今月の視点

1月

中教審、「高大接続・入試改革」 答申!

センター試験“廃止”/2種類の“新テスト”創設/知識偏重型から多面的・総合的な評価へ!

旺文社 教育情報センター長 大塚/2015年1月5日掲載

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中教審は26年12月、新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた「高校教育-大学教育-大学入学者選抜」の一体的改革についての『答申』を下村博文・文科大臣に提出した。
 当『答申』は、超少子高齢・人口減少社会、生産年齢人口の急減、グローバル化の進展など、これまで経験したことのない厳しい時代を迎え、若者の将来に向けた多様な夢や目標を支える教育改革を“待ったなし”で進めなくてはならないとしている。そのためには、大学入学者選抜の改革に留まらず、新たな高大接続の構築を見据えた学習指導要領の見直しや選抜の公平性をめぐる社会の意識改革なども必要であるとしている。
 当『答申』における高大接続の改善や大学入学者選抜の改革提言のポイント等をまとめた。


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新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた
高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について
~ すべての若者が夢や目標を芽吹かせ、未来に花開かせるために ~


< 未来を見据えた高校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革 >

中教審は24年8月に文科大臣(当時、平野博文・文科大臣)から、「大学入学者選抜の改善をはじめとする高等学校教育と大学教育の円滑な接続と連携の強化のための方策について」の諮問を受け、2年半近くの審議を経て26年12月、『新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について』(『高大接続・入試改革答申』と略)を答申した。
 中教審は当『答申』について、教育改革における最大の課題でありながら実現が困難であった「高大接続」改革を、初めて現実のものにするための方策として、「高校教育、大学教育及びそれらを接続する大学入学者選抜」の抜本的な改革を提言するものであるとしている。

『答申』の基調:改革が目指す未来の姿

◆ 教育改革の目標
 我が国は今後、次のような教育改革の目標を達成するよう、改革に最大限の力を尽くさなければならないとしている。
 ● 将来に向かって夢を描き、その実現に向けて努力している若者たちが、自信に溢れた、実り多い、幸福な人生を送れるようにすること。
 ● これからの時代に社会で生き抜いていく若者たちやこれから生まれてくる子供たちが、十分な知識と技能を身に付け、十分な思考力・判断力・表現力を磨き、主体性をもって多様な人々と協働することを通して、喜びと糧を得ていくことができるようにすること。
 ● 彼らが、国家と社会の形成者として十分な素養と行動規範を持てるようにすること。
 生産年齢人口の急減、労働生産性の低迷、グローバル化・多極化といった厳しい時代を迎えている現状で、世の中の変化は予想以上に速く、将来は職業の在り方も様変わりしている可能性が高いという。
 例えば、アメリカのキャシー・デビッドソン氏(2014年時点、ニューヨーク市立大学大学院センター教授)によると、「2011年にアメリカの小学校に入学した子供たちの65%は、大学卒業後、今は存在していない職業に就く」と予測され(2011年8月)、21世紀中盤以降の新たな職業と新しい教育の在り方として波紋を呼んだ。
 当『答申』は、そうした激しい変化が予測される中で、これまでと同じ教育を続けているだけでは、これからの時代に通用する力を子供たちに育むことはできないと断じている。

< 「生きる力」 を育む教育の現状 >(図1参照)
「生きる力」の重要性 /「確かな学力」=「学力の3要素」

『高大接続・入試改革答申』は、新たな時代を見据えた教育改革を進めるに当たり重要なことは初等中等教育から高等教育までを通じた教育の在り方を示すことであるという。
 そして、子供たちに育むべき力として、「豊かな人間性」「健康・体力」「確かな学力」を総合した力、すなわち「生きる力」を挙げている。
 このうち、所謂「学力」については長い間、「自分で考え自分で実行する」型の教育(ゆとり教育)と、「体系的な知識を注入する」型の教育(詰め込み教育)との間で、二項対立的な議論がなされてきた。
 こうした経緯を踏まえ、当『答申』では、「学力」は“ゆとり”か“詰め込み”かのような二項対立的なものではなく、所謂「学力の3要素」である、①基礎的・基本的な知識・技能/②それらを活用する思考力・判断力・表現力/③主体的に学習に取り組む態度、から構成される「確かな学力」を指すとしている。
 小・中学校、高校を通じた「確かな学力」の育成については、平成19 年の学校教育法一部改正で明確に規定され、学習指導要領の「総則」にも明記されている。
 高校教育及び大学教育では、義務教育までの成果を確実につなぎ、それぞれの学校段階において「生きる力」と「確かな学力」を確実に育み、初等中等教育から高等教育まで一貫した形で、一人ひとりに育まれた力を更に発展・向上させることが肝要であるという。

