今月の視点

10月

産業基盤を支える「理工学系」人材の育成 !

将来の「科学技術・研究者」は、22年度で高校生から大学院生まで約91万人 !

旺文社 教育情報センター長 大塚/2011年10月3日掲載

この記事の印刷用PDF

資源小国、科学技術立国を標榜する我が国では、従来から加工貿易によって産業・経済を支えてきた。そうした中、最近は産業構造の変化、グローバル化の進展に加え、「円高」基調の金融市場などから、国内の生産拠点や雇用、研究・技術開発部門を海外に求める企業が増え、国内の“産業空洞化”が懸念されている。
 他方、大学進学希望者の「理工学系」志望は、不況を反映して高まりをみせている。大学側も優秀な理数系学生育成の特別事業や理数重視型の入試などを展開しており、将来、産業基盤を支える科学技術・研究者は、22年度で高校生から大学院生まで約91万人に及ぶ。

*        *        *

<「理工学系」人材育成の現状>

科学技術立国を掲げ、科学技術振興を図るうえで、理工学系人材の育成は重要な取組の一つである。そこで先ず、学校教育、とりわけ高校の工業系生徒、大学等における理工学系の学生等の現状をみてみよう。


22年度高校・大学等の生徒・学生数&「理工学系」人材の現状

大学・学部生の19%、約48万人が理工学系

22年度の大学・学部生約255万9千人のうち、理工学系は約48万2千人(18.8%)である。大学院では、修士課程約17万4千人のうち、理工学系が約8万6千人(49.7%)、博士課程約7万4千人のうち、約1万9千人(25.4%)が理工学系である。
 全学部生約255万9千人の設置者別の人数と割合をみると、国立大=約45万2千人(17.6%)、公立大=約12万3千人(4.8%)、私立大=約198万5千人(77.6%)で、私立大が8割近くを占めている。
 また、理工学系の学部生約48万2千人の設置者別の人数及び割合は、国立大=約16万9千人(35.1%)、公立大=約1万9千人(3.9%)、私立大=約29万4千人(61.0%)で、私立大が6割強である。
 短大では約15万人のうち、工業学科は約4千人(3.0%)である。
 高専は約5万6千人のうち、工学系が約5万4千人(96.4%)を占めている。
 高校では約336万人(本科)のうち、約26万7千人(7.9%)が工業科の生徒である。因みに、商業科は約22万1千人(6.6%)、総合学科は約17万2千人(5.1%)、農業科は約8万8千人(2.6%)で、普通科は約243万1千人(72.3%)を占める。
 以上の状況から、22年度時点では、高校、大学(学部・大学院。専門職大学院除く)、短大、高専に在籍する約637万3千人の生徒・学生等のうち、約91万2千人(14.3%)が将来、我が国の産業を支える科学技術の基礎となる高校「理数科目」や専門教科「工業」、あるいは大学等で理工学系の教育を受けたり、研究・技術開発に関与したりしていることになる。(図1参照)
 なお、「理工学系」の学生数は、『学校基本調査報告書』(22年度版:文科省)の「関係学科別」(学部生)、「専攻分野別」(大学院生)における「理学」「工学」による。

伝統的な基礎工学分野の縮減

高校の専門学科「工業」の生徒数、大学や大学院、高専等の「理工学系」の学生数のそれぞれ“規模”については上述のとおりであるが、特に大学・学部における「工学系」の“設置分野”(学科等)についてみてみる。
 産業構造の変化とともに、工学系学生の就職先も従前に比べ様変わりしているようだ。これまで工学系就職先の代表格であった「製造業」が減少傾向にあり、代わって情報通信、医療、福祉といった「サービス業関連」(教育、研究を除く)などが増加傾向にあるようだ。
 大学もそうした変化に呼応し、伝統的な土木工学、機械工学、電気工学、金属工学、あるいは今回の福島第一原発事故で一気に社会的関心度を高めた原子力(原子炉)工学など、産業基盤を支える基礎工学分野(学科等)の改組・転換、定員削減、名称変更等を進めているところも少なくない。
 大学における基礎工学分野の縮減は、我が国の産業を支えてきた基盤技術の脆弱化に留まらず、基盤技術と先端技術との融合によって創出されるイノベーションの進展にも影響することが懸念されている。大学は国の産業基盤を支える基礎工学分野の維持・向上にも腐心し、産業界にもそうした分野の人材受け入れを拡大するなどの取組が求められる。

