み合せた「評価」(合否判定)が構想されていた。『四六答申』の“広域的な共通テスト”構想は、国立大において、「志願者の高校における一般的・基礎的な学習の達成度を共通尺度で測る」ことを目的とする“第1次試験”として位置付けられ、「共通第1次学力試験」(共通1次試験)創設へとつながった。
 共通1次試験は昭和54(1979)年1月、公立大も参加して第1回が実施され、平成元(1989)年までの10年間、合計11回、国公立大の間で利用された。
 共通1次試験の導入に伴い、国立大の「1期・2期校制」は廃止され、試験期日は一本化された。この試験期日“一本化”は大学の“序列化”や進路指導の“輪切り”現象に拍車をかけたとされ、昭和62(1987)年からは受験機会の“複数化” (連続方式:国立大は昭和62年~平成8<1996>年まで、公立大は10年までそれぞれ実施/分離分割方式:平成元<1989>年~)が図られた。

「センター試験」時代

共通1次試験は難問・奇問を排し、良質な出題の確保などの点で評価を得た。
 しかし、国立大試験期日の一本化時代、単一の受験機会と、国立大の共通1次試験の受験が一律に「5教科7科目」(昭和62年~平成元年は5教科5科目が主流)課せられたこととが相俟って、大学(学部)の序列化が顕在化し、これによる輪切りの進路指導が行われていた。加えて、共通1次試験の利活用が、私立大を除外した国公立大に限られていたことも問題視された。
 こうした状況の中、共通1次試験の問題点を改善すべく、当時の臨時教育審議会(臨教審:総理大臣の私的諮問機関)は『第1次答申』(昭和60<1985>年6月)の『大学入学者選抜制度の改革』において、偏差値偏重の受験競争の弊害を是正し、受験生の個性・能力・適性等の多面的な判定や、“国公私立大”を通じて各大学が自由に利用できる「共通テスト」の創設を提言した。
 臨教審の「共通テスト」提言は、共通1次試験の延長線上で私立大の参加促進、及び偏差値による輪切りの進路指導と大学の序列化の解消等から教科・科目等の利活用を各大学(学部)の特色等に応じて自由に任せる所謂「アラカルト方式」の採用などの改善へとつながり、共通1次試験は「大学入試センター試験」(センター試験)に衣替えされた。
 センター試験は平成2(1990)年1月、私立大も参加して第1回が実施された。以来、27年まで26回実施。特に国立大入試においては、共通1次試験の11回と合わせて計37回、36年間にわたり各大学の「個別試験」とともに、いわば“車の両輪”として志願者の「評価と選抜」の機能を果たしてきた。共通1次試験、センター試験とも、大学進学者の学力水準を一定程度維持、担保してきた役割は大きい。
 ただ、少子化による受験生数の減少、大学(学部)の増大などから、大学の「収容力」(全入学者数 ÷ 志願者数)は9割を超え、所謂「全入時代」の中で一部の大学(学部)を除き、“選抜”機能は低下している。大学の“入易出易”(入学、卒業とも易化)の状況もみられる。
 こうした受験環境や大学教育状況の中、今回の「学力評価テスト」をはじめとする入試改革では、各大学において、個別試験も含めたこれまでの入学者選抜を詳細に検証し、今後の改善方策を具体的に検討、実現していくことが大事だ。


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< 大学教育の原点 >
大学教育とディシプリン

「ディシプリン」(discipline)という言葉は、「訓練、鍛錬、修養、規律、懲戒」などのほかに「学問(分野)、学科」などと訳され、学問固有の原理・原則を包含する意味を持ち、大学等での教育・研究関係の用語として目にすることがある。
 ところで、大学は「知の創造」と「知の継承」といった営みをディシプリン化した学術(学問)の形で推進していくところであるといえよう。
 他方、大学教育では往々にして、ディシプリンの対象を限定し、教育を原理・原則に沿った固有の方法論(定義、法則など)に限定することで、学問分野の認識を合理的に追求してきたきらいがあるといえよう。特に、戦後の荒廃期から高度経済成長期にかけて、所謂“キャッチアップ”教育が大学教育まで広く浸透していた時代では、そうした傾向が強かった。

“3・11ショック”と新たなディシプリンの組立て

23年3月11日の東日本大震災と福島第一原発事故は当時、想定外の未曾有の大災害といわれ、科学の限界、科学技術の未熟さが浮き彫りになった。
 予測を超えた巨大地震、壊滅的な被害をもたらした大津波、4年経った現在、収束の目処もはっきりしない原発事故。それらの被災者・避難者は、未だに極めて厳しい状況に置かれている。“3・11ショック”は、上述のような大学における従来型のディシプリン的な認識の脆さを図らずも露呈させてしまったともいえる。
 例えば、地震学では一部を物理学(ディシプリンとして捉える)の現象として、それを数式化したり、再帰性のある実験を行ったりして地震発生のメカニズムを解明しようとしてきた(「プレートテクトニクス」理論など)。しかし、東日本大震災は、従来型のディシプリンによる物理学や地震学の地球科学(地殻変動等)の解明では、十分な地震予知(予測)ができないことを示した。
 また、最近の急激なグローバル化の進展やイノベーションの創出・促進などによって、我々を取り巻く環境はあらゆる分野で劇的に変化している。
 このような状況の中、大学では従来型のディシプリンに加え、様々な「課題」に目を向けた新たなディシプリンによる方法や技術が必要となってくる。その際、従来型のディシプリンで培われてきた固有の方法論を踏まえつつ、それらを越境する新たなディシプリンの組立てが求められる。

< 大学教育に不可欠な21世紀型 「汎用的能力」  >
「課題」発見-仮説-検証-結論

大学では、ディシプリン化された学問の方法論や技術を修めることが大事である。
 つまり、大学で学問に勤しむことは、まず「課題」を見つけ、「仮説」を立ててそれを「証明、検証」し、「結論」を導き出すといった一連の行為であるといえる。そこでは、前述したような従来型のディシプリンで培われてきた固有の方法論や技術(先人達の知見)を踏まえたうえで、それらを越境する新たなディシプリンの組立てが重要となってくる。

大学入学志望者の「評価」の視点

これからの大学教育で上記のような新たなディシプリンの組立ても含めた学業を修めていくためには、高校までの基礎学力に裏打ちされた、21世紀型「汎用的能力」が欠かせない。
 そのため今後、大学入学志望者を選抜する際には、学力試験にしろ、小論文や面接にしろ、21世紀型「汎用的能力」の「評価」が重要な視点となってこよう。
 中教審提言にある“新テスト”や入試改革が、大学入学志望者に求められる「資質・能力」、とりわけ21世紀型「汎用的能力」の適正な「評価」につながることを期待したい。