今月の視点

7月

文科省、「大学入試改革」の実行プランを提示!

入試の機能分散/“クリティカルシンキング”重視の「共通テスト」開発/センター試験の“資格試験的活用”促進など

旺文社 教育情報センター長 大塚/2012年7月2日掲載

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文科省は24年6月、大学教育の質的転換と大学入試改革、国立大の再編成等も踏まえた国立大学改革、私立大の質保証の徹底に向けた厳格化など、29年度までの大学改革の8つの基本的な方向性を盛り込んだ『大学改革実行プラン ~ 社会の変革のエンジンとなる大学づくり ~ 』(以下、『大学改革プラン』)を公表した。
 本稿では、『大学改革プラン』の概要紹介に加え、特に「大学入試」について、その改革計画を詳察するとともに、これまでの教育・入試改革に係る中教審答申などと入試の基本的方針等を整理し、これからの高校・大学教育の質保証と入試との関わりなどを探ってみた。

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<国の教育改革の基本的視点>
社会の期待に応える教育改革

平野博文文部科学大臣は24年6月初め、内閣府の国家戦略会議で提起、議論されている「社会構造の変化を踏まえた教育システム改革」について、その基本方針を『社会の期待に応える教育改革の推進』として取りまとめ、報告した。
 当報告では、教育改革の視点として、1.「社会の構造的変化に整合し外部に開かれた教育への転換」/2.「幼稚園(幼児教育)から大学(高等教育)までの円滑な接続、教育と産業のマッチング」といった2点を基本に据えている。

教育改革の“7つのポイント”

上記の1.は少子高齢化による内需や生産人口の減少、産業構造・就業構造の変化、グローバル化の深化に対応するため、地域コミュニティや産業界等と協働し、社会の構造的変化に整合した教育の充実/2.は大学入試改革や産業とのミスマッチの解消など、大学の入口・出口の重視、及び教育の質の向上、といった内容である。そして、この2つの改革の柱に沿って、次のような“7つの改革のポイント”を提起している。
 ①小中一貫教育制度・高校早期卒業制度の創設(6・3・3制の柔軟化)、少人数学級の推進/②大学入試改革/③大学の教育機能の再構築とミスマッチ解消/④英語力・グローバル力の向上/⑤国立大のミッションの再定義と重点支援/⑥学生の75%を占める私学の質的充実に向けた支援・メリハリある資金配分/⑦世界で戦える「リサーチ・ユニバーシティ」の倍増、地域再生の拠点としての大学の機能強化。

<『大学改革プラン』 の概要>
大学機能の再構築と大学ガバナンスの充実・強化

野田佳彦総理は、前述のような文科省全体で取組む「教育システム改革」は次世代の戦略的な育成のうえで極めて重要であるとし、改革の数値目標や工程等の更なる検討を指示。
 文科省はこれを踏まえ、大学改革は“待ったなし”の状況にあるとの認識のもと、直ちに大学改革の方向性を『大学改革プラン』として取りまとめ公表した。
 『大学改革プラン』は、次のような2つの大きな柱と、8つの基本的な方向性から構成されている。
1.激しく変化する社会における大学の機能の再構築
① 大学教育の質的転換と大学入試改革
 ● 主体的に学び・考え・行動する人材を育成する大学・大学院教育への転換(学修時間の飛躍的増加、学修環境整備等)
 ● 高校教育の質保証とともに、意欲・能力・適性等の多面的・総合的な評価に基づく入試への転換の促進
 ● 産業構造の変化や新たな学修ニーズに対応した社会人の学び直しの推進、等
② グローバル化に対応した人材育成
 ● 拠点大学の形成・学生の双方向交流の推進(日本人学生の海外留学の拡大、留学生の戦略的獲得)などによる、大学の国際化の飛躍的推進
 ● 入試におけるTOEFL・TOEICの活用・促進、英語による授業の倍増
 ● 産学協働によるグローバル人材・イノベーション人材の育成推進(「リーディング大学院」など大学院教育機能の抜本的強化)
 ● 秋入学への対応等、教育システムのグローバル化、等
③ 地域再生の核となる大学づくり(COC <Center of Community>構想の推進)
 ● 地域と大学の連携強化
 ● 大学の生涯学習機能の強化
 ● 地域の雇用創造・課題解決への貢献、等
④ 研究力強化:世界的な研究成果とイノベーションの創出
 ● 大学の研究力強化促進のための支援の加速化
 ● 研究拠点の形成・発展のための重点的支援
 ● 大学の研究システム・環境改革の促進、産学官連携の推進、国際的な頭脳循環の推進、等
2.大学の機能の再構築のための大学ガバナンスの充実・強化
⑤ 国立大学改革
 ● 国立大の個々のミッションの再定義と「国立大学改革プラン」の策定・実行
 ● 学長のリーダーシップの確立、より効果的な評価
 ● 多様な大学間連携の促進と、そのための制度的選択肢の整備
 ● 大学の枠・学部の枠を越えた再編成等(機能別・地域別の大学群の形成等)、等
⑥ 大学改革を促すシステム・基盤整備
 ● 大学情報の公表の徹底(「大学ポートレート」)、評価制度の抜本改革、客観的評価指標の開発
 ● 質保証の支援のための新たな行政法人の創設、等
⑦ 財政基盤の確立とメリハリある資金配分の実施
【私学助成の改善・充実 ~ 私立大の質の促進・向上を目指して ~】
 ● 大学の積極的経営を促進・支援
 ● 公財政支援の充実とメリハリある資源配分
 ● 多元的な資金調達の促進、等
⑧ 大学の質保証の徹底推進
【私立大の質保証の徹底推進と確立(教学・経営の両面から)】
 ● 設置基準・設置認可審査・アフターケア・認証評価・学校教育法による是正措置を通じた大学の質保証のためのトータルシステムの確立
 ● 経営上の課題を抱える学校法人について、詳細分析・実地調査・経営指導により、早期の経営判断を促進する仕組みの確立、等