*        *        *

<「理工学系」入試の推移>
“理工系離れ”論議

平成14(2002)年度~18年度にかけて、国立大工学系学部の志願者数が当時の18歳人口や高卒者数の減少率の1.5倍ほどの大幅な減少を示した。特に募集人員の多い前期試験では志願倍率(志願者数÷募集人員)2倍未満の大学(学部)が増えるなど、深刻な「工学部離れ」の進行が当時の国立大工学系学部にも色濃く出ていた。
 志願倍率が2倍を切るような状況では、学生の知識・技能や質保証にも影響しかねないなどと、国立大の工学系関係者の間では危機感を募らせていた。(図2参照)
 また、中学・高校生の「理数嫌い」の増加、学生の「理工系離れ」による将来の技術者不足などが盛んに喧伝され、様々な言説や議論が展開されていた。

“理工系人気”の定着と“産業空洞化”対策

「理数嫌い」「理工系離れ」などに対し、文科省としても、小・中・高校の理数教育の拡大・充実(学習指導要領への反映、高校の「スーパーサイエンスハイスクール」<SSH>事業の実施など)や科学技術・理数学生育成事業の支援(後述)など、様々な科学技術・理数教育充実のための施策を進めている。
 こうした国の取組に加え、理工学系大学・学部の高大連携の積極的な展開、理数科目重視の特別選抜、国際科学オリンピックや科学技術コンテスト等の評価を活用した特別選抜(推薦・AO入試等)の拡大などと、“不況に強い理工系”といった就職実績とが相俟って、ここ数年、理工学系志願者は増加している。
 最近は特に将来のキャリア形成や就職を意識して、理系を志願する「理系女子」(“リケジョ”)の増加や工業高校の進学率の向上など、理工学系志願者の裾野も拡大しており、理工系人気は定着してきている。こうした“理工系人気の萌芽”を育てるためにも、国や企業による“産業空洞化”対策は喫緊の課題である。


学校教育法施行規則

「工・理工学部」の“志願者数”と“志願者割合”

昭和60(1985)年度~平成22(2010)年度までの25年間の大学入試における工学部と理工学部の「志願者数」(国公私立大:延べ数)の推移を外観すると、前述のように最近は増加傾向にあるが、平成4(1992)年度を直近のピークとして、概ね18歳人口・高卒者数の“自然減”とともに右肩下がりを呈している。
 ところで、志願者の進学先分野(学部・学科)への“志向の度合い”(=学部系統別志向 → 人気度)は、「志願者数の増減」だけでなく、「総志願者に占める当該学部志願者の割合」(以下、「志願者割合」)をみるべきであろう。
 昭和60年度~平成19 (2007)年度までの工学部と理工学部の「志願者割合」は、上記の「志願者数」のグラフの形状と異なる動向を示している。「志願者数」は4年度を頂上、12年度~15年度を下り坂の平坦地(踊り場)とする、いわば“八ヶ岳型”を呈している。
 他方、「志願者割合」は、昭和61年度と平成10(1998)年度に小さなピーク、その間の6年度を谷とする“波状”を示しながら低下している。
 特に昭和63年度~平成10年度にかけて、「志願者数」は“凸型”、「志願者割合」は“凹型”という対照的な形状を示している。そして、20年度~22年度は、「志願者数」、「志願者割合」とも概ね“上向き”傾向を示している。(図3参照)
 こうした、当該分野の「志願者数」と「志願者割合」との形状の違いは、将来の就職(キャリア意識)や入試の難易さ(センター試験受験科目等の平均点、前年の当該学部・学科の倍率や難易度等)など、受験生を取り巻くその時々の環境によって生じるものとみられる。
 なお、ここでの「工・理工学部」は、『学校基本調査報告書』(文科省)の「学部別入学志願者数」に記載されている「工学部」「理工学部」の集計である。最近は理工学系の学部改組や名称変更などとともに学際的分野の工学部、理工学部も少なくない。本稿では25年間のスパンで「工学部」「理工学部」の志願者の動向を概観するため、“工”と“理工”学部に限定した。ただ、19年度に「理工学部」から「基幹・創造・先進理工学部」の3学部に改組した早稲田大については、志願者数の多さとデータの継続性から3学部を含めた。