< 高校教育、大学教育、大学入学者選抜の現状と課題 >
高校・大学教育の改善と現状

『高大接続・入試改革答申』は、高校では現行学習指導要領に則って、「学力の3要素」である「知識・技能の習得」に加えて、「思考力・判断力・表現力等の能力」や「主体的に学習に取り組む態度」の育成を目指しており、その実現に向けた努力が重ねられているとしている。
 また、大学教育についても、中教審答申『学士課程教育の構築に向けて』(20年12月)や『新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて』(24年8月)などで、初等中等教育段階における「生きる力」の育成を踏まえ、「学士力」など育成すべき力の在り方や、そのための大学教育の質的転換について提言されてきており、学生が主体性をもって多様な人々と協力して問題を発見し“解”を見いだしていく「能動的学修」(アクティブ・ラーニング)の充実などに向けた教育改善が図られつつあると分析している。
 しかし、その一方、現状の高校教育、大学教育、大学入学者選抜は、知識の暗記・再生に偏りがちで、「思考力・判断力・表現力」や「主体性をもって多様な人々と協働する態度」など、“真の学力”が十分に育成・評価されていないと断じている。

大学進学や学力の習得状況等で類型化される高校教育

『高大接続・入試改革答申』は、高校教育と大学教育の現状をみると、現行の大学入学者選抜の大きな影響力の下で、それぞれ次のような課題を抱えていると指摘している。
◆ “選抜性の高い”大学へ進学する高校
 “選抜性の高い”大学へ進学する高校では、次世代リーダーの育成に向けた取組や、国際通用性を高める観点からの国際バカロレアのプログラム導入、「総合的な学習の時間」を活用した課題探究の鍛錬、ユネスコスクール等における持続可能な社会の担い手を育む教育(ESD)の実践など、これからの時代を見据えた積極的な取組も多くみられるという。
 その一方で、学校の教育方針が“選抜性の高い”大学への入学者数等を競うことに偏っている場合には、高校教育が“受験のための教育”や校内に閉じられた同質性の高い教育に終始することになり、多様な個性の伸長や幅広い視野の獲得といった多様性の観点からは不十分なものとなりがちであると指摘している。
 こうした教育では、大学入試に必要な「知識・技能」やそれらを与えられた課題に当てはめて「活用する力」は向上させられたとしても、自ら課題を発見し解決するために必要な「思考力・判断力・表現力等の能力」や、「主体性をもって、多様な人々と協働」しながら学んだ経験を生徒に持たせることはほとんどできないとしている。
 そうした生徒がそのまま“選抜性の高い”大学に入学した場合、一定の知的な能力を持っていたとしても、主体性をもって他者を説得し、多様な人々と協働して新しいことをゼロから立ち上げることができるような力を大学で身に付けることは難しいという。
◆ 「従来型学力」の中間層が多い高校
 生徒の多くが所謂「従来型学力」(体系的な知識・技能中心)において“中間層”を占めるような高校では、“知識量の多寡”で進学先の大学・学部(難易度)が決定される環境にあり、受験勉強が学習への動機付けになってきたと分析している。
 しかし、少子化の進展等で大学進学が一般的に容易になっていることから、従来のような受験勉強がそれほど必要でなくなっている。そうした状況では、今まで以上に社会で自立して生きていくために必要な力の獲得を目標として設定し、学習意欲を喚起する必要があるが、それらの動機付けを十分に行わず、自主的にはほとんど学習せず目標を持てない生徒を多数、“選抜性が中程度”の大学に送り出している例も多いと指摘している。
 そのような場合、一人ひとりの「知識・技能」や「思考力・判断力・表現力等の能力」を伸ばす余地があるにもかかわらず、学生に「主体性や学修のための明確な目標」が不足しているため、大学でもそれができないままになっているという。
◆ 「従来型学力」の習得が困難な生徒の多い高校
 「従来型学力」の習得に困難を抱えている生徒が多い高校では、家庭環境や所得格差等の問題も背景にあり、高校生に共通して必要な力を育む以前に、まずは通学させ卒業させることが第一で、他のことをやる余裕がないといった状況も多いと分析している。
 そうした中で、生活指導や教育相談、将来を見通した進路指導等の支援を熱心に行っている高校もあるが、入学者選抜が機能しなくなっている大学に漫然と送り出される場合も少なくなく、そうした大学では「思考力・判断力・表現力等の能力」どころか、その基礎となる「知識・技能」自体の質と量が、大学教育に求められる水準に比べて不十分な段階にある学生が多いことが深刻な問題となっていると断じている。