29年度まで“3段階”の「改革実行フェーズ」

文科省は今回の『大学改革プラン』について、今年度(24年度)と第2期「教育振興基本計画」期間(25年度~29年度の5年間:現在、中教審で審議中)を“大学改革実行期間”として位置づけている。
 そして、次のような“3段階”の「改革実行フェーズ」によって、それぞれの改革についてスピード感と実行力をもって取組むとしている。
 ◆ 第1フェーズ(24年度:改革始動期) 
  ~ 国民的議論・先行的着手 、必要な制度・仕組みの検討 ~
 ・大学ビジョンの策定/・大学改革フォーラムの全国展開/・グローバル教育拠点の形成/・大学のガバナンス強化/・国立大学改革基本方針の提示/・多様な大学間連携の制度的選択肢(「一法人複数大学方式」<“アンブレラ方式”>等、国立大の評価・ガバナンス、財務上の規制緩和等)の検討に着手/・私立大の教育活性化のためのメリハリある支援の強化/・早期の経営判断を促す私立大への経営指導の強化/・大学入試改革の中教審等での検討開始(24年夏を目途)、等
 ◆ 第2フェーズ(25・26年度:改革集中実行期)
  ~ 改革実行のための制度・仕組みの整備、支援措置の実施 ~
 ・学生の「主体的な学び」強化/・大学情報の公表徹底(「大学ポートレート」)/・評価制度の抜本改革/・質保証支援の新たな行政法人創設/・大学の研究力強化支援の加速化/・高校教育と大学教育を通じた学力保証/・国立大学改革プランの策定/・全国立大・学部のミッションの再定義、改革工程の確定。ミッションに応じた重点支援の拡大、機能強化の推進。大学の枠・学部の枠を越えた再編成等(機能別・地域別の大学群の形成等)/・私立大の教育活性化の多様な展開/・「COC(Center of Community)構想」の具体化/・国公私立大の設置形態を越えた連携の本格的展開、等
 ◆ 第3フェーズ(27~29年度:改革検証・深化発展期)
  ~ 取組の評価・検証、改革の深化発展 ~
 ・大学改革の取組を評価・検証/・大学改革を深化発展