学校教育法施行規則

*        *        *

<「理数学生育成」の支援事業>
理数学生応援プロジェクト

文科省は、理系大学・学部において理数分野に強い学習意欲をもつ学生の意欲・能力をさらに伸ばし、優れた科学技術者を育成する「理数学生応援プロジェクト」を国の委託事業として19年度~22年度にかけて実施した。
 事業の取組内容は、(1)入試等選抜方法の開発・実践、(2)教育プログラムの開発・実践、(3)意欲・能力を伸ばす工夫といった取組で、委託期間は原則4年間、委託額上限(1年間)は1,600万円程度とされる。
 各年度の採択大学は次のとおりである。
・19年度=千葉大、東京工業大、東京理科大、京都大、大阪大/・20年度=鹿児島大、愛媛大、東北大、東京農工大、北海道大/・21年度=熊本大、静岡大、名古屋工業大、お茶の水女子大、豊橋技術科学大、信州大、広島大、群馬大、山梨大、筑波大/・22年度=東海大、島根大
 上記の大学のうち、19年度に採択された5大学が4年間の事業実施の『最終報告書』を23年3月に公表している。各大学の特に「入試・選抜方法の開発・実践」に係る取組を中心に、その概要をみてみる。

◎ 千葉大:平成10(1998)年度に「17才飛び入学(先進科学プログラム)」を導入している千葉大では、「スーパーサイエンスハイスクール」(SSH)活動や課外指導による独自の課題研究あるいは科学コンクールでの発表などを積極的に評価し、受験科目の軽減やボーナス点を与える「特別選抜」を行って、“理数大好き高校生”を発掘・奨励してきたとしている。
 また、「特別選抜」による入学者には、特別教育コースを設けるなどして、科学への探求心を大学でも継続的に深め、大学院博士前期・後期課程に進学し、研究者・高度技術者へと進む優秀な人材を育成できる教育体制を構築してきたという。

◎ 東京工業大:大学では、当事業を「理工系学生能力発見・開発プロジェクト」と位置づけ、全学的に取り組んでいる「創造性の育成と国際的リーダーの育成」を達成すべく教育システムの開発・改良を念頭におき、入試等選抜方法の改良の提案や能力発見方法の開発などを行うことを目的にしている。
 教育システムの第1段階に係る「潜在能力の高い学生の選抜」については、第1類~第7類の全ての類(第1類=理学部、第2類~第6類=工学部、第7類=生命理工学部)、及び「一般入試」、「高大連携特別選抜」(東京工業大附属科学技術高校からの指定校推薦。10名程度)、「第1類AO特別入試」(センター試験免除、数学と書類審査で判定)といった全ての入試区分から当事業の学生を選抜したという。
 様々な専門や個性を備えた学生が集まって互いに刺激を及ぼし合うことで、学生の能力の発見と開発に大きな可能性を開くことができたとしている。特に、「高大連携特別選抜」生は個性を発揮して、各々の教育プログラムに活発に参加する姿勢を示し、「一般入試」の参加学生の活動意欲にも大きな好影響を与えたとして高く評価している。
 なお、24年度入試から、「第1類AO特別入試」は廃止されてセンター試験を課す「推薦入試」に、第2類~第6類の「後期試験」は募集停止でセンター試験を課す「AO入試」にそれぞれ変更されるが、当事業とは直接的な関係はないという。