現状から浮かび上がってくる課題

◆ 「知識伝達」型の授業 /「学力の3要素」に対応していない入学者選抜
 『高大接続・入試改革答申』では、上述のような高校教育や大学教育の現状から課題として浮かび上がってくることは、高校では小・中学校に比べて「知識伝達」型の授業に留まる傾向があり、「学力の3要素」を踏まえた指導が浸透していないことを指摘している。
 そうした状況には、「一般入試」において、一斉かつ画一的な条件で実施される試験で、“予め設定された正答”に関する“知識の再生を1点刻み”に問い、その結果の点数で選抜する評価から転換しきれていないこと/「AO入試」「推薦入試」の多くが本来の趣旨・目的に沿ったものでなく、単なる“入学者数確保の手段”となってしまっていることなど、現行の多くの大学入学者選抜における学力評価が「学力の3要素」に対応したものとなっていないことが大きく影響しているという。
◆ 高校生に共通な“学力”が不十分
 高校進学率98%以上の中、高校生の進路が多様化し、高校教育そのものも多様化している。そのため、カリキュラムや授業内容の在り方も多岐にわたり、高校教育として生徒に共通に身に付ける“学力”が確保されていないことも大きな課題であると指摘している。
 なお、すべての高校生に共通に身に付けさせる「資質・能力」について、中教審高等学校教育部会『審議まとめ』(26年6月:報告)では、「コア」として「生きる力」に加え、「社会・職業への円滑な移行に必要な力」/「市民性」が重要であるとしているほか、「批判的に考える力」/「説明する力・議論する力」/「創造力」/「人間関係形成力」/「主体的行動力」/「自己理解・自己管理力」/「職業観・勤労観」/「公共心」/「社会奉仕の精神」/「他者への思いやり」/「健康の保持増進の実践力」などを挙げている。
◆ 現行「大学入学者選抜」の課題とその背景
 『高大接続・入試改革答申』は、現行の大学入学者選抜について、知識の多寡など測定しやすい一部の能力や選抜時点での能力の評価に留まっているほか、“丁寧な評価”よりも“学生確保”が優先されるなど、「高校教育で培ってきた力」や「大学教育で必要な力」を評価するものとなっていないと指摘している。
 そうした背景として、次のような状況を挙げている。
 高校生一人ひとりは、年齢、性別、国籍、文化、障害の有無、地域の違い、家庭環境など多様な背景を有している。そうした中で、現行の大学入学者選抜は、高校までの多様な経験や能力を度外視し、前述したような「知識の再生を1点刻みで問う試験」による客観性の確保を過度に重視した選抜が行われている。
 こうした選抜方法は、点数のみに依拠した選抜が“公平”であるという、従来型の「公平性」の観念が社会に根付いていることにあると分析している。

< 高校・大学教育を通じて育む 「生きる力」 の明確化 > (図1参照)
「生きる力」「学力の3要素」の捉え直し

“小・中学校、高校教育”を通じて育む「生きる力」を支える「確かな学力」については前述したように、学校教育法や学習指導要領で明確化されている。
 『高大接続・入試改革答申』ではそれらを踏まえたうえで、生徒や学生が身に付けるべき力の在り方は、「各学校段階で質的に変化していく」ものであるとし、“高校教育、大学教育”を通じて育むべき「生きる力」を構成する「豊かな人間性」「健康・体力」「確かな学力」のそれぞれを、次のように捉え直すことができるとしている。
◆「豊かな人間性」
 高校教育を通じて、国家及び社会の責任ある形成者として必要な教養と行動規範を身に付けること。
 大学では、それを更に発展・向上させるとともに、国、地域社会、国際社会等においてそれぞれの立場で主体的に活動する力を鍛錬すること。
◆「健康・体力」
 高校教育を通じて、社会で自立して活動するために必要な健康・体力を養うとともに、自己管理等の方法を身に付けること。
 大学では、それを更に発展・向上させるとともに、社会的役割を果たすために必要な肉体的、精神的能力を鍛錬すること。
◆「確かな学力」
 「確かな学力」を構成する「学力の3要素」を、高校教育と大学教育それぞれにおいて、「社会で自立して活動していくために必要な力」の観点から、次のように捉え直している。
 ● 高校教育:➀これからの時代に社会で生きていくために必要な、「主体性をもって多様な人々と協働して学ぶ態度(主体性・多様性・協働性)」を養うこと/➁その基盤となる「知識・技能」を活用して、自ら課題を発見しその解決に向けて探究し、成果等を表現するために必要な「思考力・判断力・表現力等の能力」を育むこと/➂「思考力・判断力・表現力等の能力」の基礎となる「知識・技能」を習得すること。
 ● 大学教育:高校教育で培った上記のような「学力の3要素」を更に発展・向上させるとともに、これらを「総合した学力」を鍛錬すること。
 つまり、当『答申』は、「生きる力」を構成する「豊かな人間性」を、高校教育では「国家・社会での形成者としての教養・行動規範」に、「学力の3要素」の「主体的に学習に取り組む態度」「主体性・多様性・協働性」にそれぞれ置き換えている。(図1参照)

高校・大学教育の現状と課題の克服

『高大接続・入試改革答申』は、高校教育と大学教育を通じて育むべき「生きる力」の考え方を踏まえつつ、高校・大学教育の現状と課題を「高校教育、大学教育、大学入学者選抜」の一体的改革による新しい仕組みで克服していくことがまず必要であるという。
 ただ、「高大接続」改革は“大学入試”のみの改革ではないという。改革の目標は、“大学入試”改革を一部含むとしながら、高校教育と大学教育において十分な「知識・技能」/十分な「思考力・判断力・表現力」/十分な「主体性・多様性・協働性」の育成を最大限に行う場と方法の実現をもたらすことにあるとしている。


< 新しい時代にふさわしい 「高大接続」 改革の方向性 >

新しい時代にふさわしい「高大接続」改革を実現するためには、現状の高校・大学教育について、前述のような高校教育と大学教育を通じて育成する力にふさわしい教育内容、学習・指導方法、評価方法、教育環境へと大きく転換させなければならないとしている。

