今月の視点 2014.4

教科書“採択”にみるセンター試験「理科」の動き !

理科“3領域”必修化と、センター試験“基礎2科目セット”で、「地学基礎」 受験“拡大”の方向 !

2014(平成26)年度

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 春爛漫の4月、学校では26年度の始まりである。24年度に入学して数学・理科の新しい教育課程を履修した新高3生は、27年にこれらの教科の「新課程入試」を受験する。
 他方、数学・理科の新課程用教科書は、24年度使用の低学年用から順次発行されており、26年度は前年度発行されなかった「地学」を含め、高学年用までの理科“4領域”が揃った。
 新課程の理科は、物理・化学・生物・地学の4領域のうち、従前の“2領域主体”から“3領域主体”の選択必履修になったことから、「地学基礎」の教科書採択が増加している。加えて、新課程センター試験の理科「基礎科目」は、“2科目セット”の選択解答となる。
 このため、新課程センター試験では、「地学基礎」の受験が旧課程「地学Ⅰ」より拡大するとみられる。

 

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< 新課程 「理科」 の科目編成と履修方法 >

 

「基礎科目」と「発展科目」

 

 21年3月文科省告示の高等学校学習指導要領(以下、新指導要領。学年進行の形で、24年度から数学・理科を先行実施、25年度から全面実施)の理科は、11年3月告示の学習指導要領(以下、旧指導要領。15年度から実施)に比べ、科目編成や単位数、履修方法等が大幅に改定されている。
 新指導要領「理科」の科目編成は、「科学と人間生活」(標準単位数2単位。以下、かっこ内の数値は単位数)、及び理科4領域においてそれぞれ「基礎を付した科目」(以下、基礎科目)である「物理基礎」(2)/「化学基礎」(2)/「生物基礎」(2)/「地学基礎」(2)と、より発展的な概念や探究方法を学習する「基礎を付していない科目」(以下、発展科目)である「物理」(4)/「化学」(4)/「生物」(4)/「地学」(4)、さらに「基礎科目」や「発展科目」の探究活動の成果を踏まえて課題を設定し学習する「理科課題研究」(1)の計10科目である。「理科課題研究」は、旧指導要領の理科“4領域”各「Ⅱ科目」内に配されていた「課題研究」(必修項目)を先端科学や学際的領域に関する研究なども扱えるよう、それぞれの「課題研究」を集約し、独立した“科目”として設置された。(図1参照)

 

“3領域主体”の選択必履修

 

 新指導要領「理科」の履修方法は、前記10科目のうち、「科学と人間生活」「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」から「科学と人間生活」を含む2科目、又は「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」から3科目を選択して必履修する。普通科では、“基礎3科目”の選択必履修が主体である。
 さらに、物理、化学、生物、地学の「基礎科目」を履修した後、各領域(物理、化学、生物、地学の4領域)に対応する「発展科目」(「物理」「化学」「生物」「地学」)を選択して履修する。また、「理科課題研究」は、「基礎科目」を1科目以上履修した後に履修する。(図1参照)

 

「履修方法」改定の背景

 

 新課程「理科」で履修方法が改定された背景には、学校現場での履修実態があるとみる。旧課程では、例えば、「理科総合A」(物理・化学分野)と「生物Ⅰ」の2科目を選択することが適当であるとされ、この2科目を履修することで理科の“3領域”が履修できると構想されていた。
 しかし、限られた授業時数における学習指導の効率化を図る観点などから、例えば、「理科総合A」(物理・化学分野)と「物理Ⅰ」又は「化学Ⅰ」の2科目を選択させ、実質的には“2領域”の履修に留まるケースが少なくなかった。
 新課程では、こうした実態を踏まえ、物理、化学、生物、地学の4領域から3領域以上を履修するという旧課程の“理念”を維持したうえで、学校の裁量を拡大し、生徒のニーズに応じた科目履修の柔軟性を高める観点から、3領域以上の科目を履修する場合には所謂“総合科目”である「科学と人間生活」の履修を不要としている。

 

学年をまたいで履修する“分割履修”

 