改革の目指す主な具体的目標・成果の例

◆ 生涯学び続け、主体的に考える力を育成
 ◎目標等:主体的な学修ができる環境を整備し、学生の学修時間を欧米並の水準に
  *現状・課題:学生の1日の学修時間=4.6時間(大学設置基準では約8時間を想定)/1週間当たりの大学1年生の授業関連の学修時間(大学での授業時間を除く) ⇒ 日本=約6割が1~5時間、アメリカ=約6割が11~15時間、等
 ◆ グローバル社会で活躍する人材の育成
 ◎目標等:20代前半までに同世代の10%が、海外留学等を経験
  *現状・課題:日本人の海外留学者数は、若者の所謂“内向き志向”を反映して、2004年の8万2,945人をピークに毎年減少し、2009年には5万9,923人、等
 ◆ 我が国や地球規模の課題を解決する大学・研究拠点の形成
 ◎目標等:世界で戦える「リサーチ・ユニバーシティ」を10年後に倍増
  *現状・課題:「“被引用度”の高い論文数シェア」=1998年~2000年(平均)は日本4位(1位アメリカ、2位イギリス、3位ドイツ、中国13位)  ⇒ 2008年~2010年(平均)は日本7位(1位アメリカ、2位イギリス、3位ドイツ、中国4位)  ⇒ 国際的にみて、我が国の研究力は相対的に低下傾向。「リサーチ・ユニバーシティ」の層が薄い、等
 ◆ 地域の課題解決の中核となる大学の形成
 ◎目標等:全国の地域圏で、大学が地域再生の主要な役割を果たすセンターに
  *現状・課題:大学(学生)と地域、社会との連携、地域貢献等に対する批判、等

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< 「大学入試改革」 の実行プラン>

~ 学ぶ意欲と力を測る大学入試への転換 ~
 『大学改革プラン』で、「大学入試の改革」(以下、「入試改革プラン」)に付けられた“学ぶ意欲と力を測る大学入試への転換”のキャッチコピーは、“入試改革”が“大学教育の質的転換”の1つとして「大学機能の再構築」に不可欠な取組であることを示している。
そして、「入試改革プラン」は改革の観点として、「高校教育から一貫した質保証へ」「教科の知識偏重入試から、意欲・能力・適性等の多面的・総合的な評価へ」といった2つの基本方針を掲げている。
1. 高校教育から一貫した質保証へ  ~ 点からプロセスによる質保証へ ~

入試の役割整理、目的・機能別に分散

◆ 現 状
  「入試改革プラン」では、大学入試に次のような様々な機能が求められすぎているとしている。
  ● 入試に求められている様々な機能
   ・各大学の教育水準や学生の質の評価指標    /・大学進学希望者の能力・適性の判定
   ・高校における学力の状況の把握    /・高校における幅広い学習の確保
   ・高校生の学習意欲の喚起
 ◆ 転換後
 まず、現状の入試が担っている役割を整理し、上記のような様々な機能を目的別に分散させる。そして、それぞれの段階で必要とされる能力や学習成果を確認し、次の学びへつなげていく仕組みへ移行していく。(図1参照)
2. 教科の知識偏重の入試から 「意欲・能力・適性等の多面的・総合的な評価」 へ
 ~ 各大学が丁寧に選抜する入試へ転換 ~
 ◆ 現 状
  「入試改革プラン」では、現在の入試方法について「教科の知識を中心としたペーパーテスト偏重による一発試験的入試」であるとし、次のような入試方法の改善や「共通テスト」の開発などを例示している。
  ● 入試方法の改善事例
   ・1点刻みではない、レベル型の成績提供方式の導入によるセンター試験の“資格試験的活用”の促進
   ・思考力・判断力・知識の活用力等(“クリティカルシンキング”等)を問う新たな「共通テスト」の開発
   ・大学グループ別の「入学者共同選抜」の導入の促進
   ・志願者と大学が相互理解を深めるための、時間をかけた創意工夫ある入試の促進
 ◆ 転換後
 「入試改革プラン」では、上記のような改善事例のうち、可能な取組から逐次着手し、「志願者の意欲・能力・適性等の多面的・総合的な評価に基づく入試」への転換を目指すとしている。(図1参照)

高校と大学教育の接続の改善

24年度から直ちに実施する「高校と大学教育の接続の改善」については、まず、センター試験について、24年度試験で地理歴史と公民の問題冊子の配付ミスや試験開始時間繰り下げが多発したことなどのトラブルの検証結果(大学入試センター、文科省それぞれの『検証報告書』:24年3月・4月)も踏まえ、対応可能な事項は25年度試験で改善するとしている。
 また、更なる検討が必要な課題については、各大学の機能・特色等に応じた個別試験の改善とともに、中教審等で24年夏を目途に具体的な検討を開始するとしている。

