今月の視点

3月

センター試験の「得点調整」!

27年「理科」新・旧課程科目間の平均点差が20点以上で、17年ぶりに「得点調整」実施!

旺文社 教育情報センター長 大塚/2015年3月2日掲載

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27年センター試験は新課程「数学・理科」による最初の実施で、数学・理科については「経過措置」として旧課程科目も出題された。
 主に理系志望者が受験する理科②で、高得点の旧・物理Ⅰと新課程の生物との平均点差が20点以上になり、17年ぶりに「得点調整」が実施された。
 ここでは、センター試験における得点調整の基本的な考え方や調整方法、27年の具体的な調整方法とその結果、得点調整の要因、及びこれまでの得点調整の実施の経緯や背景等をまとめた。また、共通試験の成績表示の在り方などについても探ってみた。


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< センター試験 「得点調整」 の基本的な考え方 >
センター試験の“選抜機能”と受験者の“不公平感”

センター試験の“選抜機能”としての役割に着目するならば、センター試験受験科目の任意選択による入学者選抜の場合、選択科目間の出題の難易度をできるだけ均一にすることが望ましい。
 センター試験の選択受験科目(少なくても同一教科内)の難易差が合否に大きく影響するような場合、受験者は共通試験であるセンター試験に“不公平感”を抱くことになる。
 現行のセンター試験では、事前にプレテストを行って出題の難易度をみることができない。また、一定の共通性はあるものの、多様化の進んだ高校教育に加え、センター試験出題科目の多種・多様化によって、同一教科内であっても受験生の選択受験科目に対する学力水準の把握は非常に難しく、選択科目間に大きな平均点差が生じてしまう場合がある。

「得点調整」 の在り方の提言

前々回の新課程入試初年度に当たる平成9(1997)年1月のセンター試験で、数学の新・旧課程科目間で大幅な平均点差が生じた。当時、得点調整は行わないことになっていたため、社会的な批判を受けた(後述)。
 大学入試センターはこれを踏まえ、9年5月に得点調整検討委員会(以下、「検討委員会」)を設け、得点調整の在り方についての審議を要請。「検討委員会」は同年11月、『大学入試センター試験における得点調整について』(以下、『得点調整の在り方』)をまとめ、センター試験の選択科目間における平均点差等の基本的な考え方などを提言した。当提言がセンター試験の得点調整の基本的な考え方、実施方法として現在まで引き継がれている。
 『得点調整の在り方』の要旨は、次のとおりである。
◆ 基本的な考え方
 ● センター試験は、その利用大学に対し、受験者の得点を“素点”で提供することを前提にして問題作成と採点が行われており、試験の実施結果により各受験者の“素点を調整する”得点調整は、できるだけ行わないようにすべきである。
 ● したがって、大学入試センターは、各教科・科目間に著しい平均点差が生じないよう試験問題の作成段階でできる限りの努力を払うことが基本である。
 ● しかし、センター試験には多くの科目が出題され、多様な多くの受験者が受験するため、平均点を一定に保つことは極めて困難である。
 センター試験の成績は、その利用大学の選抜資料の一部であり、できるだけの公平性が求められる。そのため、万一、科目間に著しい平均点差が生じ、これが試験問題の難易差に基づくものと認められる場合には、得点調整を行うことによって、できる限り不公平感を少なくすることが適当である。
 ● 「検討委員会」では、得点調整において“万人が納得する方法”を見出すことは困難であるとしたうえで、得点調整の検討に当たっては、〇できる限り多くの受験者の公平感が保たれるものであること/〇受験者にとって分かりやすいものであること/〇調整作業が短期間に処理可能なものであることについて、特に考慮したとしている。
◆ 「得点調整」実施の考え方
 ● 得点調整の実施は、高得点の受験者群などに新たな不公平感が生じる措置でもある。
 そのため、調整後の受験者全体の不公平感ができるだけ少なくなるよう、適正な調整方法をとるべきである。
 ● センター試験における科目間の平均点差は年によってさまざまであるが、平成2(1990)年のセンター試験開始から8年(当「提言」の前年)までは大きな問題は起きなかった。
 しかし、9年の数学で約22点、理科で約19点の平均点差が生じ、社会的な批判を浴びた。したがって、科目間に“20点程度”の平均点差が生じた場合には、得点調整を行わないことが“社会的に許容され難い”と考えられる。
 ● 得点調整を実施する場合、平均点差の全てを調整することは不適当であり、調整の限度を設ける必要がある。
 その限度は、通常起こり得る平均点差の範囲と考えられる。科目間の平均点差は毎年、概ね15点に収まっているので、調整は“15点の平均点差”を維持することが適当である。
◆ 「得点調整」実施方法等
【実施の基本方針】