 全日制・普通科で大半の生徒が国公立大を含めた進学を目指す高校における新指導要領「理科」の履修形態としては、「基礎科目」は1年次2科目、2年次1科目を履修(“基礎3科目の選択必履修”をクリア)、「発展科目」は、文系の2年次と3年次で1科目を分割履修、理系の2年次と3年次で2科目を分割履修するようなカリキュラムが一般的のようだ。
 なお、理系では2年次又は3年次で「理科課題研究」の履修もあり得る。

 

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< 新・旧教育課程における 「理科」 教科書の採択状況 >

 

 新課程「理科」の各科目の開設状況を示す『公立高等学校における教育課程の編成・実施状況調査の結果』(文科省:2年に1回調査)が、本稿をまとめる段階で公表されていない。
 そのため、文科省がまとめた教科書の採択冊数(以下、同)を基に、新・旧教育課程における「理科」各科目の採択状況から各科目の開設(履修)傾向を探ってみる。

 

23年度の採択状況  ~ 各科目・各学年=「旧課程」教科書 ~
 23年度使用の教科書は、低学年用から高学年用まで全教科・科目とも旧課程用であった。
 23年度の理科11科目の採択冊数は、413万2,546冊。このうち“総合的な科目”として、必ず1科目は履修する「理科基礎」(9万1,186冊。「理科」教科書における採択比率2.2%)、「理科総合A」(97万4,593冊。同23.6%)、「理科総合B」(46万8,999冊。同11.3%)の合計採択数は153万4,778冊で、この3科目で全体の37.1%を占めた。(表1、図2・3参照)

 

「Ⅰ課目」の採択比率:生物Ⅰ=42.0%、化学Ⅰ=35.2%、物理Ⅰ=18.2%、地学Ⅰ=4.6%

 

 文系・理系が共通に履修する理科「Ⅰ課目」の教科書は、「物理Ⅰ」が35万6,345冊(「理科」教科書における採択比率8.6%)/「化学Ⅰ」が68万8,288冊(同16.7%)/「生物Ⅰ」が82万1,721冊(同19.9%)/「地学Ⅰ」が9万643冊(同2.2%)で、4領域の「Ⅰ科目」の教科書合計は195万6,997冊(同47.4%)である。
 「Ⅰ科目」全体における採択比率では、「生物Ⅰ」42.0%/「化学Ⅰ」35.2%/「物理Ⅰ」18.2%/「地学Ⅰ」4.6%となっている。(図7参照)
 理系が主に履修する4領域の理科「Ⅱ科目」の教科書合計は、64万771冊(同15.5%)である。

 

 つまり、23年度旧課程「理科」教科書の採択概要は、①「基礎、総合A、総合B」科目(3科目)=153万4,778冊(「理科」教科書における採択比率37.1%)/②「Ⅰ科目」(4科目)=195万6,997冊(同47.4%)/③「Ⅱ科目」(4科目)=64万771冊(同15.5%)である。

 

 

24年度の採択状況  ~ 低学年用「新課程」教科書“初登場”~
 24年度入学者は、数学・理科では新課程用の教科書を使用。2・3年次など中・高学年は、旧課程用の教科書を使用した。また、主として低学年用の教科書であっても、中・高学年での使用や年次をまたいで使用する(分割履修)場合もある。24年度の「理科」教科書は、新課程用と旧課程用の2系列が採択された。(表2、図2・4参照)

 

理科「基礎科目」教科書の登場

 

 24年度の新課程用「理科」教科書は、「科学と人間生活」「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」の5科目(種目)が発行され、合計202万9,931冊の採択があった。
一方、旧課程用「理科」も「理科基礎」など、全11科目(種目)が発行され、合計239万4,378冊が採択された。
 24年度の新・旧課程全体の「理科」教科書は、旧課程のみの23年度に比べ29万1,763冊(7.1%)多い442万4,309冊で、そのうち新課程用が45.9%だった。

 

新課程「生物基礎」=63.5万冊、採択比率37.1%/「地学基礎」=8.3万冊、4.9%

 