◎ 東京理科大:高校で理数系に強い関心をもった学生に対し、過度の受験勉強でその関心を喪失させることなく希望学科への進学を可能にするとともに、より高度な内容や将来を展望させるようなテーマに早期に触れる機会を設け、その意欲・能力をより一層高めることを目標とした「スーパーサイエンティスト育成プログラム」(Super Scientist Education;SSE)を実施。
 入試については、高校における「スーパーサイエンスハイスクール」での課題研究経験者や学術大会で所定の成績を残した高校生を対象に、小論文及び口頭試問を含む面接で選考する「SSE 推薦入試」(公募制)を設け、21 年度入試から実施している。
 当入試については、志願者のポテンシャルや可能性の高さがみられたという。特に、大学での本格的な研究にそのまま通ずるような高校生もみられ、「一般入試」とは異なる当入試制度は、“高大接続”の観点からも評価できるとしている。ただ、1 大学だけでの実施では限界があり、多くの大学が歩調を合わせて「特異な才能をもつ高校生の発掘」に努める必要があるという。

◎ 京都大:工学部では、工学の深い専門性とともに異文化理解力を含む広い視野と実践力を備えた理数系グローバルリーダーの育成を目的とした「グローバルリーダーシップ工学教育プログラム」を実施。大学院教育の質の向上に向けた取組と連携しつつ、工学部入学から大学院博士課程まで一貫した理数学生のグローバルリーダー育成教育システムを整備・推進してきたとしている。
 入試に関しては、多様な入学者選抜の観点から、当プログラム開始前に工業高専からの工学部編入学定員を拡大(10名→20名)しているが、当プログラムにおいて、編入学実績のある工業高専を対象にカリキュラム等の実態調査、高専側の意向調査、編入学生の就学情況の追跡調査を実施したという。これらの結果を分析検討し、新たな高専編入学制度の設計に取り組んでいるという。
 また、近畿圏の「スーパーサイエンスハイスクール」(SSH)指定高校を中心に教員と高校生を招待して理数分野に興味をもつ高校生にアウトリーチ活動を実施したり、工学部の授業情報を公開したり、高校への出前講義で高大連携活動を充実させるなど、理数学生の工学部への進学意欲を高めたという。

◎ 大阪大:大阪大の『最終報告書』の冒頭には、「近い将来、日本の理数系学生に対する画一的な大学教育は難しくなり、既に米国などで導入されているような、“標準コース”と“優等生コース”(オナープログラム;Honors Program)に分離することが予想される」と記されている。こうした分離した教育方式では、優等生コースの学生には高いハードルを課すが、例え優等生コースから落ちこぼれても標準コースを卒業することはできるという。理学部では、来るべき日本的理数教育に備えるとともに、創造的研究者の多様な発想を生み出す“苗床”をつくることをめざして、「理数オナープログラム-飛躍知の苗床育成をめざして-」を実施。
 高校では理科2科目しか履修しない学生がほとんどであることを踏まえ、平成15(2003)年に開始した「理学部コアカリキュラム」では、数学、物理、化学、生物、地学の講義及び実験を“必修”として、幅広い素養を養うことを目指している。ただ、「理学部コアカリキュラム」は広く浅くの傾向もあり、意欲の高い学生にとってはやや物足りない面もあるという。そこで、専門的な強い学習意欲をもつ学生を対象とする「理数オナープログラム」を実施している。「理学部コアカリキュラム」と「理数オナープログラム」は、独創的で多様なアイデアをもつ理数人材育成の横糸と縦糸であり、両方がうまく絡み合って初めて、教育目標が実現できるとしている。
 理学部の入試・選抜方法の開発実践としては、次のような取組をあげている。
(1) 国際物理オリンピック入試:20年度から、国際物理オリンピックの日本代表となった志願者を大阪大-理学部(物理学科)に受け入れる「国際物理オリンピック入試」(センター試験、個別試験、面接等免除。推薦書も不要)を導入。これにより入学者は1年次から「理数オナープログラム」に参加し、トップランナーを目指す教育を受けるという。
(2) 生命理学コース入試:20年度から理学部-生物科学科の中に「生命理学コース」(定員30名)を設置。このコースは生命科学の新たな発展を担う人材育成のためのもので、生物科学科でありながら個別試験(前・後期とも)では“物理Ⅰ・Ⅱ”と“化学Ⅰ・Ⅱ”(2科目)を必須としている。入学後は、ニューフロンティア開拓を目指して、生物-数学、生物-物理、生物-化学のいずれかを選び2つの専門分野を学ぶという。
* 理工学系学部の新たな取組 ~ 25年度入試の変更 ~
 大阪大では、自然科学に強い関心をもつ高校生が増えてきているという。大学では、そうした志願者の意欲と能力を伸ばすことができるような新たな入試制度を理工学系学部で25年度から導入する。
・理学部:後期募集を停止し、前期を「一般枠」と「挑戦枠」に区別して募集する。「挑戦枠」は「自分自身の頭脳で粘り強く考察して真理を探究・発信する人」を受入れることから、個別試験は「一般枠」の入試科目のほかに“専門数学”か“専門理科”(物理又は化学)が課せられる。また、科学コンテストなど自主的な研究活動で成果を挙げ、科学を楽しむ心を身につけた人たちを受け入れる「研究奨励AO入試」も導入する。
・「国際科学オリンピックAO入試」:上述したように物理学科のみで実施してきた「国際物理オリンピック入試」を拡大し、理学部・工学部・基礎工学部の理工学系3学部全ての学科で共同実施する「国際科学オリンピックAO入試」を25年度から導入する。
 この制度は、国際科学オリンピック(数学、物理、化学、情報、生物学、地学の各分野)の日本代表として出場し、その学術分野に自主的に進みたい能力のある人を受け入れる新たな入試方法だという。現行の「国際物理オリンピック入試」は当入試に移行する。なお、当入試による入学者は1年次の授業料が免除となる(2年次以降の授業料免除は各学部の基準による)。