 ● 科目間に著しい平均点差が生じ、これが“試験問題の難易差”によるものと認められる場合に実施する。
 ● 得点調整の対象は、“同一教科内の科目間”に限る。
 ● 得点調整の実施は、受験者の心理に配慮し、“素点は下げない”ことを原則とする。
【得点調整の対象教科・科目】
 センター試験の出題科目の中には、受験者の少ない科目やもともと得点調整に馴染まない科目もあることから、それらの科目は対象から除外する。
 具体的な対象教科・科目は、基本的には例年同じであるが、学習指導要領の改訂に伴う出題教科・科目の変更や「経過措置」等により、実施年度で異なる場合がある。
 なお、詳細については本稿の「「得点調整」の経緯と扱い」(後述)を参照されたい。
【得点調整の方法】
 ➀ 得点調整は、各選択科目間で、原則として、「20点以上の平均点差が生じ、これが試験問題の難易差によるものと認められる場合」に行う。
 ➁ 得点調整に当たっては、公平性の観点から、調整後も「各科目の平均点の順序を変えないこと」とし、「20点以上の平均点差が生じた科目だけでなく、平均点がその間にある科目」についても調整を行う。
 ➂ 最高平均点科目と最低平均点科目との「平均点差が15点(通常起こり得る平均点差の範囲)」となるよう調整する。
 その際、「平均点がその間にある科目」についても、素点の「平均点差の比率」に応じて調整する。
 ➃ 得点調整に当たっては、「0 点は0 点、100点は100点」に固定する。
 ➄ 得点調整に当たっては、最高平均点科目の得点の累積分布を目標分布とし、調整すべき科目の得点の累積分布を目標分布の方向へ移動させる方法(「分位点差縮小法」)を用いて行う(具体的な調整の方法は別記参照)。
【得点調整の是非の判断/受験者への周知方法】
 ● 大学入試センターは、得点調整実施の有無の決定に当たり、その時々のセンター試験の状況や受験者の心理等を考慮するとともに、試験問題の難易差等をも分析して、総合的に判定することが必要である。
 そのため、大学入試センター内に、センター試験利用の大学関係者、学識経験者等の協力のもとに、得点調整実施の有無を判定する組織を設け、適時適正に対処することが適当である。
 ● 得点調整を行う場合は、受験者の大学選択に影響することを考慮し、「国公立大学の個別学力検査の出願前」にできるだけ早く具体的な方法を周知する必要がある。

< 得点調整の方法 >
「分位点差縮小法」による調整(図1-①参照)