 新課程用「理科」5科目の教科書採択冊数は、「科学と人間生活」31万7,551冊/「物理基礎」39万3,752冊/「化学基礎」59万9,942冊/「生物基礎」63万5,222冊/「地学基礎」8万3,464冊である。最多の「生物基礎」は、最少の「地学基礎」の7.6倍に及ぶ。
 「基礎科目」全体(171万2,380冊)に占める各科目の採択比率は、「生物基礎」37.1%/「化学基礎」35.0%/「物理基礎」23.0%/「地学基礎」4.9%であった。(図7参照)

 

“物理・地学”領域の“基礎的な科目”(「旧・Ⅰ科目+新・基礎科目」)の採択比率アップ

 

 24年度からの「理科」の学習指導要領改訂に伴い、生徒の科目選択はどのように変わったのか。その動向を新・旧課程用「教科書」の採択状況から探ってみる。
 新・旧指導要領では、選択必履修科目の科目編成、履修方法、単位数などが異なるため、単純比較はできないが、新指導要領の「基礎科目」が旧指導要領の「Ⅰ科目」に相当するものとして、理科4領域の“基礎的な科目”の23年度(旧課程用)と24年度(新課程用)との採択状況(採択比率の変化)をみてみる。
 
① まず、前述した23年度「Ⅰ科目」(合計採択冊数195万6,997冊)と24年度「基礎科目」(合計採択冊数171万2,380冊)における各科目の採択比率(合計採択冊数に占める各科目の採択冊数の割合)を比べると、次のとおりである。(以下、23年度 → 24年度の順)

 

② 次に、23年度「Ⅰ科目」(合計採択冊数195万6,997冊)と24年度の“主に低・中学年用の基礎科目”(「旧・Ⅰ科目+新・基礎科目」:合計採択冊数311万6,836冊)における理科4領域のそれぞれ採択比率を比べると、次のとおりである。(以下、23年度 → 24年度の順)

 

 上記①・②から、24年度「理科」教科書(「基礎科目」は旧課程の「Ⅰ科目」に相当とする)の採択比率では、23年度に比べ、「物理基礎」と“物理”領域の4ポイントを超える上昇、及び「地学基礎」と“地学”領域の僅かな上昇がみられた。
 その一方で、「生物基礎」と“生物”領域、及び「化学基礎」と“化学”領域の採択比率は下降した。

 

新科目「科学と人間生活」=31.8万冊、採択比率15.6%

 

 理科“4領域”から科学と人間生活との関わりを取り上げて扱う“新科目”「科学と人間生活」(2単位。選択必履修科目)の24年度採択冊数は31万7,551冊で、新課程用「理科」教科書(5科目)における採択比率は15.6%だった。この比率は、23年度に採択された旧課程用の「理科基礎」「理科総合A」「理科総合B」(いずれも2単位の選択必履修科目)の3科目合計の採択比率37.1%(「理科」11科目全体に占める割合)の半分以下であった。
 ただ、「科学と人間生活」は「基礎科目」1科目との組合せ(計2科目)履修で、主に専門学科での採択が想定されるのに加え、24年度は新課程「理科」の初年度であるため、当科目は1年次のみを対象としていた。
 他方、「理科基礎」「理科総合A」「理科総合B」は普通科も含めた全ての学科において、これらの科目を1科目以上含む「Ⅰ科目」との組合せ(計2科目)履修であることに加え、当該3科目は主に低学年用であるが、対象は1年次に限らない。
 こうしたことから、23年度採択の「理科基礎」「理科総合A」「理科総合B」と、24年度採択の「科学と人間生活」とでは、教科書の需要対象が大きく異なっていることに留意する必要がある。

 

旧課程「地学Ⅱ」の採択状況= 約7,600冊で、採択比率とも漸減傾向

 