大学入試の改革

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< 「大学制度」 のしくみと大学入試 >
「新制大学」発足と「入学者選抜 ● ●方法」

大学入試はこれまで、大学進学率の向上、18歳人口の増減などのほか、中教審等の提言、学習指導要領の改正も含めた初等・中等教育の改革や行政指導、産業界や地元地域などからの社会的要請など、大学を取り巻くさまざまな環境変化によって改革・改善されてきた。
 そうした中、「大学入学者」については、「志願者」を“選抜”する「大学入学者選抜 ● ●」という概念が戦後の「新制大学」発足以来、60年以上にわたり一貫して続いている(現状は実質的な「選抜機能」を果たせない大学・学部も少なくない)。
 これは、戦前の旧制大学における「優先順位制」(後述)の入試方法と異なり、新制大学では全ての入学資格者を“平等”に扱い、志願者に学力検査等を課して、調査書などと総合的に合否判定を行って“選抜”するという理念に基づくものであるといえる。
 ◆ 戦前の「優先順位制」の入試方法
 戦前の大学入学者選抜(入試)は、志願者数が当該大学(学部・学科等)の入学定員(以下、定員)を超過した場合に、各大学(学部)の規定によって実施されていた。
 具体的には、志願者の出身学校によって入学に関する“順位”を付与する「優先順位制」が採用されていた。予科を置く大学では予科修了者に、予科を置かない大学の文系学部では旧制高校「文科」卒業者に、理工医学系学部では旧制高校「理科」卒業者に、それぞれ“優先順位第1位”を付与していた(旧制高校の入試は激戦であった)。
 そして、“優先順位第1位”の志願者数が当該大学(学部)の定員を超えた場合、その「第1位志願者」のみについて入試が実施された。他方、第1位志願者数が定員を満たさなかった場合は、第1位志願者全員が“無試験合格”となり、欠員補充は「優先順位第2位以下」の志願者に振り向けられた。たとえ旧帝大であっても、第1位志願者数が少なく定員に欠員を生じた場合、第1位志願者は“無試験合格”が許可されていた。
 ◆ 旧文部省の『入学者選抜方法の解説』
 ところで、戦前の所謂“複線型”高等教育機関であった旧制高校、大学予科、旧制専門学校、師範学校等は終戦後間もなく、旧制大学(帝大、官立大、公立大、私立大)と統合・改編されて、4年制の「新制大学」に一本化された(“単線型”)。
 そして、新制大学(以下、大学)の入試は、昭和24(1949)年度から本格的に実施されることになるが、当時の文部省は『昭和24年度新制大学入学者選抜方法の解説』を提示し、入試に関する次のような基本方針を大学側に求めた。
 1.高等教育を受けるに最も適応した能力を備えているものを選抜すること
 2.下級学校の教育を理解し、その円満な発展を助長するような選抜方法をとること
 3.入学者選抜自体が一つの教育であるから、教育目的に沿うように選抜方針をたてること
 つまり、“一元化・単線化”された新制大学の入試については、発足当初から「“一律”に志願者を“選抜”する」という考え方が盛り込まれ、上記3つの方針とともに現行の文科省通知『大学入学者選抜実施要項』(以下、『選抜実施要項』。後述)につながっていることが伺える。

『選抜実施要項』にみる入試の基本的方針

◆ 大学入学者の資格、入学の認否
 大学入学者の資格については、「高校もしくは中等教育学校卒業者や通常課程による12年の学校教育の修了者(これに相当する学校教育修了者を含む)、文部科学大臣がこれらの者と同等以上の学力があると認めた者」など、学校教育法(第90条)や学校教育法施行規則(第150条)等で規定されている。
 そして、入学の認否については「学生の入学、退学、転学、留学、休学及び卒業は、教授会の議を経て、学長が定める」(学校教育法施行規則<第144条>)と規定されている。
 ◆ 『選抜実施要項』
 このように、大学入学者の資格や入学の認否については、学校教育に関する基本法である学校教育法などで規定されているが、入学者選抜(入試)についての同法での規定は設けられていない。したがって、入学者選抜は、基本的には各大学が独自に実施するものであるが、大学教育の適正化、選抜の公平・公正化(中立性)、高校教育との接続性、私立大も含めた公教育としての公共性などに十分配慮する必要がある。
 こうした観点から、文科省は大学の入学者選抜に関する指導助言の一環として、毎年5月頃、次年度の入学者選抜の実施に向けた『選抜実施要項』を策定し、各大学等へ通知している。
 『選抜実施要項』(25年度用)には、基本方針/入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)/入試方法/試験期日等/調査書/学力検査等/学力検査実施教科・科目、試験方法等の決定・発表/募集人員/出願資格/募集要項等/国立大の入学者選抜/公立大の入学者選抜/その他注意事項等、入試実施の基本的事項が定められている。
 ◆ 『選抜実施要項』の「基本方針」の変遷
 これまでの『選抜実施要項』をみると、中教審提言や大学側・高校側の要請などを踏まえ新たな事項を追加したり、項目内容を変更したりして、改訂されている。
 そこで、例えば次のような年度の『選抜実施要項』の「基本方針」(平成17年度以前は“前文”)をたどると、その折々の「高校・大学教育」と「大学入学者選抜」との関わり、入学者選抜の基本的な方針などが伺える。