センター試験の得点調整は、前述のように「分位点差縮小法」によって行われる。
 この方法は、得点調整の対象科目のうち、最高平均点科目と最低平均点科目の得点の累積分布を比較し、「受験者数の累積割合」(図1-①の縦軸)が等しい点(等分位点)の差(分位点差)を、一定の比率で縮小する調整方法である。
 縮小の比率は、通常起こり得る平均点差の変動範囲を15点として、
 15点 ÷(最高平均点科目の平均点 - 最低平均点科目の平均点)  となる。
 この方法により、最低平均点科目の得点の累積分布は、最高平均点科目の得点の累積分布(目標分布)に向かって移動する(図1-①の「調整後の得点の累積分布」)。この分布曲線が調整後の得点の累積分布となる。図1-①で、横軸上の調整前の得点(素点)から矢印の方向に進み、調整後の得点の累積分布から横軸に垂直に下ろした点が調整後の得点になる。
◆ 科目平均点が最高・最低以外の対象科目の調整(図1-②参照)
 得点調整の対象科目のうち、平均点が最高及び最低以外の科目についても、「素点の平均点差が同一の比率」で縮小されるよう調整する。
 例えば、対象科目がA~Dの4科目で、A科目の素点の平均点が70点、B科目が65点、C科目が49点、D科目が45点として、得点調整を試算してみる。
 A科目の平均点が最高であるから、それを目標分布とする。D科目の平均点が最低であるので(最高・最低の平均点差:25点)、調整すべき科目と最高平均点科目との平均点差にかける縮小比率は、1 - (15点 ÷ 25点) = 0.4 となる。
 この縮小比率(0.4)を用いると、4科目の調整後の平均点(a~d)は次のようになる。
  〇 A科目(70点):対象科目中、最高平均点であるため、調整しない。⇒ a:70点
  〇 B科目(65点):65点+ (70点-65点) × 0.4 = 67点 ⇒ b:67点(平均点+2点)
  〇 C科目(49点):49点+ (70点-49点) × 0.4 = 57.4点 ⇒ c:57.4点(平均点+8.4点)
  〇 D科目(45点):45点+ (70点-45点) × 0.4 = 55点 ⇒ d:55点(平均点+10点)
 ● 調整前の最高平均点科目A(平均点70点)と最低平均点科目D(同45点)との平均点差は25点であるが、調整後のD科目は55点となり、A科目との平均点差は“15点以内(通常起こり得る範囲)”に縮小される。
 ● 調整すべき科目の平均点と最高平均点科目の平均点との差が大きいほど、調整(加点)は大きい。


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< 27年センター試験、17年ぶりの 「得点調整」 >
得点調整の対象科目、旧課程科目含め4教科・18科目

27年センター試験は、新課程「数学・理科」の初年度実施に当たり、旧課程履修者には旧課程科目も用意された。
 そのため、27年の得点調整は、旧課程科目も含めて次の各科目間で原則として“20点以上”の平均点差が生じ、これが“試験問題の難易差”に基づくものと認められる場合に行われるとされた。ただし、受験者数が“1 万人未満の科目”は得点調整の対象外とされた。
◆ 27年センター試験の得点調整の対象教科・科目
 ● 地歴の世界史B、日本史B、地理Bの間
 ● 公民の現代社会、倫理、政治・経済の間
 ● 数学①の数学Ⅰ・Aと旧数学Ⅰ・Aの間
 ● 数学②の数学Ⅱ・Bと旧数学Ⅱ・Bの間
 ● 理科②の物理、化学、生物、地学、旧・物理Ⅰ、旧・化学Ⅰ、旧・生物Ⅰ、旧・地学Ⅰの間
 なお、ここでは、理科②の新課程科目と旧課程科目を明確にするため、旧課程科目の各「Ⅰ科目」に「旧」を付記した(以下、同様)。

理科②で得点調整を実施!

大学入試センターは27年1月23日のセンター試験受験者集計53万126人の時点で、1月18日に実施した本試験「理科②」の旧・物理Ⅰと生物の間で「20点以上の平均点差」が生じ、その要因は「試験問題の難易差」によると判定し、17年ぶりに得点調整を実施した。
 ただし、地学と旧・地学Ⅰは受験者数が1万人未満であったため、得点調整の対象外とされた。
◆ 「得点換算表」の公表
 大学入試センターは1月23日夕刻、「分位点差縮小法」に基づく理科②の「得点換算表」をホームページに掲載し、国公立大への2次出願(1月26日~2月4日)開始前に受験者への周知を図った。
 「得点換算表」は、理科②の物理/化学/生物/旧・物理Ⅰ/旧・化学Ⅰ/旧・生物Ⅰの6科目について、それぞれ「素点」(0~100点:1点刻み)と「調整後の得点」が対応する形で一覧表として表示された。
 例えば、生物の「素点」(自己採点結果の個人得点)が50点であれば、「素点」50の行(一覧表)の生物の列(一覧表)のマスに記された58が「調整後の得点」となる。同様に、化学の「素点」が50点であれば、「素点」50の行の化学の列のマスに記された55が「調整後の得点」となる。
 なお、最高平均点科目の旧・物理Ⅰは、「素点」と「調整後の得点」が同じ値で、調整は行われていない。(表1参照)