 主に中・高学年用の「理科」教科書については、24年度は新課程用の「発展科目」の発行はなく、理科“4領域”において旧課程用の「Ⅱ科目」4科目が発行された。
 24年度の「Ⅱ科目」の合計採択冊数64万1,758冊に占める各「Ⅱ科目」の採択比率は、「化学Ⅱ」41.3%/「生物Ⅱ」29.1%/「物理Ⅱ」28.4%/「地学Ⅱ」1.2%であった。
 また、採択冊数最少の「地学Ⅱ」(7,647冊)は、最多の「化学Ⅱ」(26万5,185冊)の約35分の1である。

 

 

25年度の採択状況  ~ 新課程「発展科目」教科書、「地学」を除き“初登場”~
 新課程「理科」実施2年目の25年度「理科」教科書は、新課程用を中心に、旧課程用も含めて発行された。25年度の新・旧課程合計の「理科」教科書は、前年度より35万8,329冊(8.1%)増の478万2,638冊で、そのうち新課程用が82.4%を占めた。(表3、図2・5参照)

 

「地学基礎」=23.3万冊、24年度の2.8倍に激増

 

 新課程用では、24年度の先行実施で発行された選択必履修の「科学と人間生活」と理科4領域の「基礎科目」(4科目)の合計5科目に加え、「地学」(発展科目)と「理科課題研究」を除く「発展科目」(3科目)が加わり、合計8科目、394万2,359冊が採択された。
 選択必履修の新課程用「理科」5科目の25年度採択冊数は332万4,416冊である。「生物基礎」の102万2,467冊が最多で、以下、「化学基礎」96万5,847冊/「物理基礎」71万1,171冊/「科学と人間生活」39万1,869冊/「地学基礎」23万3,062冊だった。
 ただ、前年度に対する増加率でみると、「地学基礎」が179.2%(2.8倍)の激増であったのに対し、他の「基礎科目」は「物理基礎」80.6%(1.8倍)増、「化学基礎」と「生物基礎」がともに61.0%増(1.6倍)に留まった。(図8参照)

 

「生物Ⅰ+生物基礎」=12.5%減

 

 旧課程「Ⅰ科目」(4科目)と新課程「基礎科目」(4科目)の合計8科目の採択冊数は314万6,498冊で、基礎的な理科“4領域”の各採択数と対前年度増減は次のとおりである。
 「物理Ⅰ+物理基礎」73万7,682冊(前年度比5.9%増)/「化学Ⅰ+化学基礎」102万8,219冊(同4.7%増)/「生物Ⅰ+生物基礎」111万597冊(同12.5%減)/「地学Ⅰ+地学基礎」27万冊(同59.8%増)。
 新課程「理科」2年目に入って「基礎科目」3科目を主体とする選択必履修が拡大し、これまでの“生物・化学”領域主体に“地学”領域の選択履修が加わり、その結果、特に“生物”領域が縮小したとみられる。

 

新登場「発展科目」は、「化学」と「生物」主体

 

 中・高学年用「発展科目」の教科書は、「地学」を除く3科目が発行された。
 採択状況は、「物理」14万9,315冊(新課程「理科」教科書に占める採択比率3.8%)/「化学」26万7,876冊(同6.8%)/「生物」20万752冊(同5.1%)で、旧課程の「Ⅱ科目」同様、「化学」と「生物」が主体である。
 また、旧課程用「Ⅱ科目」と新課程用「発展科目」合計は112万1,315冊(「地学」はゼロとして集計)で、「物理Ⅱ+物理」28万6,482冊(「Ⅱ科目」+「発展科目」に占める採択比率25.5%)/「化学Ⅱ+化学」46万6,266冊(同41.6%)/「生物Ⅱ+生物」36万67冊(同32.1%)/「地学Ⅱ」8,500冊(同0.8%)。旧課程を含めた“発展的な科目”の採択比率は、24年度(「Ⅱ科目」のみ)に比べ、“物理”領域と“地学”領域の選択比率が下降した。
◆ 新課程用「地学」教科書は、旧課程用「地学Ⅰ」「地学Ⅱ」で代替

 25年度使用の「地学」(発展科目)教科書については検定申請がなく、発行されなかった。
 そのため、教科書関連法令に則り、新指導要領「地学」を25年度に開設する場合、旧課程用の「地学Ⅰ」と「地学Ⅱ」の教科書等で代替できるとされた。
◆ 新科目「理科課題研究」は、教科書発行から“除外”