理数学生育成支援事業

文科省は、19年度から実施してきた「理数学生応援プロジェクト」(前述)の新規採択が22年度で停止したのに伴い、23年度から新たに「理数学生育成支援事業」を開始した。
 当事業では、意欲ある学生を更に伸ばす取組を各大学に普及させるため、これまでの事業を踏まえて体系的な教育プログラムを提供し、将来の科学技術を担う人材を育成することを目指す大学の取組を支援するとしている。事業の内容や委託期間等は前述の「理数学生応援プロジェクト」の事業とほぼ同様である。
 23年度の採択大学として、秋田大-工学資源/埼玉大-理/電気通信大-情報理工/大阪大-基礎工/岡山大-理/広島大-生物生産の6大学・6学部がこの程決定した。


<理工学系・科学技術系の教育>
“産学官”の連携

グローバル化の下で、激化する科学技術の世界的な競争に立ち向かい、持続可能な社会を創造していくためには、科学技術の基盤となる理数教育の充実と科学技術系人材の育成が不可欠である。
 本稿ではここまで、理工学系の人材規模や志願者(入試)の動向、文科省や大学における理数学生育成の取組等をみてきた。最近は学校・大学等(学)及び文科省や経産省(官)等に加え、産業界も理科教育の充実や技術者養成等に取り組んでいる。今後はこうした“産学官”連携の下で、実効性のある効果的な理工学系及び科学技術系人材の育成が期待される。


大震災復興に不可欠な人材育成

23年3月11日の東日本大震災と福島第一原発事故では、自然の脅威と科学の未熟さ、科学技術のもつ“ベネフィット”(恩恵)と“リスク”(危険)の二面性が浮き彫りになった。
 科学技術者には、今回の災厄であらわになった科学技術の脆弱さ、課題と向き合い、克服していくことが期待される。そのためには、大震災からの復旧・復興、被災地域のインフラ整備、安全・安心な街づくりなどをはじめ、原発の事故処理や使用済み核燃料の処理等を含めた原発に関わる継続的な研究・技術開発、低炭素・再生可能エネルギー等々、直面する社会の危機的状況や根本的な課題に対処し得る人材の育成が焦眉の急だ。
 ただ、今回の巨大地震や大津波の予知、原発事故の対応では、大学での過度に細分化された専門教育や知識偏重教育といった教育カリキュラム等の在り方も問題視されている。理工学系といえども、社会科学や人文科学など幅広い知識や体験をも活用し、様々な問題点を孕んだ複雑で複合的な事象を見抜き、解決していくような問題解決能力が求められる。