「評価」の在り方を“てこ”に、高校・大学教育を転換

『高大接続・入試改革答申』は、「高大接続」改革に大きく立ちふさがるのは「大学入学者選抜の在り方」であると指摘している。
 改革に対して現在直面する最大の課題は、高校教育と大学教育とを接続する重要な役割を果たすべき大学入学者選抜において、前述したような育成すべき力の在り方を踏まえた「評価」がなされていないことだという。
 高校と大学の接続段階での「評価」の在り方が変われば、それを“てこ”に高校教育と大学教育の在り方も大きく転換されるであろうという。
 そして、「高大接続」改革の観点から、次のような改革に一体的に取り組むことを求めている。
◆ 高校教育の転換:「基礎学力テスト」導入/アクティブ・ラーニングの充実
 生徒が、国家・社会の形成者としての教養と行動規範を身に付けるとともに、自分の夢や目標を持って主体的に学ぶことのできる環境整備を求めている。そのために、「高大接続」改革と並行して「学習指導要領」を抜本的に見直し、育成すべき「資質・能力」の観点からその構造、目標や内容を見直し、主体的・協働的な学習・指導方法である「アクティブ・ラーニング」への飛躍的充実を図るとしている。
 また、教育の質の確保・向上を図り、生徒の学習改善に役立てるために、“新テスト”「高等学校基礎学力テスト(仮称)」(後述:以下、「基礎学力テスト」と略。表1参照)の導入を提言している。
◆ 大学教育の転換:カリキュラム・マネジメント/アクティブ・ラーニング
 学生が、高校教育までに培った力を更に発展・向上させるため、個々の授業科目等を超えた大学教育全体としての「カリキュラム・マネジメント」を確立する(ナンバリング<授業科目の体系化>の導入等)とともに、主体性をもって多様な人々と協力して学ぶことのできる「アクティブ・ラーニング」へと質的に転換することを求めている。
◆ 大学入学者選抜の転換:センター試験“廃止”/「学力評価テスト」導入
 現行のセンター試験を“廃止”し、「大学で学ぶための力」のうち、特に「思考力・判断力・表現力」を中心に評価する“新テスト”「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」(後述:以下、「学力評価テスト」と略。表1参照)を創設して、各大学が活用することを提言している(図2・図3参照)。
◆ 個別選抜の転換:“多面的・総合的”選抜/アドミッション・ポリシーの明確化
 各大学が個別に行う入学者選抜(個別選抜)については、「学力の3要素」を踏まえた“多面的・総合的”な選抜方法(大学・学部の選抜性の高低に即した選抜方法等)を実施するものとしている。
 そのうえで、特定分野に卓越した能力を持つ者の選抜や、年齢、性別、国籍、文化、障害の有無、地域の違い、家庭環境等にかかわらず多様な背景を持った学生の受け入れが促進されるよう、具体的な選抜方法等に関する事項を、各大学がその特色等に応じたアドミッション・ポリシーで明確化することを求めている。(図2・図3参照)


< 大学入学希望者の多様性を踏まえた“公正”な選抜 >
“人が人を選ぶ”個別選抜と“多面的・総合的”な評価

各大学が行う個別選抜で重要なことは、画一的な一斉試験で知識の再生を問う評価に偏ったり、入学者数確保のための手段に陥ったりせず、“人が人を選ぶ”選抜を確立していくことであるという。“人が人を選ぶ”選抜の確立とは、高校教育で身に付けた「生きる力」や「確かな学力」を大学教育で発展・向上させ、社会に送り出していく観点から、大学の入り口段階で求められる力を“公正”かつ“多面的・総合的”に評価する「個別選抜」本来の役割を果たすことであるとしている。

既存の“公平感”の“桎梏(しっこく)”を断ち切る意識改革

大学入学希望者の「評価」を「多面的・総合的な評価」に転換するためには、大学入学者選抜を含むあらゆる評価についての意識改革が必要であるという。
 一斉にかつ画一的に実施される知識の再生を問う試験結果だけを評価対象とすることが“公平”であるとする、既存の「公平性」の観念の“桎梏”を断ち切る意識変革を求めている。入学者選抜のみを取り上げて「公平性」を論ずるのではなく、生涯を通じてみたとき、多様な背景を持つ一人ひとりが積み上げてきた多様な力が、多様な方法で公正に評価される教育の機会が均等に与えられる「公平性」を確立すべきであるとしている。

< 各大学の 「個別選抜」 改革 >(図2・図3参照)
アドミッション・ポリシーに基づく個別選抜の確立

各大学は、“求める学生像”のみならず、各大学の“入学者選抜の設計図”として必要な事項をアドミッション・ポリシーで明確化することが必要であるとしている。
 具体的には、高校と大学で育成すべき「生きる力」や「確かな学力」を踏まえつつ、「入学者に求める能力は何か」/「それをどのような基準・方法で評価するのか」をアドミッション・ポリシーで明確に示すことを求めている。