● 昭和60(1985)年度:
大学入試の改革
 この時代の基本方針(前文)は、前述した選抜実施の3つの方針を踏まえ、「能力・適性」、「公正・妥当」、「高校教育の尊重」を基本原則として掲げている。
● 平成6(1994)年度:
大学入試の改革
 前記の『選抜実施要項』(昭和60年度)の前文に、「(能力・適性等を)多面的に判定し」という文言が追加されている。これは、大学も含めた教育の個性化・多様化を促進する臨教審答申(昭和60年6月、第1次答申)や当時の文部省の審議会等の答申・報告などを踏まえての改善で、既に平成時代初めには改訂されていた。
● 18(2006)年度:
大学入試の改革
 18年度入試は、「完全学校週5日制」(14年度から実施)の下、「ゆとり」の中で「生きる力」(確かな学力/豊かな心/健やかな体)を養うという現行の高校学習指導要領(15年度から実施。なお、新学習指導要領は24年度から数学・理科で先行実施。25年度から完全実施)に基づく最初の入試であった。
 その18年度『選抜実施要項』から、これまでの“前文”を「基本方針」という項目に位置づけ、入学者選抜の基本的方針を明確に示している。
 また、「入学者受入方針」(アドミッション・ポリシー)、「選抜方法の多様化、評価尺度の多元化」といった文言を盛り込み、各大学の個性・特色を反映した多様な入学者選抜を促している。
● 23(2011)年度:
大学入試の改革

◎ 「学力の重要な要素」の把握
 23年度の「基本方針」では、これまでの「能力・適性」、「公正・妥当」、「高校教育の尊重」といった3原則に加え、「学力の重要な要素」を適切に把握することを求めている。
 学力の要素については、その定義を巡って様々な議論がなされてきたが、学校教育法の一部改正(19年6月:第30条第2項、第62条等)や中教審の『学習指導要領等の改善について』(20年1月答申)、及び新課程『高等学校学習指導要領』(21年3月告示)で明確にされたため、“学力の把握”を「基本方針」に盛り込んでいる。
 なお、中教審答申『学習指導要領等の改善について』では、「学力の重要な要素」として、①基礎的・基本的な知識・技能の習得/②知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等/③学習意欲、の3つを挙げている。
◎ 「入学者受入方針」の明確化
 中教審答申『学士課程教育の構築に向けて』(20年12月)では、学士課程教育の改革に当たり、各大学は「学位授与の方針」(出口)、「教育課程編成・実施の方針」(中身)、「入学者受入れの方針」(入口)の3つの方針を明示することが最も重要であるとしている。そして、「入学者受入方針」(アドミッション・ポリシー)については、受験教科・科目数に関し、「入学後の教育との関連を十分に踏まえた上で設定することが必要」とし、さらに「求める学生像等だけでなく、高等学校段階で習得しておくべき内容・水準を具体的に示すように努め、特に、高等学校で履修すべき科目や取得が望ましい資格などを列挙するなど最低限 『何をどの程度学んできてほしいか』を明示する」ことを求めている。
 23年度『選抜実施要項』では上記のような中教審答申の趣旨を踏まえ、「入学者受入方針」についての内容を第1項目の「基本方針」から独立させ、第2項目(新設)として、より具体的に記述している。