27年「理科②」の得点調整

◆ 生物の平均点を6.59点かさ上げ
 27年センター試験「理科②」の試験終了後5日目(1月23日)における得点調整対象科目の平均点は、最大値が旧・物理Ⅰの69.93点、最小値が生物の48.39点であった。
 したがって、最大平均点差は、
         旧・物理Ⅰ(69.93点) - 生物(48.39点) = 21.54点
となり、“20点差”を超えた。
 このため、生物の平均点は6.59点かさ上げされ54.98点となり、最高平均点科目の旧・物理Ⅰとの平均点差は14.95点に縮小され、通常起こり得る範囲の“15点以内”に収まった。
 また、「生物」以外の得点調整対象科目についても、最高平均点科目の旧・物理Ⅰを除き、得点調整が行われた。今回の得点調整による各科目の調整は、次のとおりである。(図2参照)
 ● 物理:調整前 = 61.64点 ⇒ 調整後 = 64.29点(平均点+2.65点)
 ● 化学:調整前 = 59.20点 ⇒ 調整後 = 62.49点(平均点+3.29点)
 ● 生物:調整前 = 48.39点 ⇒ 調整後 = 54.98点(平均点+6.59点)
 ● 旧・化学Ⅰ:調整前 = 65.13点 ⇒ 調整後 = 66.67点(平均点+1.54点)
 ● 旧・生物Ⅰ:調整前 = 56.96点 ⇒ 調整後 = 60.88点(平均点+3.92点)
 (.大学入試センター発表資料:27年1月23日<中間集計その2>時点による)


◆ 27年「得点調整」:「分位点差縮小法」の縮小比率0.3で概算
 今回の理科②の得点調整を前述した「分位点差縮小法」によって概算してみる。
 まず、得点調整6科目の「調整前」の平均点を次のように整数で表す。
 物理:62点/化学:59点/生物:48点/旧・物理Ⅰ:70点/旧・化学Ⅰ:65点/旧・生物Ⅰ:57点
 最高平均点科目の旧・物理Ⅰ(平均点70点)と最低平均点科目の生物(同48点)との差は、22点になる。
 したがって、調整すべき科目と最高平均点科目との平均点差にかける縮小比率は、約0.3(「1- (15点÷22点)」)となる。
 これにより、各科目の調整後の得点は、次のようになる(整数で表示)。
  〇 物理(62点):62点+ (70点-62点) × 0.3 = 64.4点 ⇒ 64点(平均点+2点)
  〇 化学(59点):59点+ (70点-59点) × 0.3 = 62.3点 ⇒ 62点(平均点+3点)
  〇 生物(48点):48点+ (70点-48点) × 0.3 = 54.6点 ⇒ 55点(平均点+7点)
  〇 旧・化学Ⅰ(65点):65点+ (70点-65点) × 0.3 = 66.5点 ⇒ 67点(平均点+2点)
  〇 旧・生物Ⅰ(57点):57点+ (70点-57点) × 0.3 = 60.9点 ⇒ 61点(平均点+4点)
 この結果、生物の平均点は7点かさ上げされて55点となり、旧・物理Ⅰの平均点との差は“15点以内”に収まっている。(図3参照)


◆ 得点調整科目の各「素点」に応じ、最大8点を加点
 今回の理科②の得点調整では、最高平均点科目の旧・物理Ⅰを除き、各科目の平均点が前述のようにかさ上げされた。
 そして、調整された各科目の受験者は、それぞれの「素点」(自己採点結果)に応じ、最大8点が加点された。
 大学入試センターが公表した前述の「得点換算表」をみると、対象科目の受験者全員に対して一律に同一の得点を加算しているわけではない。
 例えば、最低平均点科目の生物の受験者には、素点が6点、9~12点、95~98点だと“1点加点”/41~61点だと“8点加点”/0~5点及び7・8点と99点以上は“加点なし”といったように、素点に応じて最大8点が加点された。
 同様に、化学には1~5点/物理には1~4点/旧・生物Ⅰには1~5点/旧・化学Ⅰには1~3点がそれぞれ素点に応じて加点された。
 得点調整では、素点が0点と100点は加点されない/素点が低い(0点に近い)あるいは素点が高い(100点に近い)ほど、加点は小さくなる/中間あたりの素点のかさ上げが最大になるといった特徴がみられる。(図4参照)