 新指導要領の新設科目「理科課題研究」(1単位)は、25年度以降の中・高学年での開設が想定されている。
 しかし、「理科課題研究」は科目の特性から教科書使用の学習に馴染まないとされ、新指導要領「理科」の教科書検定申請の受理種目に入っていない。そのため、教科書が発行されていない。

 

 

26年度の採択状況  ~「地学」含め、高学年用までの理科“4領域”教科書揃う ~
 24年度の新課程「先行実施」から3年目となる26年度の「理科」教科書は、「発展科目」の「地学」が発行され、全日制では低学年から高学年まで新課程教科書の使用が可能になった。定時制の高学年(24年3月以前入学)では、旧課程用教科書の使用もある。(表4、図2・6参照)

 

新課程実施3年目で、新課程「理科」教科書450万冊、新・旧課程採択分の99.4%

 

 26年度の新課程用「理科」教科書は、新たに発行された「地学」(発展科目)を加えた全9科目で、前年度より55万6,791冊(14.1%)多い449万9,150冊が採択された。
 一方、旧課程用は全11科目で、前年度より81万3,424冊(96.8%)少ない2万6,855冊。
 したがって、新・旧課程合わせた「理科」教科書全体の採択冊数は452万6,005冊になり、新課程用が占める割合は99.4%になる。

 

「地学基礎」=31.7万冊、25年度の1.4倍で2年連続増。採択比率も1.1ポイント上昇

 

 「理科」選択必履修の5科目の26年度採択冊数は、359万6,792冊である。「生物基礎」が108万5,117冊で最多。以下、「化学基礎」103万895冊/「物理基礎」73万5,868冊/「科学と人間生活」42万8,312冊/「地学基礎」31万6,600冊で、各科目の採択数の順位は24年度以降変わらない。
 各「基礎科目」の採択数を前年度と比べると、「地学基礎」が35.8%(1.4倍)増の2年連続大幅増である。また、“基礎4科目”に占める採択比率でも、「地学基礎」は前年度より2.1ポイント上昇(10.0%)したのに対し、他の「基礎科目」は前年度より0.4~1.1ポイント下降している。
 また、旧課程「Ⅰ科目」(4科目)と新課程「基礎科目」(4科目)の合計8科目の採択冊数は318万3,514冊で、基礎的な理科“4領域”の各採択数と対前年度増減は次のとおりである。
 「物理Ⅰ+物理基礎」73万8,353冊(前年度比0.1%増)/「化学Ⅰ+化学基礎」103万5,659冊(同0.7%増)/「生物Ⅰ+生物基礎」109万1,167冊(同1.7%減)/「地学Ⅰ+地学基礎」31万8,335冊(同17.9%増)。
 26年度は新課程「理科」3年目に入って「基礎科目」3科目を主体とする選択必履修が一層拡大し、選択領域における“生物”領域から“地学”領域への移行といった前年度と同様の傾向がうかがえる。

 

新登場「地学」(発展科目)は1.6万冊、採択比率0.4%

 

 中・高学年用の「発展科目」は、25年度発行されなかった「地学」が加わり、“4領域”の教科書が揃った。
 採択状況は、「物理」23万5,510冊(新課程「理科」教科書に占める採択比率5.2%)/「化学」34万7,361冊(同7.7%)/「生物」30万3,137冊(同6.7%)/「地学」1万6,350冊(同0.4%)で、例年どおり「化学」と「生物」主体である。
 また、旧課程用「Ⅱ科目」と新課程用「発展科目」の合計採択数は90万5,378冊で、「物理Ⅱ+物理」23万6,146冊(「Ⅱ科目」+「発展科目」に占める採択比率26.1%)/「化学Ⅱ+化学」34万8,433冊(同38.5%)/「生物Ⅱ+生物」30万4,274冊(同33.6%)/「地学Ⅱ+地学」1万6,525冊(同1.8%)である。
 旧課程を含む“発展的な科目”の採択比率は、25年度に比べ、前年度下降した“物理”領域と“地学”領域が上昇に転じ、“化学”領域が下降に転じている。“生物”領域は2年連続の上昇である。