<入試方法の改善事例 >

今回提示された文科省の「入試改革プラン」には、これまでの中教審や旧大学審答申、大学関係団体等の報告などで取り上げられ、議論・検討されてきた提言もみられる。

「入試改革プラン」と、これまでの審議会答申

「入試改革プラン」の柱の一つに据えられている「教科知識中心のペーパーテスト偏重による一発試験的入試からの転換」と、「1点刻みではない、レベル型の成績提供方式の導入によるセンター試験の資格試験的活用」に関しては、中教審の『21世紀を展望した我が国の教育の在り方について』(第2次答申:平成9年6月)で、次のように提言されている。
大学入試の改革
 他方、旧大学審は上記のような中教審第2次答申と、大学進学を「選抜 ● ●」から大学・志願者双方の「相互選択 ● ● ● ●」へ転換し、「入学者受入方針」(アドミッション・ポリシー)を明確にすることなどを提言した中教審答申『初等中等教育と高等教育との接続の改善について』(以下、『初中・高等教育の接続答申』。平成11年12月)などを踏まえ、『大学入試の改善について』を答申している(以下、『入試改善答申』。平成12年11月)。
 『入試改善答申』では当時の大学環境の変化と入試の実態に視点を当て、センター試験では、資格試験的な取り扱いの推進/教科・科目横断型の総合的な問題の調査研究や総合的な試験の導入の検討/リスニングテストの導入/年度内複数回実施/成績の複数年度利用/成績の本人開示/高校・大学関係者の協議の場の設置などを提言。個別試験については、募集人員の大くくり化と多様な選抜方法・評価尺度の導入/秋季入学の拡大/AO入試の適正かつ円滑な推進などを提言している。
 これらの大学入試改善の諸提言は当時“新しい入試観”として注目されたが、10年余り経った現在、すでに実行されているものもあるが、実現には至っていなかったり、一部の小規模実施に留まっていたりして、入試の改革・改善の難しさが伺える。

センター試験の“資格試験的活用”

特に今回の「入試改革プラン」で例示されている「センター試験の“資格試験的活用”」について、『入試改善答申』では次のような方策を提言している。
大学入試の改革
◆ “資格試験的な取扱い”への懐疑的意見 VS.『入試改善答申』の見解
 上記の『入試改善答申』(12年11月)の提言内容は、答申に先立つ「中間まとめ」(12年4月公表)の段階で高校・大学関係団体から提出された意見などを踏まえたものである。センター試験の“資格試験的な取扱い”に対する当時の関係団体からの意見としては、例えば次のような懐疑的な意見もみられた。
大学入試の改革
上記のような懸念に対し、『入試改善答申』では次のような見解を示している。
大学入試の改革
◆ 平成13(2001)年度『選抜実施要項』から“資格試験的な利用”について記述
文部省(当時)は13年度『大学入学者選抜実施要項について』(12年5月通知)に、前述の『入試改善答申』を踏まえて、「センター試験の成績については、その利用に際し、一定の学力水準に達しているか否かの判定に主として用いる資格試験的な利用方法等、多様な利用方法を工夫することが望ましい」と、センター試験の“資格試験的な利用法の促進”を新たに追加項目として盛り込んだ。現在も『選抜実施要項』(25年度)の「第6 学力検査等」でセンター試験の「資格試験的な利用」等を記述している。

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<新たな 「共通テスト」 の開発 >
センター試験の“マークシート方式”の限界

今回の「入試改革プラン」で提起されている“クリティカルシンキング”、つまり「思考力・判断力・知識の活用力」は、センター試験でもある程度測ることはできよう。
 例えば、統計や資料、データを見せて“考えさせる”ことは、まさに「思考力・判断力・知識の活用力」につながる。
 ただ、センター試験の課題として、出題形式がある。現行では記述式の設問はなく、設問に対する選択肢の中から受験者が正解とする数字や英字、記号を選び、それを解答用紙(マークシート)の問題番号に対応してマークする。数学では多くの場合、マークシート方式による制約から、“予め決められた解法”(手順、誘導)に沿って解答していくため、“受験者独自の発想”による解法は評価されない。これでは、「予測困難な事象に主体的に取組み活路を切り拓く力」(クリティカルシンキング)を測るテストとは言いがたい。“クリティカルシンキング”を問う「共通テスト」では、受験者独自の「問題解決能力」をどのような形式で“表現”させ、“評価”するのか。その辺りが新「共通テスト」のポイントになりそうだ。