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< 「得点調整」 の経緯と扱い >

これまで得点調整が行われたのは、センター試験の前身である共通1次試験(昭和54<1979>年~平成元<1989>年)とセンター試験(2年~ )を通じ、27年までで計3回である。
 得点調整は、その時々でどのように扱われてきたのか。実施されたときの背景や当該科目の得点状況、対象科目の変化などをたどってみる。

1.「共通1次試験」時代

共通1次試験“最終年”の「得点“修正”」

共通1次試験の最終年(平成元年)において、理科の各科目の平均点が化学と地学(いずれも70点台)に比べ、物理(50点台)と生物(40点台)が大幅に低かった。
 そのため、物理と生物の選択者は極めて不利になるとして、〇理科のどの科目も得点を下げないこと/〇受験生が確実・容易に修正得点を計算できること/〇修正得点が100点を超えないこと/〇どの科目も平均点が受験者の学力平均を反映するようにすることなどを前提に「得点“修正”」(当時の呼称)の措置が講じられた。
 その結果、試験問題が易しかったと判定された化学(平均点73.75点)と地学(同71.31点)の得点は変えず、物理(平均点53.47点 ⇒ 76.17点:修正差+22.70点)と生物(平均点44.31点 ⇒ 70.59点:修正差+26.28点)の得点が修正された。
 なお、受験者の少ない理科Ⅰ<約600人:平均点38.99点)>は除外された。
 また、物理や生物の受験者で、素点(修正前)が0点であったごく少数の者にも加算された。ただ、これらの受験者の中には「理科」以外の教科合計得点が好成績の者が少なくなく、「本来なら0点でなかった」と推定されるとされた。
 なお、こうした得点修正の方法は、センター試験を含め平成8 (1996)年まで引き継がれた。

2.「センター試験」時代

平成2年~8年:“極端な素点の差”(平均点差30点程度)に限定

◆ センター試験の「成績の取扱い」
 大学入試センターでは、前述のような共通1次試験の得点修正の措置を踏まえ、平成2(1990)年に開始されたセンター試験では、次のような「成績の取扱い」を明示した。


上記のような措置は、平成8(1996)年まで続いた。

“前々回新課程”初年度の9年:得点調整“廃止”!

◆ 高校教育の多様化で出題科目、34科目に激増
 9年から実施された“前々回の新課程”対応のセンター試験は、高校教育の多様化を受けて出題教科・科目は6教科・31科目となり、さらに9年・10年は「経過措置」による旧課程科目(旧数学Ⅰ、旧数学Ⅱ、理科Ⅰ)が加わり、“34科目”に激増した。
 このような多様化した科目間では従来の得点の調整法がそのまま適用できないことや、2年のセンター試験開始以来、8年まで得点調整を行うような状況がなかったことなどから、9年の「成績の取扱い」は次のようになり、得点調整は“廃止”された。


◆ 9年センター試験:新・旧課程「数学」で“約22点”の平均点差
 9年のセンター試験は上記のように、得点調整は廃止されたが、旧課程履修者への「経過措置」は講じられた。
 約9万8,000人の既卒者が受験した旧数学Ⅱ(平均点42.21点)と、約24万7,000人の現役生等(既卒者も受験可)が受験した新課程の数学Ⅱ・B(同63.90点)との平均点差は21.69点と、大幅に開いた。
 旧数学Ⅱについては問題の難しさなどが指摘されたが、大学入試センターは前述のような既定方針に従い、得点調整は行わなかった。
 こうした措置に対しては社会的な波紋を呼び、当時の文部省は各大学に2段階選抜の原則中止を要請した。

10年センター試験:「得点調整」“復活”。地歴で“初実施”!