 

 

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< 新課程 「理科」 のセンター試験 >

 

27年センター試験「理科」実施概要

 

 文科省は25年7月、新課程「数学・理科」を含む『27年センター試験実施大綱』を決定し、大学入試センターでは旧課程履修者の「経過措置」を含む出題方法等を公表した。
 センター試験における新課程「理科」の出題方法等については、24年7月に選択方法等の一部変更が発表されていたが、出題科目の選択範囲と試験時間等について、「基礎科目」を①グループ(2科目選択、60分)、「発展科目」を②グループ(1科目選択、60分/2科目選択、130分<解答時間120分>)とする2グループの出題枠で実施することが決まった。
 ここでは、27年センター試験の「理科」について、改めて出題科目・範囲、選択方法、「経過措置」等について、その概要をまとめておく。

◆ 特記事項
●「発展科目」の“選択問題”配置

 「発展科目」については、旧課程で“選択履修”項目が“必修化”されたが、高校の教育課程の現状を踏まえ、受験者の負担増にならないよう“一部に選択問題”が配置される。
●「基礎科目」の1科目選択“不可”/「発展科目」の“第1・第2解答科目”

 ①グループの「基礎科目」については、1科目のみの受験は認められない。
 ②グループの試験時間において2
科目選択の場合、解答順に「第1解答科目」及び「第2解答科目」に区分して各60分間で解答する。「第1解答科目」と「第2解答科目」の間に答案回収等のための時間を設け、それらの合計時間(130分)を試験時間とする。
● 選択方法(A~D)の“事前登録”

 理科の受験科目の選択方法(A~D)は、出願時に登録する。
●「同一名称含む科目」同士の受験、原則“可能”

 選択方法Cにおける「基礎科目」と「発展科目」の組合せで、同一名称を含む科目同士の受験については原則として制限されず、同一名称を含む科目同士の受験は可能である。
なお、大学(学部)によっては同一名称を含む科目の組合せを認めない場合がある。
◆ 旧課程履修者に対する「経過措置」

●「経過措置」の位置づけ

 27年センター試験では、数学・理科の2 教科に関しては新課程対応、その他の教科については旧課程対応でそれぞれ実施される。
 このため、「数学・理科」に関し、27
年センター試験の全ての受験者は、新課程対応の試験を受けるのが原則であるが、旧課程履修者に対しては次のような「経過措置」が講じられる。旧課程履修者のうち希望者は、「経過措置」による受験が可能である。
● 科目単位での「経過措置」

 27年センター試験「理科」については、旧課程に基づく「理科総合A」、「理科総合B」、「物理Ⅰ」、「化学Ⅰ」、「生物Ⅰ」、「地学Ⅰ」は旧課程履修者のための出題科目として残され、従前と同様の試験時間・配点により出題される。
 なお、新課程(数学・理科)履修者は、旧課程対応の出題科目を選択解答できない。

 

大学におけるセンター試験「理科」科目の「選択方法」(A~D)の利用傾向

 

 各大学・学部(学科)は、27年センター試験「理科」について、前述したA~Dの4パターンの科目選択方法に基づいて利用科目等を決定する。
 26年3月時点で、各大学が“予告”している27年センター試験「理科」の利用方法は、およそ次のような傾向を示している。

● 「“基礎2科目”+“発展1科目”」(C)は、国立大及び公立大の理系において、それぞれ「“発展2科目”(D)との選択」として1割程度みられる。
 ● 「看護・医療・栄養学部」系では、国立大は「“発展2科目”(D)指定」が5割強、公立大は「“基礎2科目”(A)または“発展1科目”(B)」が5割強である。
 