「確かな学力」の評価方法

『高大接続・入試改革答申』は、個別選抜において、「確かな学力」を構成する「学力の3要素」について、どのような評価方法を活用するのか/「学力の3要素」すべてを評価対象としつつ、特にどういった要素に比重を置くのかなどを、大学入学希望者に対して明確に示していくことを求めている。
 具体的な評価方法としては、前述した「学力評価テスト」の成績に加え、小論文、面接、集団討論、プレゼンテーション、調査書、活動報告書、大学入学希望理由書や学修計画書、資格・検定試験などの成績、各種大会等での活動や顕彰の記録、受検者のこれまでの努力を証明する資料などの活用を挙げている。「確かな学力」として求められる力を的確に把握するためには、こうした「多元的な評価尺度」が必要であるとしている。
◆ 英語の「資格・検定試験」の活用促進
 特に英語の評価については、高校教育で育成された「聞くこと」「話すこと」「読むこと」「書くこと」の“4技能”を、大学での英語教育に引き継いで確実に伸ばしていくことができるようにすべきであるとしている。
 そのため、アドミッション・ポリシーにおいても4技能を総合的に評価することを示すこととし、「学力評価テスト」における英語の扱いも踏まえつつ、4技能を測定する「資格・検定試験」の更なる活用を促進すべきであるとしている。
 なお、英語の「資格・検定試験」の活用等については、文科省の有識者会議が『今後の英語教育の改善・充実方策について』(26年9月:報告書:本欄『今月の視点-95』<26年11月配信>参照)に取りまとめている。

選抜性の高低と選抜方法

各大学・学部等の選抜性の高低によって、選抜方法等も異なってくる。
 『高大接続・入試改革答申』は、個別選抜における選抜性の高低によって、次のような3類型に大学(学部等)を分け、それぞれの評価方法や個別選抜の在り方などを示している。
◆ 選抜性の高い大学
 選抜性の高い大学の学生については、従前のように「知識・技能」やそれらを課題解決につなげる「活用力」に優れていることは必要であるとしたうえで、それらだけではまったく不十分であるとしている。
 「学力評価テスト」の活用を前提としたうえで、これからは「主体性・多様性・協働性」や「思考力・判断力・表現力」を含む「確かな学力」を、“高い水準で評価”する個別選抜を推進することによって、年齢、性別、国籍、文化、障害の有無、地域の違い、家庭環境等にかかわらず、多様な背景を持った学生の確保に努める必要があるとしている。
◆ 選抜性の中程度の大学
 選抜性が中程度の大学の入学者選抜の現状をみると、個別選抜で2科目前後の特定科目を課す形態が多いと指摘。また、大学独自の作問が負担になっている影響などから、“知識量のみを問う問題”になっていることが多いとも指摘している。
 今後は、「学力評価テスト」を“積極的に活用”しつつ、「思考力・判断力・表現力」等を含む「確かな学力」を総合的に評価する個別選抜へと転換すべきであるとしている。
◆ 選抜性の低い、選抜機能がない大学
 AO・推薦入試が本来の趣旨や目的に沿ったものとなっていないなど、入学者選抜が機能しなくなっているような大学では、「基礎学力テスト」の結果を含めた高校の学習成果を調査書の活用等で確実に把握したり、活動報告書の提出や面接を実施したりするなどして、大学教育に求められる水準の学力を担保することを求めている。


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< “新テスト”創設による 「高大接続」 の構造改革 >

新しい時代にふさわしい高大接続を実現するためには、前述したように、高校教育及び大学教育の様々な改革・改善への取組が必要であるが、最大の課題は両者を接続する架橋となる「大学入学者選抜」の改革である。
 また、高大接続の基本的な構造は、「高校教育-大学入学者選抜-大学教育」といった3層に分けられるが、それぞれがもつ目的、役割、機能等を十分に果たすことが求められる。
 こうした高大接続の基本的構造と大学入学者選抜が抱える課題を背景に、今回の『高大接続・入試改革答申』は、次のような新たな「共通テスト」の創設と、大学入学者選抜における「評価」の在り方等を提言した。(表1参照)


大学入学希望者の学力評価:「学力評価テスト」の創設

『高大接続・入試改革答申』は、現行のセンター試験は大学入学希望者の基礎的な学習の達成度を判定する本来的な役割に加え、高校生の一定の基礎学力の確保にも大きな役割を果たしてきたと評価している。
 その一方、センター試験は「知識・技能」を問う問題が中心で、これからの大学入学者選抜で求められる「確かな学力」の在り方や、前述したような高校段階での新たな観点による基礎学力を評価することなどを踏まえると、「知識・技能」中心の出題に留まらず、「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」を総合的に評価する問題にしていくことが必要であるとしている。
 そのため、前述したように現行のセンター試験を“廃止”し、大学入学希望者が大学教育を受けるために必要な能力を把握することを主な目的として、「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」を中心に評価する“新テスト”「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」(「学力評価テスト」:再掲。表1参照)の創設を提言している。
 当テストの内容、実施方法等の概要は表1を参照されたいが、現行のセンター試験では出題されていない「合教科・科目型」や「総合型」については、次のように提起している。