◆ 数学の「経過措置」を含めた得点調整の設定。27年の得点調整の原典に
 大学入試センターは、9年の「経過措置」で生じた新・旧課程「数学」の大幅な平均点差や社会的な影響等も踏まえ、前述したような得点調整の「検討委員会」を設置。同委員会の『得点調整の在り方』提言を受け、10年センター試験では次のような教科・科目を対象とする得点調整の復活を決めた。


上記の各科目間で、原則として“20点以上の平均点差”が生じ、これが“試験問題の難易差”によると認められた場合に得点調整を行うとされた。
 当時の「経過措置」は9年・10年にわたって講じられたため、数学の新・旧課程科目も対象となっている。ただ、理科の「経過措置」科目である「理科Ⅰ」は受験者が少なく、また、当時の新課程科目である理科の各「ⅠA科目」(標準2単位)は“得点調整に馴染まない”として対象から除外されたとみられる。
 上記の対象教科・科目をみると、「経過措置」科目を含めた27年の得点調整の対象教科・科目と同様の内容であり、10年の得点調整が27年の“原典”になっているといえる。
◆ 10年センター試験、地理Bと日本史Bの平均点差“20点超”で、初実施 !
 10年センター試験では、各科目の平均点の中間集計時点で、地歴の世界史Bが61.12点、日本史Bが56.32点、地理Bが77.13点となり、最高点の地理Bと最低点の日本史Bとの差は20.81点で、調整の目安である20点差を超えた。さらに、この平均点差は“問題の難易差による”と判断され、得点調整がセンター試験として初めて実施された。
 調整方法は今回と同様、「分位点差縮小法」によって行われた。
 具体的には、世界史Bと日本史Bの素点に応じ(0点と100点は除外)、1~7点の範囲で加点。世界史Bでは31~46点、日本史Bでは43~57点に対してそれぞれ最高の7点が加点された。そして、それらの素点より上または下へいくほど加点は小さくなり、世界史Bでは7点以下・97点以上、日本史Bでは5点以下・99点以上では加点されなかった。

“前回新課程”初年度の18年センター試験:旧課程科目は得点調整の“対象外”

“前回新課程”初年度に当たる18(2006)年のセンター試験では、旧課程「理科」の総合理科、物理ⅠA、化学ⅠA、生物ⅠA、地学ⅠAが“科目単位”での経過措置/新課程の数学Ⅰ、数学Ⅱ、数学Ⅱ・B、地学Ⅰにおける新課程固有の範囲からの出題に対しては“対応問題”での「経過措置」がそれぞれ講じられた。
 しかし、旧課程の総合理科と理科4領域の「ⅠA科目」については、いずれも多くの受験者数が見込めず、また「ⅠA科目」(標準2単位)は得点調整に馴染まないとされ、旧課程科目の数学・理科は18年センター試験の得点調整の対象から除外された。
 結局、18年の得点調整の対象教科・科目は次のとおりとなり、以後、26年センター試験まで引き継がれた。


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< 27年「得点調整」の要因 >

なぜ、今回、理科②で得点調整が行われるほどの平均点差が生じたのか。その要因は、今後の分析に委ねられるが、ここでは新・旧教育課程や現役・既卒受験者に着目してみた。

新・旧課程科目と教育課程の相違

センター試験の出題教科・科目は、高校教育の多様化、個性化、弾力化等の方向をゆがめないよう、高等学校学習指導要領に沿って出題されている。
 そのため、出題科目は多岐にわたって多様化が進み、27年センター試験は、新課程「数学・理科」を含めた6教科・31科目が基本となり、さらに「経過措置」の旧課程「数学・理科」の9科目が加わり、合計“6教科・40科目”の過去最多となった。
 このような多様化した出題科目において、選択科目間の平均点差を一定程度保つことは受験者の多様化と相俟って難しいといえる。
 27年は「経過措置」によって出題された旧課程科目と新課程科目との教育課程上の相違、つまり履修内容や範囲、発展学習などの違い(履修単位数)が出題科目の難易度として表れ、それが平均点等に影響したことも想定される。
 特に新課程「理科」については、「基礎を付していない科目」(以下、「発展科目」)は全項目必修の“4単位科目”であり、旧課程「理科」の「Ⅱを付した科目」(項目選択履修の3単位。センター試験では出題科目に入らず、個別試験で出題)より履修単位数が多い。
 一方、今回「経過措置」として出題された旧課程の「Ⅰを付した科目」(以下、「Ⅰ科目」)は“3単位科目”である。つまり、新課程「理科」の各「発展科目」は4単位、旧課程の各「Ⅰ科目」は3単位で、両者の単位数だけを比べてもその難易度の違いが、ある程度想定されるのではないか。ただし、センター試験では、新課程「発展科目」の物理、化学、生物、地学において、一部に“選択問題”(項目選択)を配置するなどして、受験者の負担増(「Ⅰ科目」との差)の軽減を図っている。