◎ 大学による複雑な利用方法
 国公立大の各大学・学部(学科)の利用方法(予告)をみると、例えば、“基礎2科目”(A)指定において、“発展2科目”(D)や“発展1科目”(B)受験でも可能とする“みなし措置”を講じたり、“基礎2科目+発展1科目”(C)受験の場合は“基礎2科目”の成績を利用したりするなど、複雑な利用方法も少なくない。他大学・学部(学科)との併願に際しては、当該大学の『選抜要項』等で「選択パターン」の具体的な利用方法を確認する必要がある。

 

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< 新課程センター試験:理科 「基礎科目」 の動向予測 >

 

 本稿ではここまで、24年度から先行実施されてきた新課程「理科」の新指導要領の概要、新・旧教育課程用「理科」教科書の採択状況、及び27年センター試験における「理科」の実施概要ならびに各大学の「理科」科目の利用傾向などをみてきた。
 これらを踏まえ、文系・理系共通の選択必履修の理科「基礎科目」のセンター試験における選択状況はどうなるのか。以下に、その動向を探ってみる。

 

教科書採択比率は、「生物基礎」「化学基礎」3年連続“下降”、「地学基礎」“上昇”

 

 「理科」全科目の教科書が旧課程用のみであった23年度から、新課程実施3年目を迎えた26年度までの理科「基礎科目」(旧課程の23年度は「Ⅰ科目」をベースにする)の各採択比率(“基礎4科目”全体に占める割合)の推移は、次のとおりである。

 

 新課程「基礎科目」の教科書採択比率の推移をみると、「化学基礎」と「生物基礎」がそれぞれ30%台と高いものの、ともに24年度以降3年連続下降している。「物理基礎」は24・25年度の2年連続上昇、26年度に下降したが、20%台前半を維持している。
 一方、「地学基礎」の採択比率は他の3領域に比べ低いが、24年度の新課程以降3年連続で上昇し、26年度は旧課程時の23年度に比べ2倍以上の10.0%に達した。(図7参照)

 

新課程「地学基礎」の教科書需要、旧課程「地学Ⅰ」の3.5倍

 

 「理科」教科書において、“基礎4科目”の24年度~26年度における対前年度の各科目の増減割合の推移は、次のとおりである。

 25・26年度の「地学基礎」の増加率は、他の「基礎科目」に比べて高い増加率を示しているが、26年度採択の「地学基礎」31万6,600冊は旧課程時における23年度採択の「地学Ⅰ」9万643冊の3.5倍に当たる。(図8参照)

 

 

センター試験「地学基礎」受験“拡大”の方向

 

 新課程入試初年度となる27年センター試験「理科」の科目選択(受験)の傾向を方向づけるものとして、次のような背景がある。
 ①新課程「理科」教科書の採択状況にみられるように、学習指導要領改訂による理科の基礎的な“3領域”必修化に伴う「基礎科目」の選択分野の拡大/②センター試験「理科」における選択方法の“パターン”化に伴う“基礎2科目セット”の選択解答の設置/③旧課程センター試験の出題科目にあった「理科総合A」「理科総合B」といった基礎的な“総合科目”の廃止など。
 こうした新課程「理科」を取り巻く学習内容・履修方法やセンター試験実施方法の変更などから、新課程センター試験「理科」においては、文系・理系に共通な「生物基礎」と「化学基礎」を基軸にしつつ、「地学基礎」の選択、受験の拡大が予測される。
 また、理系志向の高まりから、センター試験における「物理基礎」や「物理」といった“物理領域”の選択率も旧課程時の「物理Ⅰ」に比べ、拡大するとみられる。(図9参照)

 

 

“地学教育”の拡充を期待

 

 23年3月の東日本大震災では巨大地震と大津波で未曾有の災厄に遭い、最近は記録的な猛暑、豪雨、豪雪、竜巻といった気象災害を引き起こすような天候にもしばしば見舞われる。
 こうした地球科学に関する現象は我々に身近な存在だが、“地球”を中心に学ぶ“地学領域”の履修は、物理・化学・生物といった“3領域”に比べ、これまで極めて少なかった。
 今回の指導要領改訂で“地学領域”の学習が拡大しているとみられ、防災教育や地球の環境教育等の観点からも、専門性と実践的指導力を含めた地学教育の拡充が期待される。

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