「合教科・科目型」、「総合型」テストの導入:作問のイメージ

◆ 作問のプロセス
 「学力評価テスト」の実施に向け、特に「合教科・科目型」と「総合型」の作問設計については、次のようなイメージを提示している。
 ➀当該の出題において、どのような「思考力・判断力・表現力」を評価するのかを明確化し/➁明確化された“力”が、高校でどの教科・科目等においてどのような“力”として主に育成されているのかを特定し/➂特定された教科・科目等で育成される“力”を、他教科・科目等のどのような文脈に当てはめていくことが効果的かを検討しつつ、教科・科目等の組合せを決定・作問する、というプロセスが考えられるとしている。
◆ 「合教科・科目」と「履修教科・科目」との関係
 具体的な「合教科・科目」の組合せとしては、例えば、➀“言語”に関する「思考力・判断力・表現力」について、➁こうした“力”を主に育成する「国語・英語」を、➂他教科・科目:<例>「理科」と組み合わせて、「理科」の文脈の中で“言語”に関する「思考力・判断力・表現力」を評価する問いを作問するといったことが考えられるという。
◆ 教科・科目の枠を超えた「思考力・判断力・表現力」の評価
 ところで、「学力の3要素」を構成する一部として、「知識・技能を活用して、自ら課題を発見し、その解決に向けて探究し、成果等を表現するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力」は学校教育法や現行の学習指導要領にも明記されている。
 こうした力は、例えば、➀概念・法則・意図などを解釈し、説明や活用する活動/➁情報を分析・評価し、論述する活動/➂課題について構想を立てて実践し、評価・改善する活動等を通じて育成されるものとされ、小・中学校、高校等における言語活動等の学習活動において重視されている。
 このような学習活動の現状を踏まえたうえで、教科・科目の枠を超えた「思考力・判断力・表現力」を“評価”するためには、個々の教科・科目の範囲に留まらず、複数の教科・科目を“教科横断的・総合的”に組み合せて出題することが必要であるとしている。そして、教科・科目の枠を超える「思考力・判断力・表現力」として、次のような“力”を例示している。


◆「合教科・科目型」、「総合型」の“評価”と学習指導要領
 「合教科・科目型」や「総合型」の“新テスト”が評価する「思考力・判断力・表現力」の育成は、上述したように、現行の学習指導要領に基づく各教科等の指導内容としても謳われており、「思考力・判断力・表現力」を育成する指導の充実と「合教科・科目型」や「総合型」の導入を、現行の学習指導要領の下で並行的に進めていくことは、まずは可能であるとしている。
 ただ、こうした新たな観点に基づいた指導を飛躍的に充実させ、定着させるためには、「学力の3要素」を踏まえた高校教育課程の抜本的な見直しが必要であり、次期「学習指導要領」に向けて、高度な「思考力・判断力・表現力」を育成・評価するための教科・科目構成の在り方や、それらの力を育成するための学習・指導方法の飛躍的充実についても検討する必要があるとしている。

高校教育の質の確保・向上のための学力評価:「基礎学力テスト」の創設

高校教育の「多様化」が進んでいる中で、前述したように、すべての高校生が身に付けるべき「資質・能力」(コア)を確実に育み(「共通性」の確保」)、生徒自らが基礎的な学習の到達度を把握して学習意欲の喚起、学習・指導の改善を図ることができるよう、高校段階の基礎学力を評価する“新テスト”として、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」(「基礎学力テスト」:再掲。表1参照)を導入するとしている。
 「基礎学力テスト」の内容、実施方法等の概要は表1にまとめたが、高校教育の内容や学習・指導方法、評価方法等の見直しも当テストの導入と並行して進めていくことを求めている。

“新テスト”の実施構想

◆ 「基礎学力テスト」=31年度から、「学力評価テスト」=32年度から段階的に実施
 『高大接続・入試改革答申』は、「基礎学力テスト」と「学力評価テスト」について一体的な検討を行い、「「基礎学力テスト」は平成31(2019)年度から、「学力評価テスト」は32年度から段階的に実施する」としている。
 高校生等の関係者が見通しをもって“新テスト”への対応ができるよう、国は実施までの具体的な制度設計や「プレテスト」実施等の詳細なスケジュールを策定し、公表するよう求めている。(図4参照)
◆ 「専門家会議」設置/27年内目途に“新テスト”内容検討
 新テストとして導入される「基礎学力テスト」と「学力評価テスト」は、目的や性格の違いがある一方で、CBTの導入や両テストの難易度・範囲の在り方など、共通に検討すべき事項が多く、一体的な検討が必要であるという。
 また、出題範囲についても「基礎学力テスト」は、6教科の必履修科目について、主として“学力の基礎”となる「知識・技能」を評価するものであり、「学力評価テスト」は、主として「思考力・判断力・表現力」を評価するものであるとされる。
 更に、高校から大学への学力の円滑な接続を図る観点から、両テストの難易度をできるだけ連続的にすることが必要であるという。
 こうしたことから、国は、2つの新テストを一体的に検討する「専門家会議」を早急に立ち上げ、対象となる教科・科目/「学力評価テスト」における「教科・科目型」、「合教科・科目型」、「総合型」等の具体的な枠組み/問題の蓄積方法/作問の方法/記述式問題の導入方法/CBT方式の導入方法/成績表示の具体的な在り方などについて検討を行い、26年12月の当『答申』後1年を目途に具体的な内容について結論を得ることとしている。
◆ 「学力評価テスト」の“作問イメージ”、28年度目途に公表
 「学力評価テスト」の「思考力・判断力・表現力」を問う問題については、求められる力を、➀「教科型」において他教科の内容を掛け合わせつつ評価する問題/➁「合教科・科目型」「総合型」として教科・科目の枠を超えて評価する問題の両方について、国が主導して検討し、28年度中を目途に作問イメージを公表し、32年度から実施するとしている。
 他方、「基礎学力テスト」については、できるだけ多くの生徒が参加できるよう、関係機関への周知や、指導改善に生かせる分析結果等の各高校等への提供、受検料の負担軽減策の検討、「調査書」様式例の見直し、企業への広報・周知等を通じて、積極的な活用を推進することを求めている。