新・旧課程科目の受験者群

27年センター試験に限り、数学・理科で「経過措置」が講じられ、理科では旧課程の理科総合A、理科総合B、物理Ⅰ、化学Ⅰ、生物Ⅰ、地学Ⅰの6科目が、主に理系志望者が受験する理科②の試験枠に配置された。
 旧課程履修者は、理科4領域における「基礎を付した科目」(「基礎科目」:2単位)と「発展科目」の計8科目の新課程科目(選択解答方法はA~Dの4パターンによる)または旧課程科目(1科目または2科目)から選択解答した。ただし、新課程履修者は旧課程科目を選択できず、旧課程履修者は新・旧課程科目の組合せ選択はできない。
 こうしたことから、理科②における新課程科目の受験者群(約21万2,000人)はほとんどが新課程履修者とみられる一方、旧課程科目の受験者群(約5万8,000人)は全て旧課程履修者である。
 このような受験者群の教育課程上の属性ともいえる違いが、選択科目間の平均点差にも影響したのではないか。
 さらに、27年センター試験「理科」の新・旧課程科目受験者群の特性をみると、履修した教育課程の相違だけでなく、新課程履修者(現役生)と旧課程履修者(既卒者)との“受験意識”の差も透けてみえる。
 27年の既卒受験者は、前年入試において、27年からの新課程「数学・理科」入試を控えた所謂“後がない意識”による“安全志向”を敢えて敬遠し、特に医学系や理・工学系を目指す「初志貫徹」組を主体とする理系学力に長けた受験者群であったことがうかがえる。

< 共通試験の成績表示 >
偏差値化

共通試験における成績表示は、センター試験のような「素点」だけでなく、「偏差値」化した表示方法もある。ただ、素点を偏差値化した場合、選択科目の得点分布が正規分布と大きく異なる場合、新たな問題を生じる可能性がある。
 例えば、満点近くの高得点者が非常に多く、標準偏差の値が小さくて高得点の方向に偏った得点分布の科目では、たとえケアレスミスによるほんの僅かな誤答 (素点でみれば高得点)でも偏差値に大きく影響し、満点の受験者との間に大きな差が生じてしまう。
 こうした、実質的な学力差とはいえないような点差が偏差値化によって拡大され、それが選抜に利用されるとなれば、その妥当性や信頼性が損なわれることにもなりかねない。

“新テスト”構想と公平性の観念

センター試験はじめ、ほとんどの大学入学者選抜の成績表示は「素点」である。これは、小学校から高校までの学校教育の中で「テストはペーパーテストによる1点刻み」といった、いわば我が国の伝統的な“テスト文化”が受け継がれているためではないか。
 ところで、中教審は26年12月、『新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について』(『高大接続・入試改革答申』と略。本欄『今月の視点-97』<27年1月>参照)を答申した。当答申は、大学入学者選抜における「学力評価」のための“新テスト”として、センター試験に替わる「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」(「学力評価テスト」と略)を提起し、成績は“段階別表示”にするとしている。
 『高大接続・入試改革答申』では、大学入学希望者の「評価」について、一斉にかつ画一的に実施される知識の再生を問う試験結果だけを評価対象とすることが“公平”であるとする、既存の「公平性」の観念の“桎梏(しっこく)”を断ち切る意識変革が必要だとしている。
 そして、入学者選抜は「学力評価テスト」の活用を前提に、アドミッション・ポリシーに基づく多元的評価を重視すべきだとしている。
 “脱・1点刻み”の「学力評価テスト」がセンター試験に替わって入学者選抜に広く活用される場合、“段階別表示”の基になる「得点調整」の考え方はどうなるのか。
 ともあれ、新たな時代に期待される「学力観」をみる“新テスト”の活用には、成績表示も含め、その妥当性や客観性、“公正”性の確立が重要となってくる。