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24年センター試験
“新”科目『倫理、政治・経済』問題・概要分析

河合塾講師/栂 明宏 先生

分野の偏りなく、全範囲からバランスよく出題。思考力や読解力を試す設問も見られる。

全体概要

すべての設問が、単独科目の「倫理」、「政治・経済」と共通であった。「倫理」分野と「政治・経済」分野がそれぞれ50点の配点であり、各科目のなかでも出題分野の偏りなくそれぞれの科目の全範囲が扱われていた。これまでの「倫理」や「政治・経済」と同様、「倫理」分野では本文趣旨読み取り問題や資料文読解問題、「政治・経済」分野では図表読解問題や計算問題など、思考力・読解力を試す設問が複数出題されていた。「倫理」分野の第3問は本文がなく、さまざまな分野からの小設問の集合体であった。「政治・経済」分野では、本文で「リーマンショック」が、設問でもオバマ米大統領の「プラハ演説」が取り上げられており、時事的な動向を意識していることがうかがえる。

大問ごとの分析

第1問(倫理/源流思想)《18点》
 「悪」をテーマに源流思想を比較する本文をもとに、ソクラテスの問答法、仏教などの古代インド思想、朱子や韓非子らの中国思想などとともに、日本の浄土教思想と古代日本の倫理観についても出題されている。また、クルアーンの戒律とモーセの十戒を扱った資料文読解問題と、本文の趣旨読み取り問題が出題されている。一見すると難しそうな設問もあるが、全体的に標準レベルの設問といえる。単独科目「倫理」の第2問をベースに、第3問の設問の一部が組み込まれている。

第2問(倫理/西洋近現代思想)《18点》
 「身体」に関する西洋近現代思想をテーマにした本文をもとに、デカルト、カント、フッサールの思想や、現代の諸課題の分野から臓器移植法と循環型社会が扱われている。また、ロックの資料文読解問題、本文の趣旨読み取り問題も出題されている。フッサールの思想は、学習上見落としがちであり、正解以外の選択肢もバークリーやウィトゲンシュタインの思想が記述されており、難度が高い。単独科目「倫理」の第4問をベースに、第5問の設問の一部が組み込まれている。

第3問(倫理/青年と心理・日本思想・現代の諸課題)《14点》
 本文はなく、「倫理」のさまざまな分野の設問が並べられており、青年期の心理、性格類型についての学説、吉田松陰の思想、福沢諭吉の思想、生命倫理に関して、出題された。このうち、性格類型についての設問は学習のなかで見落としがちな人物が扱われており、難度が高いといえる。吉田松陰も見落としがちな人物かもしれないが、残る選択肢の人物が分かりやすいので、消去法でも正解に至れるだろう。単独科目「倫理」の、第1問・第3問・第5問の設問を流用しての構成。

第4問(政治・経済/政治・経済総合)《14点》
 日本の政治・経済システムをテーマにした本文をもとに、分野横断的に出題されている。具体的には、日本的経営・雇用慣行、地方分権に向けた取組み、ケインズの経済学説、日本の社会保障制度、アメリカの外交政策、国際連合の制度、が扱われている。設問内容はいずれも標準的な知識が試されるものであり、難度は高いものではない。本文こそ「倫理,政治・経済」オリジナルだが、設問は単独科目「政治・経済」の第1問・第2問・第5問の設問を流用して構成。

第5問(政治・経済/経済総合)《18点》
 会話文形式の本文をもとに、経済の理論と現状について問われている。為替相場の簡単な計算問題や図表の読み取り問題が扱われており、ここでは暗記的知識ではなく論理的判断力が試される。金融機関に関する問6では「ノンバンク」や証券会社による株式引受けといった受験生になじみのない事柄が扱われており、各国の税収構造を問う問7は判断ポイントを見抜くのが難しく、ともに難度が高いといえる。単独科目「政治・経済」の第3問をそのまま流用した大問。

第6問(政治・経済/政治総合)《18点》
 自由・平等という基本的人権をテーマに、社会契約説や人権保障のあり方、差別解消に向けた法制度、各国の統治機構や日本の裁判制度について問われている。消極的自由と積極的自由について扱われている問1は、知識を試すものではなく論理的判断力を試すタイプの設問。これに対し、基本的人権をさまざまな観点から分類する問4は、知識と論理力の双方を試すタイプの設問。単独科目「政治・経済」の第4問をそのまま流用した大問。

寸評

すべての設問が単独科目の「倫理」と「政治・経済」と共通であった。難度も単独科目のものと大きく変わるものではなく、2科目分になったからといって難度が下がったわけでは決してない。むしろ、見落としがちな事柄や難度の高い設問も扱われている。4単位科目として「倫理,政治・経済」が設けられたという経緯を考えれば当然のことであろう。このことからすれば、来年度も難度や出題内容は大きく変わらないものと予想される。また、読解力や思考力を試す設問は以前から評価が高かったが、今回もこの出題が引き続いている。以上のことから、「倫理,政治・経済」の受験対策では、これまでの「倫理」や「政治・経済」の対策と同等の学習を両科目について実施しておくことが不可欠であるとともに、問題演習を通じて読解力や論理的判断力を育成しておくことも必要である。