◆ 「大学入試センター」の改革
 新テストの実施主体については、「共通一次試験」及び「センター試験」等、大学入学希望者の高校での学習の達成度を把握する試験や全国的な大規模の試験の実績・ノウハウを有する「大学入試センター」(独立行政法人)を、高校及び大学の学力評価や生徒・学生の学びを支援する観点から抜本的に改組し、“新たなセンター”とすることを提言している。
 新たなセンターは、新テストの実施と方法開発、個別選抜やアドミッション・オフィス強化等の方法開発などの支援、面接や集団討論等を含むテスト方法開発などの支援、調査書の評価等を含む評価に関する方法開発などの支援、専門的人材の育成、入学者選抜や学力評価についての新しい方法の開発、これらの事項に関わる国内外の調査等を目的とし、現在の「大学入試センター」という名称についても変更することを提起している。
 また、「学力評価テスト」については、大学が共同実施する性格のテストであることを踏まえながら、大学を含めた具体的な実施体制等を検討するとともに、「基礎学力テスト」については、高校と密接に連携・協力して実施するための具体的な実施体制等を検討する必要があるとしている。

高校の教育内容、学習・指導方法等の見直し

高校における教育内容については、前述した「国家・社会での形成者としての教養・行動規範」を涵養することを含めた取組の充実を「基礎学力テスト」の導入と並行して進めるとともに、学習・指導方法についても「主体性・多様性・協働性」をもって学ぶことを促す方法へと進化していくことを求めている。
 また、学習指導要領については、さらに、多様な若者の夢や目標を支援できる高校教育の実現を目指し、➀「何を教えるか」ではなく「どのような力を身に付けるか」の観点に立って/➁そうした“力”を確実に育むため指導内容に加えて、学習方法や学習環境についても抜本的な見直しを求めている。
 具体的には、次期「学習指導要領」に向けた中教審の改訂に関する議論の状況を踏まえつつ、高校の学習指導要領を通じて、全体としてどのような「資質・能力」を育成するのかをより明確化するとともに、例えば、次のような見直しを挙げている。


新たな評価方法の研究・開発等

上述のような高校での教育内容や学習・指導方法の見直しとともに、新たな評価方法の研究・開発を行い、生徒の多様な学習成果や活動を評価する方法に転換することも求めている。進路指導についても、そうした評価を踏まえつつ、単なる「知識・技能」の習得度に基づく指導だけでなく、“多面的・総合的”な評価に基づき、生徒一人ひとりの将来目標の実現を支援する観点に転換することを求めている。
 国に対しては、生徒の多様な学習成果や活動が反映されるよう、「調査書」の様式の見直し/出願時提出資料の共通様式の策定/「指導要録」の“観点別学習状況”の示し方/「基礎学力テスト」の結果の示し方、大学での活用方策/関係書類の電子化などについて検討し、当『答申』後1年を目途に具体的な改訂内容について結論を得ることを求めている。

大学で育成すべき“力”の質的転換

大学教育においては、高校教育で培われた「生きる力」や「確かな学力」を更に発展・向上させるよう、教育内容、学習・指導方法、評価方法、教育環境を抜本的に転換することを求めている。
 特に、高校教育と大学教育を通じて「主体性・多様性・協働性」を育成する観点からは、大学教育を、従来のような知識の“伝達・注入”を中心とした授業から、学生が主体性をもって多様な人々と協力して問題を発見し“解”を見いだしていく「アクティブ・ラーニング」に転換していくことが大事であるという。
 また、大学で育成すべき“力”を学生が確実に身に付けるためには、大学教育において「教員が何を教えるか」よりも「学生が何を身に付けたか」を重視し、学生の「学修成果」(ラーニング・アウトカム)の把握・評価を推進することが必要であるとしている。
◆ 「初年次教育」の見直し
 大学入学初年度における教育は、初年次教育や導入教育、リメディアル教育など様々な概念が混在しているという。
 『高大接続・入試改革答申』は、こうした教育について高大接続の観点から、高校教育の質の確保・向上とアドミッション・ポリシーに基づく大学入学者選抜の確立のうえに、その意義をもう一度見直す必要があるとしている。
 大学の初年次教育は、高校で身に付けるべき基礎学力の“単なる補習”とは一線を画すべきで、高校教育から大学における学修に移行するに当たって、大学における“本格的な学修”への導入であり、“より能動的な学修に必要な方法の習得”等を目的とするものとして捉えるべきであると断じている。
 こうした大学の初年次教育の展開・実践は、高校教育の成果を大学入学者選抜後の大学教育へとつなぐ、高大接続の観点から極めて重要な役割を果たすものであり、その質的転換を断行するには、高校教育、大学教育の新しい姿を確立するとともに、これらの教育で育成すべき“力”を円滑に接続するための研究開発が必要であるとしている。(図3参照)