< 「高校教育 - 入試 - 大学教育」 の一体改革 >
大学入試の現状と課題

18歳人口減少期における近年の規制緩和・多様化路線のもと、高校の“準義務教育化”(23年度高校進学率98.2%)と大学進学率の“ユニバーサル段階”(23年度大学進学率51.0%)を迎え、高校教育、大学教育とも多様化が一層進んでいる。
 高校教育の共通性が薄まり、大学志願者に平準化された教科・科目の修得を求めるのは難しく、高校での学習内容や程度がみえにくい。こうした課題に着目して高校・大学関係者によって協議・研究、報告されたのが「高大接続テスト(仮称)」(22年9月)である。当テストは、高校段階の基礎的教科・科目の学習の達成度を客観的に評価する目標準拠型の「達成度テスト」である。なお、センター試験の機能としては「達成度テスト」と集団準拠型の「選抜テスト」の二面性をもち、専ら「選抜テスト」として利用されている。
 大学でも教育の質保証が課題で、学生に所謂「学士力」を一律に求めるのは難しい状況だ。
 大学入試は、前述した『選抜実施要項』の「基本方針」にもあるように、各大学・学部の「入学者受入方針」(アドミッション・ポリシー)に基づき志願者の学力や能力、適性等を多面的に判定することを目的にしている。しかし、実態は、高校における生徒の学力把握や学習意欲の喚起、各大学の教育水準や学生の質の評価指標といった本来、高校や大学で果たされるべき「教育機能」までも大学入試に求めていると指摘されている。
 こうした「教育機能」を入試に求めることは、以前のような競争力の高い、選抜性の強かった受験環境では一定程度担保されていたものの、所謂「全入時代」を迎えた現在では難しい。また、各大学の「入試機能」についても、受験生数減少傾向の下、志願者獲得策のための入試方法の多様化、複雑化が進んでいる。「入試改革プラン」では、入試の現状と課題を踏まえ、「高校教育 - 入試 - 大学教育」といった一連のプロセスにおいて、高校教育と大学教育の質保証を図っていくとしている。(図1参照)

大学の機能別分化と入試

ユニバーサル段階を迎えた大学は、多様化する学生や社会の様々なニーズに対応するために、機能別に分化しながら個性・特色を明確にしていかざるを得ない。
 そして、大学の機能別分化と機能強化が進むと、学生の入学形態や入試は、現在のような「“一律”に入学者を“選抜”する」(実態は“選抜”機能を果たせない大学も少なくない)というシステムではなくなり、それぞれの機能、個性・特色に合わせた入学形態や、それぞれの「入学者受入方針」に即した実質的な入試に転換されていくことになろう。
 ◆ 入学形態と入試の実質化
 入学形態と入試の実質化が進むと、大学への「入口」は現在のような名目上の“一律選抜”ではなく、“選抜型”と“開放型”に大別されていくとみられる。 具体的には、アメリカの大学にみられるような、次の3タイプに類型化されよう。
   ① 競争選抜型:志願者に学力検査などを課す「競争試験」によって“選抜”する学力検査主体の入学形態。現行の「一般入試」における選抜性の強い有力大学・学部にみられよう。
   ② 資格選抜型:入学要件として、指定教科・科目の評定値やセンター試験の基準点(概括的レベル)のクリアー、国際バカロレア資格の取得等を求め、それらを基に“選抜”する。現行では競争力のある「推薦・AO入試」に相当しよう。
   ③ 開放入学型:高卒者や高等学校卒業程度認定試験(旧大検)合格者など、法的に規定されている入学資格を満たしていれば、原則として入学が許可される。
   以上のような入学形態と入試の実質化については、前述の中教審『初中・高等教育の接続答申』の「選抜 ● ●から相互選択 ● ● ● ●へ」の提言に、その基調をみることができよう。
 ただ、いずれの入学形態でも、多様化した高卒者の質保証をどう担保するかが課題だ。例えば、単位取得(要卒業単位数=74単位以上)について、現行のような所謂“履修主義”から、学習成果を保証する“修得主義”への転換が実現可能なのか。
 高校・大学ともに、進級や中退問題などとも絡む単位認定の在り方までも見直さなければ、「高校教育 - 入試 - 大学教育」を一体とした質保証は危うい。

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