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< 「高大接続改革実行プラン(仮称)」 の策定 >

 『高大接続・入試改革答申』は、「高大接続」改革を実現するために、国や新テストの実施主体等に対し、次のような検討事項の骨子を提示している。
 国は、この骨子をもとに改革の具体策やスケジュールの詳細を「高大接続改革実行プラン(仮称)」によって当『答申』後速やかに策定・公表し、推進することを求められている。
◆ 「大学入学者選抜」改革の具体策
 国は、下記のような各大学における大学入学者選抜の取組事項について、どのような手段(法令改正、『大学入学者選抜実施要項』の見直し、取組の評価、支援策)によってそれらの取組を促進するかを明らかにする。そのうえで、国には、各大学の具体的な取組を推進していくことを求めている。


【国による法令改正:アドミッション・ポリシー等の策定】
 個別選抜の改革を推進するためには、各大学の入学者選抜の設計図であるアドミッション・ポリシーの充実が不可欠であり、国に対し、各大学のアドミッション・ポリシーの策定について法令上位置付けるよう検討することを求めている。
 その際、各大学はアドミッション・ポリシーと合わせて、ディプロマ・ポリシー(学位授与の方針)、カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)を策定することが必要であることから、これらの一体的な策定を法令上位置付けるよう検討することとしている。
 また、法令で規定されている各大学の「認証評価」の項目に「入学者選抜」を明記することを検討するよう求めている。
【 『大学入学者選抜実施要項』の見直し】
◎ 一般・推薦・AO入試の区分“廃止”
 高大接続は、大学入学希望者の多様な挑戦の機会が与えられることが望ましいが、その一方で、いたずらに選抜が早期化・複雑化したり、一部の選抜方法に偏って実施されたりすることにより、高校教育の本来の目的が大きくゆがめられる危惧もあると指摘している。
 そのため、国に対し、適切なルールの下での入学者選抜全体の「多面的・総合的な評価」への転換を図るため、「一般入試、推薦入試、AO入試の区分を“廃止”」し、大学入学者選抜全体の共通的な“新たなルール”を構築するために、文科省が毎年度策定して各大学に通知している選抜実施のガイドラインを盛り込んだ『大学入学者選抜実施要項』を抜本的に見直すことを求めている。
◎『大学入学者選抜実施要項』に盛り込む事項例
 国は、次のような事項を入学者選抜の共通ルールとして『大学入学者選抜実施要項』に盛り込むことを検討し、26年度中に“可能なもの”から見直しの方向性を取りまとめ、『大学入学者選抜実施要項』に段階的に反映させるよう求められている。


『高大接続・入試改革答申』は、新たなルールに基づく個別選抜への転換や大学教育の質的転換を強力に推進するため、国に対し、大学のアドミッション・オフィスの整備・強化の在り方を検討、具体的な支援策を取りまとめること/各大学の特色等に応じ、どのような力をどのように評価するのかを明確にしたアドミッション・ポリシーの先進的な策定事例集を26年度中に作成すること/主体的に改革に取り組む大学にとってインセンティブとなるような財政措置の在り方を検討、具体策を取りまとめることなどを求めている。


“議論百出”の審議で描かれた「高大接続」のイメージ

今回の『答申』は、社会システムの重要な構成要素の1つであり、国民の関心度も高い「大学入学者選抜」の在り方を抜本的に改革し、それを“てこ”に学習指導要領も含めた高校教育と大学教育を一体的に改革していこうという、これまでにない答申といえる。
 2年半近くに及ぶ審議の過程で、政府・教育再生実行会議が提言した「達成度テスト(基礎・発展)」構想や「脱・“1点刻み”選抜」、「多面的・総合的な評価、判定」への転換など(『第4次提言』:25年10月)があり、特に大学入学希望者の資質・能力、学力の評価と「公平性」の在り方、選抜方法、“新テスト”の内容・実施方法等をめぐって、まさに“議論百出”の審議が交わされた。
 ともあれ、『高大接続・入試改革答申』は、子供たちの将来を見据えた高大接続の在り方について、大学入学者選抜も含めた一定のイメージを描いた。

財政基盤の確保と実現可能な「制度設計」を!

高校をはじめ小・中学校教育にも大きな影響を及ぼす大学入学者選抜に係る当『答申』の提言だけをみても、センター試験廃止/新たな「共通テスト」として、「基礎学力テスト」と「学力評価テスト」の創設、「合教科・科目型」「総合型」の出題/CBT方式の実施/一般・推薦・AO入試区分の廃止/「思考力・判断力・表現力」等の“多面的・総合的” 評価/選抜の「公平性」に対する意識改革など、ドラスティックな改革方策が並ぶ。これらの改革には専門家の投入や公的財政支援が不可欠で、実現には様々な課題も山積している。
 教育は未来への先行投資であり、国家百年の計である。20年、30年先の人材育成を考えるとき、当『答申』の“理念”だけを受け入れるのではなく、課題山積の提言をまずは財政的にも裏打ちされた実現可能なものから実施していくような「制度設計」が求められる。